17
朝の柔らかい光の中で、
『鐘鳴子』、『鶉飼子』の2人は目を覚ました。
2人を診ていた妖、木霊の季里は布団から飛び出そうとする2人を制止し、
この屋敷の小さな主であるユエを呼ぶように目目連の現に声をかけた。
彼、彼女かもしれないが、この屋敷のどこへでもすぐに言葉を伝えることができた。……書き文字で。
その時に障子や襖が破れるのはご愛嬌だろう。その穴はサチがちょちょいとやってすぐに直してくれるのだ。
そうしてユエと、小さな狐を連れたモミジが部屋にやって来た。
『鐘鳴子』がユエを見て嬉しそうに笑った。
『鶉飼子』はまだわけがわからずと言ったふうに、きょろきょろと部屋を眺めていた。
しばらくして、小さな2人はユエたちに向かって大きく頭を下げる。といっても『鶉飼子』は下げさせられている。という表現が正しかったが。
「本当に、助かりました。英雄殿。」
ほとんど土下座のそれを受け取ると、ユエは姿勢を正し、2人にいった。
「構わないよ。ただ陛下の命であれば、はじめから手紙を送ってくれればよかったのに。」
そう言われた『鐘鳴子』は目を瞬かせたが、
「あぁ……。」
と苦しそうな顔で頷き、モミジの膝に居た子狐を呼び寄せその体をまさぐると、毛の中から小さな機械を取り出した。
「少し痛いかもしれません。
答えなくてもいいから、よく考えながら聞いてください。」
そう言うと、機械のボタンを押した。
ユエの頭の中で、カチカチと音が鳴り、慣れた痛みが生まれる。
「まず、君ははじめにどうやってここへ来た?」
(ここへは陛下の命で来た。来たはずだ。)
思い出そうとすると、痛みが酷くなる。
「それから、君は何と戦っている?」
(僕は南蛮の悪魔と……悪魔?なぜ僕は)
ぶれた記憶が鮮明に見える。
頭の中の音が大きくなったり小さくなったりして、その度に痛んだ。
「そして、僕の説明を、聞いたね。」
(そうだ、陰陽師は陛下に頼まれて……なぜ陛下はこんな子供に……)
痛みが強くなりユエが頭を抑える。
モミジが八つの尾を膨らまし、ユエを庇うように抱きしめた。
キリと襖にあるいくつものウツツの目が『鐘鳴子』を睨みつけ、小さな狐はその様子を心配そうにうずくまって見ていた。




