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239  作者: Nora_
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02

 なるほどねえ。

 ごう君の側に妹ちゃんとあの奇麗な子と可愛い系の女の子がいる。

 ハーレムか、ハーレムなのか……? あんなにモテる子だったっけ?

 一応ね、うん、周りを見てみたけど私の側には誰もいなかった。

 異性とか贅沢に求めないたりしないからさ、せめて同性ぐらいはいてくれてもいいと思う。


「頑張ろう」


 ただ羨むだけでは誰も来てくれないことぐらいはわかっている。

 学生らしく頑張って人のために動いていたらいつかはそこを見て近づいてくれる子がいるはずだ。


「おい、さっきからずっと見ていただろ?」

「うん、急に女の子が増えたからさ」


 男の子も同じぐらい増えていれば露骨に態度を変えているわけではないとわかるから安心できる。


「特になにもないけどな。なんだ、気になるのか?」

「うん」

「うぇ」

「でも、八つ当たりとかは神様に誓ってしないから安心してよ。見ていてごめんね、じゃあね」


 それでも同じタイミングで変わってほしくなかった。

 ほら、誰かは側にいてくれないとやっぱり寂しい。

 授業が始まってしまえばいらない移動は無駄だと思っているからトイレも済ませてしまうことにした。


「ふぅ」

「やっぱり小椋君と生田さんって仲がいいわよね」


 ここにもこそこそと動きたくなるタイプがいたか。


「あ、昨日の、ことの弟だからね」

「羨ましいわ」

「一緒にいれば仲良くなれるよ。そこ、いいかな?」

「ええ」


 手を洗わないで出ることはできない。

 しかし……これはもしかして軽く敵視されているのかな?

 いやいや、私なんか敵視したところでなにも変わらないからやめてほしいところだ。

 その時間がただただもったいないから止めてあげたくなる。


「敵視する必要なんかないからね」

「唐突ね」

「一応言っておこうと思ってね」

「わかったわ」


 これでよし。

 言っても後から喧嘩を売ってくるようなら馬鹿だと言わせてもらう。

 こんなの敵視してどうするんだって飛び掛かってもいいぐらい。


「はなー……教科書忘れたぁ……」

「英語の? 私の方もあるけど同じ時間ではないから貸してあげるよ」

「ありがとぉ……」


 そういえば学校ではこんなのばかりだな……。

 それ以外のことでことが来てくれたことってないような……? 大丈夫かな私達。

 やばい、なんでお友達のままでいられたのかわからなくなってきてぐるぐると……ぐるぐると……。


「生田、おーい」

「江守先生、私もう駄目かもしれません」

「駄目でもなんでもとりあえず教室に入ってくれ、授業の時間だからな」

「はい」


 ぐるぐるしすぎて戻ってきたから授業には集中できた。

 無駄な移動を好まない私でも休み時間は別の場所にいたい気持ちになって出た。

「丁度いいところに!」とことから英語の教科書を受け取り、それでも戻らずに歩いていく。


「あっ」


 なんにもないところで躓いて転びそうになったけどこういうときこそ慌てないのが一番だ。


「よっ、ほっ、とりゃー! っと」

「ぱちぱちぱち」

「ん? あれ、今日はよく会うね?」

「ええ、あなたを追っているから」


 え、こわ……。


「私を追ってもなにも得られないよ、ごう君とだって過ごしたりしないんだから」

「そうなのね、参考になるわ」


 必死に誘ってくるものだからちゃんと約束を守って集合場所にいったのに全く誘った本人が来ないことが相手のときぐらいやりづらさがある。

 余計なことを言わなければよかったか、あれでかえって逆効果というか……悪い方に傾いてしまったみたいだ。


「それよりごう君に興味があるんだよね?」

「いえ、小椋君に近づいている女の子に興味があるのよ。例えばあなたの妹さんとか、いいわよね」

「お、あきに興味があるんだ? なるほど」


 結構いいのでは……と思ったけどそういえば妹には誰かはわからないだけで好きな子がいるのだ。

 一瞬、言っていないだけで目の前のこの子なのではないかと盛り上がりかけたものの、なにかが崩れてしまいそうだったからやめた。

 だから私は関係ない、関われてもいない。


「さて、戻ろうかな」

「私も戻るわ」


 一つ隣の教室か。

 それはそうだ、自分以外は興味がない冷めた人間ではないからクラスメイトだったらわかる。

 知っているのに敢えて知らないふりをしたりする人間でもないしね。


「生田さん、さっき江守先生が後で来てほしいって言っていたよ?」

「うん、教えてくれてありがとう」


 変なことを言ってしまったもんなあ、先生なら気にしてしまうか。

 ただ少し乱れただけでそれ以上のことはないから安心してほしい。

 あとはやはりライバルだから、心配されたくなかった。


「あ、生田――大丈夫なんだな?」

「はい」

「ならいい、そのまま元気でいてくれ」


 少しだけでも話しやすい先生がいてくれるのはいいことだ。

 だからこうして元気に通えているというわけだった。




「よ、よう」

「んー! はぁ……」


 姉弟で揃って私を待たせることが得意なようだ。

 でも、怒っているわけではない、唐突にしなければならないことができたりするのが人生だからだ。


「お勉強を教えればいいんだよね? 教えるの下手だから力になれるかはわからないけど任せてよ」

「おう、頼む」


 中間テストも終わったばかりなのにどうしてだろう、期末テストで勝ちたい相手でもいるのだろうか?

 私の方はいつものようにやって先生に褒めてもらいたかった。

 ライバルだけどたまには甘えたいときもある、もちろん、その場合はなにかお手伝いをするから安心してもらいたい。


「はな先輩の勉強をやっているときの顔が好きだ」

「そう? ありがとう」


 ではなく、聞いてきてほしいところだけど。

 一年生の問題ぐらいは余裕でできるからお願いだからと興奮していた。

 が、頼んできたのに結局最後まで聞いてきてくれることはなくて、完全下校時刻になってしまって……。


「えっと?」

「やる気を出したかった、そういうときなら姉ちゃんに頼むよりもはな先輩とやれた方がいいと思ったんだ」

「じゃあ少しは役に立てていたということだよね?」

「当たり前だ、これからも頼んだときは頼む」


 ならいいか。

 お家まで送ってくれようとしたから全力で断ってダッシュで逃げた。

 彼が嫌だからではないし夜も得意なわけでもないけどだって送られるとか年上として情けないでしょ?


「ただいま」

「おかえり、遅かったね?」

「うん、ごう君とお勉強をしてきたんだ」

「なるほど、やっぱりごう君ってお姉ちゃんのことが……」


 そんな訳があるかい、私は本人から彼女のことが好きだと聞いているのだ。

 だけど自分の決めたルールを守っているのもあって、見ていることしかできない状態で。


「ご飯とお風呂、どっちを先にする?」

「それならお風呂かな、作ってくれたのにごめんね」

「気にしなくていいよ、それにお姉ちゃんがお風呂に入るなら私も入るよ」

「うん、その方が両親も遅い時間にならなくて済むよね」


 かといって、譲ろうとしても結構面倒くさがりで入りたがらないからいつも先に入ることになるけど。


「洗ってあげる」

「いいの? それならお願いしようかな」


 髪も長ければ体も大きいから届かないところだってあるはずなのだ。

 当然、こちらの分はやらせたりしない。


「はあ~気持ちよかった」

「うん」


 妹を洗い終えたらこちらはささっと洗ってご飯の時間にする。

 朝もお昼も夜もちゃんと食べなければ駄目だ、成長云々もそうだけどそうしないと持たないのだ。

 今日は私流の筋トレができなかったから明日は早く起きて公園にいこうなんて考えつつ妹作のご飯を食べた。


「ねえお姉ちゃん」

「ごちそうさまでした、美味しかったよ」

「あ、うん、それはいいんだけどさ」


 これも結構珍しいことだったりもする。

 一緒のお部屋だけど緩くお喋りをすることがあっても相談を持ち掛けてくることは滅多にないから。

 急かすのは違うから黙って待っていた、けど、


「ごめん、やっぱりなんでもない。先にお部屋にいっているね」

「うん」


 滅多にないうえに最後まで話してくれることも少ないというのが微妙なところだった。

 確かに役に立てないかもしれないけどちゃんと言ってくれなければ動くことすらできない。

 もやっとなったから食器を洗ってもすぐにお部屋に戻ったりはしなかった。


「うぅ」


 夜は苦手だけど外にいるとやはり落ち着く。

 一緒にいると馬鹿なことを言い出すかもしれないからこの時間は必要だった。


「もしもし?」

「はな、いまから会いたい」

「わかった、じゃあお家で待ってて」


 暗いところが苦手であることは言っていないからこんな感じで急に頼まれたりする。

 一応は二階でゆっくりしていた妹に話をしてから出た。


「こっちこっち」

「え、なんで外に?」

「不貞腐れていたからかな、ちょっとコンビニにいこ?」


 生ぬるい空気が微妙な気分にさせる。

 あと、男の人には悪いけど前から歩いてきたりすると怖かったりもする。

 それでも私はお姉さんだからこの子を守ってあげなければならない。


「ごうなんて嫌い」

「急だね」

「……だってあきちゃんの話しかしないし」

「はは、嫉妬かー」

「前までならもう少しぐらいは私に興味を持ってくれていたのに……」


 まあ、魅力的な異性がいたら仕方がないのではないだろうか。

 妹だって姉よりも他の子! という感じになったからこそわかるのだ。

 そういうときにしつこく絡んだって上手くいかなくてもやもやするだけだからやめた方がいい。

 気になるとしても距離を作って見ているだけに留めた方がいい。


「あっ、だからって男の子として見ているわけじゃないからねっ?」

「ん? うん」


 別にそこはどちらでもよかった、弟のことを男の子として見ていても気持ち悪いとは思わないし。

 ただ、どうしたって家族以外の子を好きになるよりも難しい恋になるから耐えられそうにないなら……いや、これも余計なお世話で矛盾しているか。


「うぅ、もやもやする!」

「うん」


 正直、羨ましかった。

 言わないで抑え込むことを繰り返した結果、出せばいいことも出せなくなったから上手くやれる自信がなくなっていた。




「こんにちは」

「うん、こんにちは」


 妹から離れたばかりだからいってきたらどうかと言ってみた、が、彼女は首を振って腕を組む。


「妹さんに遠慮をしているわよね?」

「していないよ、だからいまもいったんだよ」

「嘘つきね、その偽の笑みを浮かべるのもやめなさい」


 ええ、中々酷いことを言うなあこの子。

 そりゃ確かに心から笑えていないときだってあるけどいつだってそんなことになるわけではない。


「名字ぐらい教えてくれない? ほら、これから妹がお世話になるかもしれないから」

水口みずぐちさりよ」

「よろしく」


 去るかと思えばそうではなく難しい顔でこちらを見てきている。

 だから私もじっと見ていたら「あなたと見つめ合っていても仕方がないわね」と吐いて歩いていった。

 妹ともこととも違うタイプだ。

 残念なのはみんな仲よくはできないかもしれないという点だ。

 ごう君を取り合うことにならなくても二人のどちらかを好きになられた時点で明るく楽しくはできなくなる。

 更に言うと簡単に教えてくれたりはしないから一人だけ別の場所でなにもわからずに過ごしていくしかない……。


「トイレトイレっ……って、はな先輩」

「小学生ではないんだからやめなよ」

「い、いや、友達に拘束されて漏れそうだからやばいんだ、またなっ」


 戻ろう。

 そもそも私も階下でなんでぼうっとしていたのか。

 いまのごう君みたいに自然と来てくれているわけでもないのに期待して留まっていたのだとしたら恥ずかしいな。


「あ、江守先生だ」


 ん-ライバルはみんなから求められているのにこちらはこれか。

 求めているから誰も来てくれないのだ、だったら頑張って求めないようにしたいと思う。


「はあ~」


 いまは日課の筋トレの時間もただ虚しいだけだった。

 だって全く結果に繋がらないからだ。

 小さい頃から早寝早起きをして、ちゃんと食べて、それでもこの身長なのだから終わっている。

 かといって、これをやめても他のことで上手く時間を使える自信もなかったから続けるしかない。

 身長面は駄目駄目だけどいいことがゼロというわけではないからまだ折れずにいられた。

 終わってから残念だったのは課題のプリントを忘れるというありがちなアホなことをやらかしたことだ。


「あった」


 マイナス寄りなときは結構悪い方に傾くから終わらせてプリントを机の中に突っ込んでおこうと決める。

 それでやっていたわけだけど……。


「あれ、これどうやって解くんだっけ……?」


 わからない、教科書やノートなんかを出しても駄目だった。

 多分、普段通りならすぐにあ、これかとなっているところだったと思う。


「駄目だ~……」

「なにが駄目なんだ?」

「あ、これがわからなくて……」


 結構声が大きかったのかわざわざ廊下から来てくれたみたいだった。


「任せろ……って、あれ? んー……?」

「はは、江守先生がそれでは不味いと思います」

「ま、待て待て。んーあっ、これはこうするんだよ!」

「ああっ、ありがとうございます」


 やはり普段通りにやれていればたかだかこの程度の問題で躓くこともなかったのに。


「江守先生、聞いてほしいことがあるんですけどいいですか?」

「三十分ぐらいで終わらせてくれるならいいぞ」


 最近のことや今日は全く駄目なことを聞いてもらった。

 いいのかどうかは置いておくとして、素直に甘えることができるのは先生が相手のときだけだ。

 前も言ったように両親は結構面倒くさがりなところもあるし休んでもらいたい気持ちもあるからこんなことは言えない。


「江守先生ならどうします?」

「ん-俺なら一緒にいたい気持ちを抑え込んで距離を作るなんてできないぞ」

「え、意外ですね」


 それでも喧嘩とかにならずに上手くやれたということで、だけどそれは……。


「当たり前だろ、だって友達だぞ? 一緒に過ごしたくなるだろ、遊びたくもなるだろ、それでたまには甘えたくなるだろ」

「そこは否定できません、でも、邪魔な存在にもなりたくないではないですか」

「おいおいどうした、生田らしくないマイナス思考だな」


 ずっとお友達みたいに一緒にいられたというわけでもなし、だからわからなくてもおかしくはないけどより微妙な状態になった。

 自分から持ち掛けておいてあれなものの、弱いところを晒していることになるからだ。


「え、江守先生も学生時代のことを思い出してみてください、私の気持ちもわかるはずです」

「自慢じゃないが自然とみんなが来てくれたからな」

「色々と聞いてもらえて楽になりました、ありがとうございました」


 馬鹿なのは自分の決めたルールで縛られてしまっているということだった。

 そのため、先生がどれだけいいことを言ってくれても変わったりはしない。

 本当に今更な話だけどお友達みたいに見てしまっていることも問題なのだ。


「生田」

「はい?」

「困ったらいつでも言ってくれ」

「はい、ありがとうございます、失礼します」


 どうにもならなさすぎて一周してしまったようだ。

 そういうのもあって解決はしていないけどできてしまった気分になった。

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