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#30 堕落の果てに(2)

弥生の不登校が続いていたある日。



ナギとの下校途中で忘れ物に気付き、私はひとりで教室に戻った。



校舎内は人気がないのに、私の教室だけが騒がしかった。



そっと中を覗いてみると、ひとつの机のところに5、6人程がたまっているのが見えた。




それは弥生の机だった。




私は妙な胸騒ぎを覚えた。



息を潜めて彼らが立ち去るのを待つ。





「おい、そろそろヤバくね?」



「だね……、か、帰ろーよ」



バタバタと足音が遠ざかり、教室がしんと静まり返ると、私は弥生の席へと駆けつけた。



「……!!」



机を見るなり、思わず息を呑んでしまった。




ノートや教科書が荒らされていたのだ。




まさに、いじめ、だ。




本格的に、弥生はいじめに遭遇した。




私は頭が真っ白になり、その場に座り込んでしまった。





何かのちょっとしたきっかけで、思春期の集団はターゲットを絞っていじめをしてしまうことがある。



理由は何だっていい。



思春期ならではのやり場のないモヤモヤを晴らすための捌け口が欲しいのだ。





ーー原因を作ったのは、私。



そう思うと、涙が溢れ出した。





「ヒメコ?」



不意に声を掛けられ我に帰ると、そこにはナギが立っていた。



私の帰りが遅いために様子を見に来たらしい。



ナギは私の泣き顔を見て、すぐに駆け寄ってきた。



そして弥生の机の有様を確認すると、私を優しく抱きしめた。




「ヒメコは悪くないから。絶対に自分を責めるな」

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