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その後は順調に、
──順調すぎるくらい順調に進んでいた。
戦が増えれば仲間も増えた。
河童の川良に一反木綿の平助、猫又の真琴に化け狐の紅葉。
ユエが一番驚き腰も抜かしたのがずっと昔に本の挿絵で見たのとそっくりな鬼、吹呑が現れたときで、
屋敷中にユエの
「うわーーーっっ!」
という声が広がって、皆が召喚部屋を見に来たものだ。
敵にも色んな種類があって、ヤギは敵の中でも1番弱いんじゃないかとも話になった。
ユエが見たことの無いものも多くて、ワニやハエ、酷いのだとイナゴの頭をしたのもいた。
妖たちの話ではヘビっぽいのが1番強く、ハエ、ワニ、イナゴ、ヤギという順で弱いらしいが、ユエはイナゴが1番怖かった。
そうして敵全体が分かるくらいには実戦経験も積んで、ユエは送られてくる資料をちゃんと自分で読むようになった。
その幾多の戦の中で1度だけ、ユエが真っ先に襲われかけたことがあった。
その時はすぐに気がついたスイテンが金棒で敵を倒してくれたが、その戦の戦績はあまり芳しいものではなかった。
ユエの頭の中で、カチカチと何度も音がした。
その後ユエは管狐に頼んで本を取り寄せ、ある呪文を学んだ。
それは呪術師でなくとも唱えられる呪文、自爆の呪文だった。
もちろん妖たちはそれを止めようとしたが、
「僕を弱虫にするつもりか!」
と、取り合わなかった。
その代わり、
「もし僕が呪文を使う時がきたら、君たちは直ぐに逃げるんだ。僕のことを陛下に伝えるものがいないとだめだからね。」
と言って笑った。日本男児とはそういうものだとも。
そのときにユエは味方には他に自分と似たような力を持つ者やまた別の力を持つ者もいるらしいという話を聞いたが、あまり会うことはなかった。
管狐によれば、基本的には個人でのびのびと戦ってほしいと言うことだとか。
だが1度だけ
ユエが戦場で会った少年がいた。
その少年はユエよりもうんと小さくて(ユエはここに来てからずいぶん食べたが背は伸びなくなっていたのでこの子もそうなのかもしれない)、でもうんと高貴な家の子に見えた。
その子は妖を使役するんじゃなくて、形代という人の形をした紙に、思い浮かべた人を写す?ようなことができるらしく、ユエは話を聞こうとそばに寄ったが、その少年はことごとく話を無視し、
「ぼくらは夢だけ見ていればいいんだよ。
ここは、都なんだから。」
とだけ言って鎧姿の形代だったものと消えていったのだった。




