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#2 地獄の幕開け(2)
「……ナギ」
「ん?」
学校からの帰路を私はナギと歩いていた。
弥生のことをナギに言う勇気は、私にはなかった。
「やっぱ、何でもな……」
しかし全部言い終わる前に、強く手首を掴まれた。
「痛っ……」
「ヒメコ」
両手首を掴まれたままギリッと塀に押し付けられる。
「今日のヒメコ、何か変。俺に何か隠してる」
ナギは勘の鋭い男だ。
「別れたいならハッキリ言って」
「違うの……!」
「じゃあ、何」
私は観念して、手の力を緩めた。
「静かなところに行こう」
そのまま私たちは、ナギの家へと歩を進めた。