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 僅かなあかり(火の玉?)の灯る空間。


 コツコツという小気味よい音を後ろに従えて、「管狐」を名乗る怪しい狐の元に戻ってきた。


 狐は待ちくたびれたというようで大きな欠伸を目の前で見せつけるようにして、


「お戻りですか。」


 と不機嫌そうに言ったその後に、

 首で(ほとんど無いが)


「あっちへ行け」


 と合図してくる。


 どうやら奥の、最初に入った扉とはまた違った扉に用があるらしい。


「そちらへ入ってください。今度はお供致します。


 ……なんですかその顔は。えぇ嫌ですとも。


 わたくしは早く主様の元へ帰りたいのです。


 主様はとても立派な陰陽術の使い手でございまして

 ──まぁそれは今度また時間のある時にでもゆっくりお聞かせしますね。


 ──では、どうぞこちらへ。」


 おしゃべりな口を閉ざし、うやうやしく礼をして扉を開ける。


 ギギギと、木製の門を開ける様な音が響く。扉の向こうには青い草原が広がっていた。


「これは……」


 クロカゲが空いた口が塞がらないといった様子で当たりを見回している。


 それもそのはずだ。


 無機質な扉を隔ててすぐこの、青い空に草原といった自然豊かな景色である。


 ユエも同じような顔をして、きょろきょろとなにがあるかを詮索しているようだ。


「ここはあなた方の本拠地となる場所でございます!

 今はこうして繋がっておりますが、術師が力を込めることにより、独立した空間となるのです!


 ……力についてはまだお話しておりませんでしたか?


 ──神通力のようなものでございます。その妖を顕現させることが出来たのであれば、もう使いこなせているでしょう。


 ええ、そうですとも。──ここに手をついて。

 ──上手にございます。

 ──そうして建物を建てると想像してください。」


(建物……?僕の家……)


 ふわっと風が吹きユエが目を瞑り、

 もう一度目をこすりつつ開けると、

 そこには大きな屋敷が建っていた。


 ユエが昔住んでいた屋敷よりももっと大きい。

 それこそ城といってもいいほど大きい建物である。


「すんばらしい!このわたくし、1年間ほど勤め管狐として術師を何人も送って参りましたが、ここまでの力を持っている方には初めて──


 えぇ、この屋敷の大きさは術師様方の持つ力の量に比例するのでございます。


 ──簡単にいうとですね?

 あなたはとても大きな力を持っているというわけでございます。せいぜい…」


 ここで「管狐」はこほんっと1つわざとらしい咳払いをした。


「《《陛下》》のため、我らが主の一族のため、頑張ってくださいね。」


 にこっと顔を歪めて嘲るようにいう。


 それから踵を返して先程まで無機質な扉だった筈の、「屋敷」の玄関口へ向かう。


「とりあえずまぁ!その妖だけでは戦力が全く足りないのでもうひとつくらい召し出しましょう!さあさ!


 ──ええと、召喚部屋は……

 ああそこですね!なるほど、離れに。


 いいえこちらの話です。扉を開けて貰えますか?」


 そういって扉の前に仁王立ち(四足歩行だからしおうだち……?)する「管狐」の為に引き戸を開けに行く。


 木でできた、厚みはそれほど無いが頑丈な扉だった。


 それをガコッといわせてあけると、


 そこかしこに巻物や本が置いてあり、

 さらに真ん中で火がごうごうと燃える、

 とても暑い部屋があった。


「管狐」が勢いよく中に入っていき、中を見回している。


「ほほーう!こちらもまたはじめてです!

 これは記憶の……残滓、ですね!」


 ぺろりと意地汚そうに舌なめずりをする管狐の視界の端には、幼い子供の姿が映る。


 抱えれば折れてしまいそうな、

 見覚えのある背丈の――


「……あぁ」


 口の中に、涎が溜まる。


「──いや失礼。……主様に子供を頼もうか。」


 ぶつぶつと「管狐」が独り言のような、こちらに話しかけているようなことを言うが、

 ユエの耳にその言葉は、一言も入ってきてはいなかった。


 その部屋には、見覚えがあった。


(僕んちに、似てるな。みんなで住んでた、ちっちゃい方の……)


 そんなことを考えるユエには、狐はただ家の中の虚空を見つめているように見えた。


 クロカゲの目にはどう映ったのだろう。


「おい!」


 と、急に大きな声を出した。


「管狐」は怪訝そうな顔を隠そうともしないでクロカゲを見て、

 思い出したかのように、


「召し出しましょう!」


 というものだから、2人は呆れ返って言葉も出なかった。

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