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「お前さ、歳いくつになるんだよ」
「え、じゅ、十五……だけど」
「だろ。俺とあいつよか二つも年上なわけだろ。子供じゃあるまいし、いつまであんな奴にやられてぐすぐすべそかいてんなよ。やられたらやり返せ。あんな奴ら追っ払ってやったらいいんだ」
「ご、ごめんなさい」
蛍火は首を縮めている。
これ以上言うと余計に委縮すると思い、天凪は「ほら。もうあいつ行ったから、俺らも行こうぜ」と促した。
入塾の時期が同じだったせいか、幼い頃から何となく傍にいるが、蛍火はいつもこうだった。
いつも自信なさげにおどおどとしていて、自分よりうんと年下の者にからかわれたり、ちょっとつつかれただけで涙を浮かべて俯いてしまう。
情けないというか頼りないことこの上ないが、同時にちょっと妙なくらい気になることも確かだった。
「あ、あのね、天凪君」
「何だよ」
「さっき授業でね、お星様のことを習ったの」
天凪の浅葱色の直垂の袖を掴み、熱心に訴えかける。こんなに一生懸命な蛍火は久しぶりだった。
「それでね、師範が、星祭りの夜に流れ星がいっぱい見られるんだって」
「おお。すごいじゃん!」
天凪はぱっと顔を明るくさせた。
「俺見たことないよ、流れ星。だってあの夜空に光ってるやつが流れるんだろ?!すっげー、見てみた
い」
「あのねあのね、流れ星を見てね、誰かと一緒にお願い事をしたら、」
と言いかけた蛍火の言葉が聞こえていなかったのか、天凪は、
「じゃあ一緒に見に行こうぜ、流れ星!星祭り、蛍火も出てこられるんだろ」
蛍火は頬をぽっと薄紅に染めていたかと思うと、はにかんだ表情で頷いた。
「……うん!」
「楽しみだなあ」
天凪は晴天の空を見上げる。
瑞々しく蒼い空は硝子を嵌めこんだよう、薄く刷毛で描いたような雲がたなびいている。