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 その日の晩も、伝令がきた。


「敵拠点のひとつが見つかったため、準備が整い次第進軍せよ。」


 電話機ごしにこの淡々とした命令を聞いたモミジは慌ててユエの元へ走る。


「ぬしさま〜!伝令ですよ〜!」


 ふわふわと動く八つの尻尾に布団を引き剥がされ、ユエは寝巻きのまま執務室へ急ぐ。


 執務室の机には、早くも拠点の資料が式神によって運ばれてきていた。


(行けるのは3人とその眷属のみ、か。数も少ないし妥当かな。)


 まだ眠い目を擦りながら見た資料によれば敵の拠点で確認されている敵数は約30。


 そしておそらく、《《ヤギ》》が多そうだということだった。


(これならば脅威にはならないと思うけれど…。)


 モミジが体を冷やすからと持ってきたお茶を啜りながら数枚ある資料全てに目を通す。


(特筆すべきことは、拠点の主が毎朝どこかに行くからその間に拠点を殲滅。そして帰ってきた主は確保。生死は問わない…か。)


 不意打ちという事だろう。


「とりあえず中に行くのは2人で。残りの1人は周りの警戒をしてもらおうかな。

 ……モミジ、行きたい?」


 先程からお茶を運んできた盆を抱えキラキラとした真っ直ぐな目でユエの方を見つめるモミジに声をかける。


 すると、モミジの顔が先程の2倍、3倍もキラキラと輝いた。


「行きたいっ!」


「いよっし!」


 にっこり笑う顔を見ながら紙の上にモミジの名前を記す。


(他には、室内戦になるだろうけどもしかしたら野外にもなるかもだから。)


 モミジの後ろにクロカゲと記し、最後に頭を少し捻って、ヒラスケの名を書き足した。


「ヒラスケ?」


 横からモミジが覗いて口を挟む。


「とりあえずバランスと協調性かなあって思って。

 後は、あの薄い体なら少し隙間があればどこでも入れる。なのに硬いからね。」


 すぱっと首元を切り裂く仕草をする。残忍で滑稽な仕草だったが顔は不安そうだった。


「どうにも、攻撃してきていないものをっていうのは、あまりいい気はしないよね。」


 だが命令には従わなくてはいけない。

 命を救ってくださった陛下の勅命を遂行できることが、ユエの生き甲斐と言っても過言では無いのだ。


(ゆるしてね、名もない敵さん。)


 そうして、夜が明けるのを待った。

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