第一話「死亡、そして異世界へ」
「今日も仕事疲れたなぁ」
そんなことを言いながら俺は職場から家へと帰る道を一人で歩いている。
「最近仕事しかしてねぇな」
まぁ、そのおかげで同期たちと比べ早い時期から出世コースにのれたものの上からも下からも頼まれごとばかりで絵にかいたような中間管理職になってしまっているが。しかも、そのせいで仕事に追われ、奥さんどころか彼女すらいない始末だ。独り身は楽ではあるがこのまま一生一人で生きていくことを考えるとぞっとする。
「婚活でもしようかな」と、そんなことを考えながら信号待ちをしていると、目の前の横断歩道からボールを追いかけた子供が飛び出してきた。
危ないと声をかけようとした瞬間
道路からトラックのクラクションの音が聞こえてきた。その瞬間俺の体は一直線にその子供目掛け走っていき。俺は少年を抱きかかえるようにしてトラックから少年を守った。
ドンっ!!!
衝突音とともに俺の体は吹き飛ばされ、地面を転がっていった。今までの人生で味わったことのない痛みを感じながら、薄れていく意識の中で少年を探した。
「よかった、無事っぽいな...」
―――
「おーい犬養さん、だいじょうぶですかー?」
近くで俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「んあ?どこだここ?」
周りをよく見れば病院なんかじゃなくて、うっすら明るい謎の空間が広がっていた。
てゆーか、トラックにひかれたはずなのに全然痛くないんだけど。なんで?
「犬養京さん。あなたはトラックにひかれ死んでしまいました。」
「は?死んだ?」
「はい、死にました」
「じゃああれか?ここは死後の世界とでも言うのか?」
死後の世界にしちゃずいぶんと殺風景な気もするけどな。
「死後の世界というと少し違うかもしれませんね、ここはあなたの今世での行いによって行く場所を決める場所です」
「行く場所を決める所?地獄か天国か決める場所ってのか?」
「おおむね間違ってませんが、少し違います。まず、地獄というのは強制的に送られる場所です。進んで地獄に行きたい人なんていませんからね。」
「まぁそれもそうか、じゃあ天国しか選択肢はないんじゃないのか?」
「そんなこともありませんよ。今世での行いによって場所を決めると言いましたが、それ以外にも一つ場所を決める重要な要素があるのです」
「その要素というのは、今世で生を十分に謳歌できたかどうかということです」
「生を謳歌できたものは天国に、そうでないものは異世界へと行くことができます」
「まぁ謳歌していなくても天国に行くことはできるんですけどね」
「なるほどな、俺は今世を謳歌することはできなかったってことか」
まぁ、仕事なんかは充実してたけどプライベートの方はあんまりだったしな。
「そういうことです。あと若くして死んでしまった人は基本的に異世界に行く権利を得てますよ。」
「ふーん。じゃあ決める前に質問していいか?」
「もちろんです。私にわかる範囲の事なら何でも答えてあげますよ。」
「じゃあ、異世界の言語は俺が理解できるものなのか?」
「異世界の言語は理解できます。これはそういう風になるとしか言いようがないですが」
つまり異世界に行ってもコミュニケーショントラブルで問題が発生することはないわけか。
「それと、どういう風に異世界に行くんだ。また一から人生をやり直すのか、それともこのまま異世界に飛ばされるのか?」
「異世界には二種類の方法で行けます。まずは転生これはあちらの世界でまた一から人生を始める形ですね。もう一つは今の姿のまま異世界に行く転移です。」
また一からやり直すってことは赤ん坊からか、いくら何でもこの年齢からまた幼児になるのは精神的に厳しいものがあるな。
「じゃあ最後に、俺が行く世界はどういう世界なんだ?この世界と似てるのか?それともやっぱり魔物とか魔法とかあるような世界なのか?」
「あなたが行く世界は魔物や魔物がありますよ。基本的にその人の適性に合わせて行ける異世界が決まりますが、意外とどの世界にも魔物や魔法はありますね。」
おぉ、やっぱり魔法とかあるんだな。やっぱ異世界はそう来なくっちゃな。
「じゃあ、俺は異世界に行こうかな」
「分かりました。じゃあ転生と転移どちらの方法で行かれます?」
「転生で頼むよ」
「転生ですねー。了解です。」
「ちなみに転生と転移どっちを頼む方が多いんだ?」
「そうですねー、転移の方がかなり多いと思います。皆さんまた赤ん坊から人生をやりたくないとか、今の自分に対して執着あるとかそういう感じですかね。」
「そうなんだな」
「ちなみに犬養さんはなぜ転生の方をえらんだんですか?」
「色々理由はあるけど一番は向こうの常識をつけたいからかな。やっぱ急に向こうに飛ばされて何もわからないのに姿だけは大人だと色々と怖くないか?」
「なるほど、なるほどなかなか異世界に行くことを冷静に考えているんですね。結構皆さん異世界に行けるってなったらテンション上がってすぐ決めちゃいますよ。」
「まぁ、こういう性格だからな。」
「じゃあ、異世界に行くことを決めた犬養さんに最後に伝えることがあります。」
「なんだ?」
「それはですね、こちらから異世界に行くときにもらえるギフトについてです。」
「おお!ギフトなんてものもあるのか。」
「ありますよー、そしてですねそのギフトというのは色々あるんですけど、その人の能力に合ったものが送られます。詳細は向こうに行ってから分かるので楽しみにしていてくださいね。」
「分かったよ。色々質問答えてくれてありがとな。」
「いえいえ、それが私の仕事ですので。それでは犬養さん、向こうに行っても頑張ってくださいね。」
「おう。」
そういうと目の前が明るい光に包まれ出した。
―――
明かりが消え次に俺の視界に入ってきたのは、木の天井だった。
(どこだここ?)
そこで俺は違和感に気づいた。
(声が出ねえ!)
考えてみれば当たり前か、俺は赤ん坊の姿で転生したんだった。生まれて間もない奴が喋り出したらさすがに気持ち悪いだろう。
(まぁ、何はともあれここから俺の異世界生活が始まるってわけか)
オールテイマーという作品名なのですが予定では主人公がテイマーとして活躍するのは当分先です。




