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#10 恋か友情か(4)
完全に弥生は、ナギが自分のことが好きかもしれないと期待を持っている。
それを悟ってか、ナギは弥生の言葉を遮った。
「あ、俺、これからちょっと用事あるから、ごめんな」
「えー、もうちょっとお話したーい」
弥生が甘えた声を出す。
「ホント、大事な用事なんだよ。悪いな」
そう言って、階段をおりかけたナギを
「待って!」
と弥生が呼び止めた。
「凪冴くんって、名前で呼んでもいい……!?」
ナギは一瞬困った顔をしてから、真顔になって言った。
「……いいよ」
帰り道をナギと歩いている。
「ごめんな、名前で呼ばせることになって」
「いいよ、気にしてない」
私は不機嫌だったかもしれない。
「気にしてんだろ」
「……」
否定できずに黙った私の手をナギは優しく握った。
「……俺ん家、来いよ」