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僕と死神  作者: 建上煉真
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2章:吸血鬼:――TYPEⅢ――

 さて、体よく買った夕飯の入ったビニール袋を両手に提げ、僕はスーパーから東に位置する、自分のアパートへ向かっている。それなりに古く部屋も広く無いが、トイレ・風呂付きでそこそこ安ければ、どうでも良かった。

 僕は家を出たかったのだ。

 だから、高校も実家から遠いところを選び、一人暮らしをしたいと叔父と叔母に告げた。叔父と叔母は勿論反対したが、高校を合格してからそれを言ったので、しぶしぶ了承を得ることが出来た。

 一人暮らしをしたかったのは唯一つ、実家に居たくなかった。

 どうしても、妹の事を思い出してしまうから。

 だから、早々と一人暮らしを始めた。

 しっかし、あの死神少女は結構食べる。最初、この世界の食べ物が普通に食べられる事を知って、結構驚いたものだ。

 ……まぁ、食べる量と食費にも結構驚いたけれど。

 お金に関して言えば、一応、月の仕送りもあるし、いざとなればバイトをしても良いと考えている。

 生きる難しさに比べれば、どうって事はない。

 昔は死にたかったけど。

 だけど、今は死にたいとは思わなくなった。

 それは、確実に彼女のお陰だろう。

 そんなこんな思考していたら、アパートの前についていた。

 さて、腹をすかしている死神お嬢様に早く夕飯を作ってあげよう。そう決意し、カンカンと音が鳴る階段を上がる。アパートの前に立って、鍵を開ける。

 簡単ながちゃりと言う音。古いアパートだから簡単な鍵のみの防犯対策しか無いが、まぁ盗まれる物なんか無いし、それに留守番をしている居候がいるから心配ない。

 ……他の人からは見えないけど。

 それで前、散々な目にあった。

 まぁ、それは置いといて。

 ドアノブを捻り、部屋へ入る。

 そして、

「おかえりなさーい」

 と言う盛大な声と共に、どたどたと走りながら、その死神少女が現れた。黒いワンピースに白いショートカットの髪、肌は白いと言うよりも、全体的に色素が薄い感じ。身長は精々130cmぐらいで、どう見ても小学校中学年から高学年程度にしか見えない。顔もそれに比例して童顔。どっからどう見ても小学生にしか思えない。しかし、これでも数百年生きる“死神”だと言う。

「ねぇねぇ、ご飯買って来た?」

 とその死神少女は近づいてくる。

 僕は、「うん」と答え、ビニール袋を玄関に置く。

 死神少女はビニール袋を漁りながら、

「今日の晩御飯は何かな~♪」

 と嬉しそうに歌っていた。

 まったく、のんきなものだ。お前の食費だけでどんなだけ、金が翼を生やし、飛んでいくか教えたいものだ。

「お、チキンカツだ~。えっと…それに、から揚げか~。楽しみ~」

 まぁ、昔は飯のことでこんだけ、幸せそうな顔をする者がいたとは知らなかった。

 そんだけ、彼女の事を知ったのかもしれない。

「ねぇねぇ、早く作ってよ!」

 と言う声で僕は覚醒した。

「うん。分かった。ところで、ちゃんと言っといた仕事やって置いたか?」

 あんまり期待して無いが、簡単な家事の仕事ぐらいやらせないと、

 食費をただただ消費する怠け者になってしまう。

「えっ!! えっと……。あはははは……」

 やってないのかよ。

 やってないのかよ!!

「はぁ……。いつも言っているけどな、ただでさえ居候の身なのに、さらに食費がかさむんだから、洗濯や皿洗いぐらいやっといてくれよ……」

 僕はため息を吐きつつ、この子に何を言ってもダメなのかと思い始めた。

「で、でもでも~」

「でもじゃねぇ」

 僕はすかさず突っ込む。

 死神相手に突っ込むのは僕が始めてかもしれない。

 僕と死神少女との喧騒で起きたのか、彼女のペットの黒猫がのそりと立ち上がった。

「何をギャアギャア騒いでるんだよぉ」

 と喋りながら四速歩行で歩いてくる。

 あくまで言っておくが、普通の猫は喋らない。

 そこが死神のペット。と言うことか?

 「おれはペットじゃねぇ」と言うが、可愛い黒子猫が悪ぶってもなんともない。

 僕が喋る不思議猫と会話していると、横から

「ねぇねぇ、聞いてよぉ。クロぉ~」と、死神少女が割り込んできた。

 しかし、黒猫に『クロ』って安直過ぎるのではないか?

 まぁ、『エリザベス』とか『ゴンザレス』とかあまりにも凝り過ぎている名前もどうかと思うけど。

「なんだよぉ、マシロぉ」とクロは言った。

 そう、この死神少女の正式本名は、白神(しろがみ) 真白(ましろ)と言う。

 なんとまぁ、『白』と言う漢字が多い名前だろうと思った。

 というか、死神に普通の日本人名が付いている事にもビックリした。

 まぁ、似合うと言えばそうなのだろうが。

 イメージカラーが『白』だと思うから。

 さて、そんな事は置いといて。

 僕は夕飯の支度をしにキッチンへ行く。

 黒いエプロンをつけて、手を洗う。

「おい。マシロも手を洗って、皿を出しといてくれよ」

 と夕飯の準備をしながら言った。

 マシロは、「はいは~い」と元気良く答えた。

 いつもそんな感じで手伝ってくれたらどんなに助かるか……。

「ねぇ、ふゆくん。この皿はここでいいのかな?」

 ああ。そこでいいよ。

 と、答えるつもりで気づいた。

「ふゆくんってなに?」

 すると、マシロから、

「えー、あだ名だよぉー。私はこれからふゆくんって呼ぶから。よろしくね☆」

 ☆っじゃない! どんな仲の良い友人(男女とわず)そんなあだ名で呼ばれた事はない。よくて『(ふゆ)』だ。まぁ、ほとんどのクラスメートは、こんな呼び方をするのだが。

「えーいいじゃん。ふゆくん。かわいくて」

 かわいくて。じゃない! 貴方は死神じゃなかったのですか? 趣旨変更ですか? それとも元々がこうなのですか?

 僕はいい加減悩むのに疲れてきたので、もう『ふゆくん』で良い事にした。どうせ誰も見ないし、聞きもしないからな。 そしてよくよく考えれば、『冬』と言うあだ名で君をつけたら『ふゆくん』になるので、そもそも怒る必要性が無いことに気づく。なんだ。いつもクラスメートが読んでいる呼称とあんま変わらないじゃないか。っつーか、そのまんま。僕はいつもクラスメートに『冬』と呼び捨てにされるので気づかなかった。って言うか、そもそもそんなに僕は友達はいない。話しかけてくれるクラスメートも少ない。

 …………。何だろうか。僕は軽くイジメにでもあっているのだろうか。

 だんだん、僕がおかしいヤツに見られるんではないかと言うほど、混乱してきたところで、思考を一旦排除。食事支度を始める。

 作り始めてから数分後、丁度あり合せのサラダを作るために包丁で野菜を切っていた時の事、僕はそう言えばっとマシロを振り返って言った。

「僕の学校でちょっとおかしな事が起きてんだ」

「おかしな事?」

 マシロは簡素で本当に何も無い中、ポツンと鎮座しているTVを見ていたが、僕の言葉に興味を持ったのか、くるりと振り返って、興味津々とでもい言いたげな瞳をした。毎日毎日家の中に引き篭もっているこの居候は同じことの繰り返しの毎日に飽きてでもいたんだろう。

「ああ。事のきっかけはだなぁ――」

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