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#32 堕落の果てに(4)
家の中は暗かった。
「ご両親はお仕事?」
そう問うと、弥生はまた首を振った。
「出てったの。10日くらい前の同じ日にね……。お互いに出てったこと、知らないんじゃない?」
「じゃあ、今、弥生は……」
「ひとりだよ。私、捨てられたのよ……」
私は両親のことを聞いたことを後悔した。
「辛いこと聞いて、ごめん……」
部屋に通されて座布団に座った途端、堰が切れたように弥生は泣き始めた。
「弥生……」
彼女に近寄って背中を撫でると、
「ごめん……、久しぶりにヒメコの顔見て……嬉しくなっちゃって……」
と、目を擦った。
「いいよ、思いっきり泣いて。……辛かったね、弥生……」
彼女は暫く私の胸で声をあげて泣いていた。
「本当は、お父さんもお母さんも仲良くしてほしかった……。でも、もう元には戻れないのかな……」




