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糸の切れた傀儡

✦ ✦ ✦

判断を下すための時間は、ほとんど残されていなかった。デイジーの瞳の色が変わった。


つい先ほどまで糸の切れた傀儡くぐつのようだったその女は、クロスボウの矢が放たれた瞬間に、その眼に別の光を宿した。


マーカスはデイジーへのコントロールを解き、彼女を戦局の中へと放り出したのだ。


マーカスにとって、この戦いにおけるデイジーの役割は、チェスにおける「クイーン」のようなものだった。


それは極めて強力な駒だ。


しかし、彼女を主導者プレイヤーにさせるわけにはいかなかった。なぜなら彼女は知らないのだ。最大最強の脅威であったあの熊が、すでにマーカスの陰湿で、下劣で、到底許されるはずのないやり方によって処理されてしまったことを。


だからマーカスはまず彼女を傀儡、あるいは囮として使い、第一段階の戦術を完遂させた。その上で、デイジーのコントロールを解除した。


戦場に投げ出された一枚の駒として、デイジーは状況を理解できないまま、それでも行動を起こさざるを得なかった。


彼女は敵――その男に向かって中指を立てた。それは「FXXK」を照準するためのジェスチャーだった。


相手もまた、同様のジェスチャーを返した。


その光景は、事情を知らない者の目には、男と女が互いに中指を立て合うだけの、ひどく卑俗な場面に映ったことだろう。


しかし、これこそが神秘に満ちたアメリカ人同士の戦闘なのだ。


そしてもう一方では、マーカスと湖のような青い髪の少女もまた、同じような対峙の局面を迎えていた。


✦ ✦ ✦

「対話で解決しよう。あんたたちは一体何者だ? なぜ俺たちを襲う?」


「名前はマーカス・シャピロ。教団騎士だ。我々は任務を受けた。この山に潜む異教徒信仰の魔女を討伐するという任務をな」


「魔女ならもういない。俺たちが殺した。この子は魔女の手から救い出したんだ。見逃してくれないか?」


「死体を見せてもらおう」


「いいだろう。ただし、まずはその中指と弩を下ろすのが先だ。距離を保ち、並んで進もう」


「三、二、一で、同時に下ろすぞ」


「わかった」


「fuck!」


✦ ✦ ✦

アイリシアは「現象学的本質直観」によって、瞬時にそれが「FXXK」ではなく「fuck」であることを見抜いた。


彼女は〇・五秒待つ必要があった。ウィンドウ期が終わるその瞬間に、互いの距離を測り、「FXXK」を解放すべきかどうかを判断しなければならない。


その傍らでは、安杰罗アンジェロとあの女の決闘もまた、一瞬のうちに始まっていた。


FXXK! FXXK!


FXXK! FXXK!


FXXK! F……


安杰罗が……あの女に負けるなんて……。


女は泰然と立ち尽くし、安杰罗は糸の切れた傀儡のように地面に落ちた。


だめ、安杰罗を助けに行かなくちゃ。今の彼に「FXXK」を投げかけても意味がない。こういう時は、操っている側――あの女を叩くべきだ。


アイリシアは走り出した。男は弩に矢を番える暇はない。それには時間がかかる。


だが、制御された安杰罗が立ち上がり、アイリシアを追い始めた。


「やめて、やめて! 安杰罗!」


アイリシアは悲鳴を上げた。苦痛に満ちた叫び。安杰罗があの女に奪われてしまった。


終わった。すべてが終わってしまった……。


FXXK! FXXK!


貴重な二発の「FXXK」は、どちらもあの男には命中しなかった。


「マーカス……あんたの背後に、あの老魔女がいるわ!」女が突然叫んだ。


何だって? おばあ様が来たの?


おばあ様、早く私たちを助けて……。


しかし、伝説の老魔女が孫娘を救いに現れることはなかった。


マーカスと呼ばれた男は、前方宙返りで素早く身を翻すと、背後の空間に向けて中指を突き出し、叫んだ。


「FXXK!」


それで、終わりだった。


✦ ✦ ✦

終わった、と俺は思った。


向こうの男が、自分の「クイーン」を切り札として俺にぶつけてきた時点で、勝負はついていたんだ。


単に相手より速かった、それだけのことだ。俺の「FXXK」はあの女を射抜いた。


相手は俺の仕掛けた詭計トリックに気づかなかった。勝利を確信したその瞬間に、女を支配したつもりになっていた。


俺はその流れを逆手に取り、自分が敗北したかのように偽装した。


支配されているのは俺じゃない。あの女の方だ。


アイリシアさえも騙してしまった。彼女はこの計画を知らなかったからこそ、あの演技は真に迫ったものになった。


終わったのだ。俺に操られた女は、男を欺くための嘘を吐いた。俺は女を操り、その胸元に忍ばせていた模擬爆弾を放り投げた。それは正確に男の後頭部を直撃した。


終わった。俺は中指を立て、男の方へと突進した。アイリシアは俺がすべての「FXXK」を使い果たしたことに気づいているはずだが、敵は俺の残弾数を知らない。


飛び出し、決闘を挑むふりをする。そしてアイリシアが戦闘に終止符を打つ。そうすれば、すべてが片付くはずだった。


男が驚愕の表情で振り向く。俺が五メートルの境界線に踏み込もうとしたその時、俺は気づいた。奴の懐に、まだ「何か」があることに。


五歳ほどに見える、全裸の、痩せこけた子供が服の間から這い出してきた。


子供はナイフを握りしめ、アイリシアの方へと向かって走り出した。


FUCK!


この畜生が。

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