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『鐘鳴子』はユエの問いに大きく息を吸った。
「今まで敵として認識されていたのは、
この国のレジスタンス──抵抗者と名乗る者たちです。」
「それは我が国の……民ということ?」
「その通り。
最初に話がされていると思いますが、今は西暦2307年。あなたがここへ来た時は2305年でしたから2年経ちました。
この国では2200年頃から過去への遡行が可能になり、2300年──今から7年前。
各地で起こる内戦や、世界中の戦争に巻き込まれないようにと、
当時の政府は過去への遡行で、“力”を取り寄せていました。
陰陽術などが、それに当たります。
そして結界を張った。」
「それなら……良いのでは?」
モミジが、慎重に言葉を選んで尋ねる。
「国民を守るためだったのでしょう?」
「結界が国全体に張られていれば、それで良かった。」
『鐘鳴子』は静かに首を振る。
「……ですが彼らは、主要と判断した場所にしか張らなかったのです。
東京、大阪、福岡。
それも、ごく限られた範囲にだけ。
地方にも戦火は及ぶのに、です。
日ノ本は小さな国ですが、時を経て多くの人が住み着いた。
それらが一斉に同じ場所を目指したら――どうなると思いますか?」
誰も、すぐには答えられなかった。
「政府は、人々を拒みました。
多くの人がそこで死んだ。
そして、対抗するために生まれたのが“敵”。
レジスタンスを名乗る者たちです。」
『鐘鳴子』の声は淡々としている。
「彼らは賢く、強かった。
すぐに結界の穴を見つけ、中央へ入り込んだ。
政府は、過去から何人もの才能ある子供を連れて来て戦わせました。
そして――」
大きく息を吸う。
「最終兵器として連れてこられたのが、
術師様。あなたです。」
「……もう一人、いたような気もしますが。」
そう付け加え、『鐘鳴子』は姿勢を正した。
「まあ、僕の話が、すべて真実だとは思わなくて構いません。
ただ――」
視線が、ユエをまっすぐ捉える。
「その目で見て、確かめてください。
どちらに着くのか。
これから、どうするのかを。」




