「」
どこで間違えたんだろう。そんな言葉が浮かんだ。
「大丈夫か?」その言葉にハッとした。
「ん?」「いや、大丈夫か?って」
そんな神妙な表情をしていただろうか、僕は。
「本当に、何かあったのか?」
少しばかり時を止めて、僕は口を開いた。だが本心は話さずに。
僕とこいつのルーツは似ている。なにかと共通点がある。だからお互いに相手のことを心配するんだろう。
特にこいつは自分のことをなかなか打ち明けようとしないが、時たま僕と同じような経験談をしてくることがある。そこでまた共感しあうこともある。
僕はこう言いたくなった。「なにかあるのは僕だけじゃないだろ。おまえにもなにかあるはずだ。」と。
だが、無理に聞こうとは思わない。誰にだって話したくないことの一つや二つあるだろうから。
カラになったジョッキの氷がカランと音を立てる。もう少しだけこの空気に浸っていたかった。