第3話 何方か! “友人”の定義を教えてくれぇ!!!!!
本日3本目の投稿です
第一話をご覧になってない方は、是非1話をご一読ください
あれからしばらく経ったけど、僕たちの関係は変わっていない。寧ろ心地いい……? そう思う時も増えてきた。
寝る前というのに、スマホがピコンピコンうるさい。
友人とのグループチャットで、凄い量の通知が埋まっている。
“村松”「おおおおおい! 聞こえますかぁぁぁ!」
“鳥羽”「声量がおかしい胡○しのぶやめいwww」
……なんだコレ。身内ネタが酷いな。既読つけたのを軽く後悔しそうだ。
“村松”「天野は明日空いてるな? ショッピングモールいくぞ! ゲーセン行った後にメシ!」
“鳥羽”「天野:いきますねぇ!」
“天野”「なに僕に変なこと言わせてんの……」
“村松”「キタ━(゜∀゜)━!」
“村松”「行くでいいんだよね?」
“天野”「うん、おやすみ。あと通知うるさかった。できれば個人でやってほしい」
“鳥羽”「おかのした」
――地獄みたいなチャット欄をそっ閉じ。まあ、悪い奴らじゃないし、寧ろ下ネタに走らなければ面白い節もある。明日くらいは、真面目に付き合うか。
◇
翌日、人が賑わうモール内でも、足は本屋に直行した。
なんでも鳥羽と村松が気になる漫画があるとかで、まずは本屋に立ち寄ることになった。
「お前、どうせラノベコーナー直行だろ?」
「それ、『思わず表紙買いしちゃった〜』ってくるやつ」
「否定はしないけど、そんな堂々と言われるとなんか癪だな……」
村松と鳥羽は共に漫画コーナーへ。
僕も自然と奥側にあるラノベコーナーへ向かった。
――そこで、思わぬ人物を見つける。
「……白樺さん?」
白樺さんが、棚の前でラノベを手に取って眺めていた。
夏らしい白いワンピースに黒のキャップという、おしゃれさんな白樺さんに惚れ惚れする。
いや、それよりも――まさか、こんなところで会うとは。
「あっ、天野くん!」
白樺さんは僕に気づくと、ぱっと顔を輝かせた。
驚いた後にすぐ笑顔になるの、ほんと強い
「ねえねえ、このラブコメ、つむのおすすめ!」
そう言って、表紙を見せてくる。
どうやら最新刊が出たばかりの作品らしい。カク○ム発ね。それは応援したくなる。
「へぇ……どんな話?」
「すれ違いばっかりで、最後までじれったいの。でも、最後はちゃんと甘々!」
目を輝かせながら説明する白樺さんに、少し苦笑いが漏れる。
……あまりにも楽しそうで、こっちが照れる。
「因みにだけど、僕、悲恋は受け付けない主義なんだけど」
「あ、それなら大丈夫! 最後はちゃんとハッピーエンドだから!」
胸を張って断言するその姿が、どこか可愛くて。
……ふいに、自分の顔が熱くなるのを感じた。
「そう……じゃあ、今度読んでみるよ」
頷くと、白樺さんは嬉しそうに微笑んだ。
その時、不意に背後から声が聞こえる。村松と鳥羽が近づいている。
そういえば、白樺さんのこの趣味、バレたくないんだったな。
一応、控えめな声で話しかける。
「白樺さん、同級生来てるから……無難なコーナー行ったら?」
「え? 誰?」
「僕の友達。もう来てるから……」
僕がそう告げると、白樺さんは「あっ」と小さく声を漏らし、慌ててラノベを棚に戻した。
「そ、そっか……ありがと。じゃあ、雑誌コーナー行こうかな~」
そう言ってそそくさと離れていく白樺さん。もうちょっと一緒にいたかったな〜。あー可愛かった。
「天野、誰かと話してた?」
「うん、知り合い。もう話終わったし、レジ行こ?」
「相変わらずラブコメなんだな」
「まあね」
◇
本屋を出た僕たちは、モールの五階にあるゲーセンへ移動した。 定番ルート。今日も、特に何かを狙っているわけじゃない。
「おい晴、今日はメダルゲームだ。決定な!」
「こないだ速攻で破産したのに、またやんの?」
「今日はイケる気がする!」
村松が勢いよくメダル貸出機に千円札を突っ込み、手渡しで僕と鳥羽にもメダルを分けてくる。
「よっし! 競馬のやつ行こうぜ!」
「馬は当たらないって!」
高校生の会話とは到底思えないな。
丁度競馬の台が空いていたので、3人並んで座った。
「なあ、3番の馬の倍率高いぞ! 109倍!」
「まじ!? 全ブッパする!」
「来たら熱いやつだね」
そんなこんなでロマンを求めて、村松は3番(109倍)に全てかけた。僕と鳥羽はいろんな馬にかけてみた。
レースが始まると、僕たちは手元のメダルそっちのけで画面に釘付けになった。
「うおおお、3番、出遅れてる!」
「最初から終わってて草」
「いや、ここから! ここからだから!」
「いや、ずっと最下位だけど……」
「おおおい! 頑張れよ! お前に全財産掛けてんだ! 最下位とか馬刺しにしてしょうが醤油で頂くぞ!?」
そして、1番がゴール。
実況が流れる中、3番は見事に最下位のままレースが終了。それでも村松は前のめりで、頭を抱えた。
「くっそー……お前らはちゃっかり稼いでるし……分けてくれるか?」
「わかったわかった」
「あと声は抑えてほしいな。同じグループだと思うと、恥ずかしいから」
「お、おう……ごめんな天野」
僕たちは席を立ち、今度は別のメダル台へ移動しようとした。
「じゃあ、次はあっちのスロット系行くか?」
「いや、あれは吸い込まれる未来しか見えない」
「おいおい、メダルゲームはロマンだろ」
そんな他愛もない会話をしながら歩いていると―― ふと、僕の視界に見覚えのある後ろ姿が映った。
白いワンピースに黒のキャップ。 さっき本屋で会ったばかりの、白樺さん。
しかも、彼女は―― 小さな手で、真剣そのものの顔つきでメダルを一枚ずつ投入していた。
(え、白樺さん……?)
思わず立ち止まる僕に、鳥羽が首を傾げる。
「どうした、天野?」
「あ、いや……」
視線を外そうとした、その瞬間。
「……えっ、天野くん」
白樺さんが、こちらに気づいた。目が合うと、いつもの笑顔で手を振ってくれて、鳥羽と村松に気づくと一瞬バツが悪そうに顔を顰めた。
――人見知りだったっけ?
「お、白樺さんじゃん」
鳥羽が僕の視線を追って白樺さんを見つけ、気軽に声をかける。 村松も続いて、「珍しいな、こんなとこで」と言いながら白樺さんに会釈した。
「う、うん。ちょっと暇だったから……」
白樺さんは帽子のつばを指でつまみ、視線を泳がせる。どこか落ち着かない様子で。
こいつらが怖いのかな?――笑顔で接さないと。
「そうだ、天野くん」
白樺さんは、僕のほうに身体を向け、少しだけ口を尖らせるような表情で言った。
「あのさ、一緒に回らない?」
唐突な誘いに、僕は一瞬言葉を失う。
けど、すぐに村松と鳥羽の視線を感じて、口を開いた。
「あー、今日は、友達と遊ぶ約束だったから。また今度ね」
白樺さんの顔が、ほんの少し曇る。 目に見えて落ち込む、ってほどじゃない。
でも、わかる。あれは――「むぅ……」って、口に出さずとも言ってる顔。え? 嫉妬なら可愛いし嬉しい。
「そっか……うん、また今度」
白樺さんはそう言って、メダルを手のひらで弄びながら視線を逸らした。
「じゃ、じゃあね」
手を軽く振って、白樺さんは別の台へ歩いていく。
その後ろ姿を見送っていると、すぐ隣で鳥羽が、ひそひそ声で言った。
「なあ、村松。今の見たか?」
「見た見た。あれで、付き合ってないとか、信じられないよな」
二人は僕の顔をちらちら見ながら、にやにやしている。
「うん、あれは……彼氏を独占したい、嫉妬する彼女だな」
「いや、だから付き合ってないって」
「はいはい、言い訳乙。お前もお誘いに乗ればよかったのになぁ」
僕の否定なんて聞く耳持たず、二人は勝手に盛り上がっている。
(……白樺さん、やっぱ嫉妬してたのかな)
そんなことを考えてしまう自分が、ちょっと恥ずかしかった。
評価、ブックマークいただきました! ありがとうございます。
いやぁ〜こんな早く評価が付きますとは……これからも、白樺さんと天野くんのイチャラブ書いていきますので、宜しくお願いします(*´ω`*)