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2人の部屋の襖が開け放たれる。
この屋敷の誰よりも小さく、そして誰よりもやかましい声を出す彼らは、庭に来ていた政府の役人に声をかけた。
「「ひかたー!」」
そう呼ばれて振り返るのは村雨日方。
政府の役人だが正義感が強く、この2人がまだ狐だった頃、小さいからとよく気にかけていた人間だ。
「おお、元気そうだな。」
日方が嬉しそうに目を細め、飛びついてきた2人を抱きしめた。
あの日、『鐘鳴子』と『鶉飼子』で生まれた管狐は死んだ。
たまたま2人が心配で陰陽師の住まう屋敷に来た気のいい役人が、たまたま2匹が衰弱しているのを見つけ、せめてもと処分を頼まれてくれたのだ。
ほかの役人は、折角手に入れた力であったのに、と嘆いていたが、
歴史への関与がタブー視される今の世の中ではその狐たちの存在自体が闇に葬られた。
そのためか、『鶉飼子』管狐の管轄であったユエの屋敷は優しく気のいい役人に担当が交代し、今も視察に来ているのであった。
「……最初から、遠ざけるつもりだったんだね。
君の物語には、恐れ入ったよ。」
この屋敷の主、ユエが縁側で花を見ながら、
隣にやってきた『鐘鳴子』──翔に尋ねる。
「えぇえぇ。悲劇だね。」
「何が悲劇だよ。とんだ茶番じゃないか。」
くすりと笑うショウの目は、もう花ではなく花でじゃれる『鶉飼子』──珠莉の方へと移っていた。
「僕も、シュリも、君には感謝してるんだ。
素敵な名前も頂いた。ありがとうね。」
そういってユエの方に優しい目を移し、にこりと笑う。
あの話を聞いた後、ユエは考えた末、
1度、両陣営の様子を見ることにした。
そこで日方の手を借りて《《外》》に出ると、そこにはもうほとんど何も無かった。
大きな建物が建っていたような跡と、そこに散らばる硝子の破片。
次に、ショウたちに残った管狐の力を借りて国会議事堂やその周辺の様子も確認した。
米国で聞いたような大きなビルヂングに、整えられた並木。
どちらも同じ世界にあるはずなのに、全く違うものを見たのだ。
屋敷に戻る。
美しい草原に佇む、大きな屋敷。
戸口を開ければ、自分を慕う妖たちが迎えてくれる。
「主さん、外に出てたのか!おかえりー!
……あれ、どうしたんだよ。」
鎌鼬の風真がユエの顔を覗き込むと心配そうに尋ねてくる。
ユエは静かに笑った。




