1章:死神:――TYPEⅢ――
僕は一時限目以降、授業を受ける気にならず、屋上で時間つぶしにやってきた。
屋上に来たのはたまたまだ。
しかし、僕は心の奥底では知っていたのかもしれない。
『彼女がそこに居る』と。
案の定、死神は屋上で仁王立ちをしながら、唯一の屋上扉を睨んでいた。
死神は僕を見つけると、近づいてきて僕の前でとまる。
「調べました。色々な事を」
何を調べたと言うのだろう。
何を今更、僕は知っているはずだ。どうせあの事件の事だろう。
僕は立っていられなくなったので、そのままコンクリートの屋上に座った。
「気にする事じゃありません。妹さんの死は貴方のせいじゃありません」
やっぱり、それか。
「どうでもいいさ。…もう」
「……そうですね」
この時は驚いた。
てっきり、定番の慰めでも言うのかと思った。
「もう過ぎた事はどうしようもありません。問題は貴方がこれからどうするのか? と言うことです」
僕は死ぬのか。
「そうですね。このまま何もせずに流されるまま生きているのでは、死んでいるのと何も変わりません」
僕が何もしなくなったのはあの事件からだ。
僕は妹が死なないように必死になった。
しかし、神はそんな僕をあざ笑うかのように妹を連れ去った。
その時思ったんだ。
『どうせこうなるのなら、何もしない方が良いんじゃないか』と。
しかし、死神は首をゆるゆると振った。
「たとえ至る結論が同じであったとしても、何か行動を起こすだけで、それだけで少しでも楽になれる人はいるんですよ」
僕は顔を上げた。
死神は死神らしくない顔、まるで聖母のような微笑で僕を見下ろす。
「貴方は妹さんのために一生懸命に頑張ったのでしょう? だったら、妹さんは嬉しかったはずですよ」
肩の荷が下りた感じだった。
救われた感じがした。
誰にも言われた事の無い言葉。
誰にもかけられた事の無い笑み。
僕は気づいたら泣いていた。
別に泣きたかったわけじゃない。
気づいたら、涙を流していた。
「私が、今度は貴方の支えになりましょう」
僕と死神は××をした。