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『(日付不明、おそらく西暦2250年前後。)


 わたくしは人間が大嫌いなのです!


 見ると頭が痛くなって、近付かれるとお腹がすいてしまいます!

 わたくしは空腹が何よりも腹立たしい!


 大好きな主様(主様は人間だけど別なのだ)が、わたくしを見えないものは食ってもいいと仰ってくれた時、とっても嬉しゅうございました!


 気に食わないものを食え、空腹も満たせる。これほど素晴らしいものはございませぬ!


(別日、おそらく2300年前後)


 素晴らしい陰陽師の主様には、気に食わない布を顔に着けた人間がたまにお願いをしにやって来やがります。


 主様はその人間から名誉の仕事を受けられ、私たちにその《《誉》》のお手伝いを命じてくださった!


 ああなんて嬉しいことでしょう!管狐冥利に尽きるというものです!』


──そんなことが書いてある紙を読みながら、ユエは困った顔をしていた。


「これを読んでしまったあなたにお願いがあります。」


 そう言ってつり目の管狐を名乗るやつはぺこりと頭を下げる。


 よく来るタレ目の管狐よろしく、首には赤と白と黒をより合わせた、太い紐が結ばれていた。


(まず勝手に《《僕んち》》に急に上がり込み、勝手に目の前に差し出したのだ。


 僕はそれを読まされただけじゃないか。


 首の紐の白も細すぎて釣り合いが取れてないし──変なやつ。)


 ユエは唇をツンと出しながらも、その紙の内容を何度か読み直していた。


 その度に、頭の中でカチカチと音がする。


「これらの事はわたくしの幼馴染だったものがかいたのです。


 わたくしの幼馴染、元は人間でして──」


 管狐はユエの顔色については一切伺う気など無いようで、つらつらと話を続けている。


 聞けば、2000年ほど前の時代に生きていて、今は狐の姿にさせられているらしい。


「といっても、わたくしは術があまりきいていないのです。


 というのも、わたくしをつくりあげるための基盤のきつねの魂が間違って消えてしまったようで……


 もちろん、陰陽師共は気がついておりません。」


 そういって鼻をフンとならす姿は、なるほど、人間によく似ている。


「主、あまり信用しない方が良いんじゃないか?」


 横で全ての話を聞いていたクロカゲが管狐をジロリと睨んで口を挟む。


「それでも、少し話を聞いてあげてはどうでしょうか。その、可哀想で……」


 おずおずとユエの後ろに座っていた鵺である嗣己ツグミが珍しく意見を述べる。


 ツグミは最近ようやく少しは意見するようにはなったものの、こうして人の意見と全く異なる意見を言うのはとても珍しいことであった。


「ツグミがそう言うなら……話だけでも聞こうかな。」


 ユエが管狐にそう伝えるとツグミは顔をぱっと明るくさせ、クロカゲは少し口元を歪めたようにも見えたが、


「主がそう言うなら。」


 と言って、横に座り直した。


 管狐の方は、ツグミよりももっと顔を明るくさせ、


「そうですか!そうですか!」


 と何度も頷いた。


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