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「さり早くっ」
「そんなに焦らなくたってお祭りはなくなったりしないわよ。それにいいの? 二人だけになってしまったけど」
「いいのって言われてもあきとごう君の邪魔はできないしことは急用ができたとかで消えちゃったんだから仕方がないでしょ?」
元々、みんなの中にみんなで楽しむという気持ちがなかっただけだ。
いやまあ、みんなで見て回ることになっても変な抵抗なんかはせずに普通に参加していたけどさ。
「そうじゃなくて……あなた的に二人きりでいいのかという話よ」
「今更そんなことで引っかかるわけないでしょ、それにさりとふたりきりの方が静かにいられるから寧ろ大歓迎だよ」
そこまでお金に余裕があるわけではないからそこは上手く工夫をして楽しもうと思う。
二人とも大食い選手ではないから一つ一つを分け合ってもいいかもしれない。
「まずは一通り見て回って~」
「今日はテンションが高いわね」
「お祭りだからね、しかもこれまでと違って金魚の糞状態ではないんだからテンションも上がるよ」
かき氷で内を冷やしてから温かい食べ物を食べようか。
この組み合わせだけでそれなりに吹き飛ぶのが怖いところだけどケチケチしていたら楽しめない。
「あ、二人がいるね」
「いく?」
「ううん、気づかれないように距離を作ろう」
ささっと他の食べ物なんかも買って見つからない場所まで移動した。
それにしても手とか繋いでいて仲よしだった、そんなこと同性同士の私達だってしていないのに積極的すぎる。
「こういう感じでこととも遭遇したらどうしよう」
妹とごう君の場合と違って大人な対応はできなさそうだ。
何故ならこれまで一度もなかったから、裏ではどうかわからないけど見せてくれなかったからお祭りパワーも相まって盛り上がりすぎてしまう。
「いまみたいに大人な対応をしてあげるしかないわね、男の子といたなら尚更よ」
「ん-ことは女の子を好きになると思うよ」
「それでもはなにアピールはしなかったわね」
「それはそうだよ、私に興味があるとか言う不思議ちゃんはさりぐらいだよ」
あと複数人もいたところで上手くはいかないからこれぐらいでいい。
「……いまのはちょっと自惚れすぎたかな?」
「あなたに興味を持っているのは本当のことだから気にしないでいいわ、私ぐらいというところには首を振るしかないけどね」
うん、今回のこれは安心したくて求めたことだから嬉しい。
お世辞でもいいのだ、本当に嫌ならお世辞すらも言えなくなる。
「さ、一陣の食べ物を食べ終えたらまた見て回らないとね」
「ええ、最後まで付き合うわ」
少なくともお祭りが終わるまでは付き合ってもらう。
その後は自由にしてくれていいから横にいてほしかった。




