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屋敷を出て門を探す。
門の右端には、電話の指示通り石で作られた日時計のようなものがあった。
その日時計の真ん中にある棒をクロカゲがぐっと押し倒すと、門に水のような波紋が広がる。
もう何が起きても驚かないぞ、とユエは唇を噛み、拳を握り直した。
それをくぐり外に出ると広い草原が広がっていて、3人がぽかんとしてそれを見渡す。
向こうで、草が裂けた。
割れたというより、
空気が布のように引き裂かれたという表現の方が正しいだろう。
そこから出てきたのは二本の捻じれた角に毛むくじゃらの胴体。
脚は逆関節で、地を踏むたび骨がぎしぎしと軋む。
「ヤギか……?」
クロカゲが腕でユエを少し後ろに押しやりながら呟いた。
「あれ、僕知ってる。南蛮の悪魔だよ。」
ユエが頬をまっかにしてクロカゲの腕を押しのけ指を指す。
悪魔がこちらにぐりん、と首を向けた。
その瞬間に、ぎゅ、と何かがねじ込まれる感覚があり、
ユエは思わず頭を抑えて後ずさる。
「気持ち悪いわね。」
サチはユエを支えると、
後ろにあった林をちらりと見た。
悪魔が何かを叫ぶと、
聞こえる声が揺れ、視界がぶれる。
角の向こうに見覚えのある輪郭が重なった気がしたが、
考えかけた瞬間、頭の奥でかちりと何かが鳴った。
ユエは頭の痛みに悶えながらも言葉を吐く。
「倒して。」
最初にクロカゲが跳ぶ。
羽一つ一つが刃になり悪魔の腹を割き、中身が露呈する。
「頭下げてね。」
遠くの林で、サチがまだ土のついた木を軽く投げる。
それは砲弾のような音を発してクロカゲが下げた頭の上をすり抜けた。
ぐしゃり、と音がして裂け目から出てきていた悪魔たちの頭部だった場所が消え、体はすぐに落ちた。
「よしっ。主ちゃん、多分終わったよ。」
そう言って当たりを見回したサチがユエの顔を覗き込むとユエは顔が真っ白になりながらも、
「ありがとう。」
と声を絞り出した。




