表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/89

#27 美しき愛情(5)

授業が終わると、ナギは教室に迎えに来た。



いつもは校舎外で待ち合わせていたから、こんなことは初めてだった。



「帰ろ」



ナギは無表情のまま私の手を引いた。




校門を出ても、ナギは無言だった。



ナギのことだから何か考えているのだろうと思い、私も黙っていると、夕日の差し込む小さな公園についた。



木陰まで行くと、ナギは突然振り向いて、強く抱きしめてきた。



「ナギ……?」



妙に安心しながら彼の背中に手を回すと、耳元の口が囁いた。



「お前が、心配だった」



ドキッと心臓が跳ねた。



きっと、私や弥生が陰口を言われていることをいつもの鋭い勘で見抜いているんだろう。



「何もないよ?」



心配と迷惑をかけたくなくて、私はそう言った。



けれど、ナギは身体を離すと少し怒った口調で言った。



「バカ。俺の前では嘘つくな」



頬を撫でられ、塩気を含んだ水がそっと彼の指に吸い込まれる。



「え……」



次の瞬間、視界がぼやけ、瞳が滝壺と化した。



頭を撫でるナギの手が優しくて、私は彼の胸で泣いた。





彼に嘘はつけない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ