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帚木はにこにこと、
「昨日の夜、穀物蔵からサツマイモがごっそりなくなったのよ」
ぎくりと天凪の背筋が強張った。
リスのように頬張った食べ物をもぐもぐと咀嚼していた動きが止まる。
「お芋さんたちはどこにいっちゃったのかしら。もしかして、あなたのお腹の中じゃないかしら」
「ばっ馬鹿言うなよ。おおお俺がそそそそそんなこと、すっすっするわけ」
「天凪兄ちゃん、昨日ふかし芋食べ過ぎてお腹壊してたよ。僕見たんだ。兄ちゃんのお尻から黄色のうんちが」
「あーあーあー!!!聞こえない聞こえない何にも聞こえない!」
「つーか、食事中だぞ」
風牙がぼそりと呟く。
天凪は調子っぱずれの「何も聞こえないの歌」を歌い始め、少年は「僕もお芋欲しかったのに、分けてくれなかったよ」と帚木に告げ口した。
帚木は「そう。良く分かったわ」と少年の頭を優しく撫でると、
「勝手に食べ物を盗む悪い子には、罰を与えます。青塾に行く前に、園中の廊下という廊下を拭いて心を清めなさい。いいわね?」
「げえーっ。マジかよー」
マジです、と帚木は乙女のように可憐な顔で宣言した。
とっさに助けを求めた天凪の視線を、風牙はたやすくかいくぐり、
「本当に馬鹿だな。口止め料くらい払っとけよ」
食膳を片づけてさっさと立ち上がる。
「待てよ風牙。手伝って、」
「何で俺が?馬鹿らしい。馬鹿も休み休み言えよ、馬鹿天凪」
「馬鹿馬鹿言うな!この薄情者ーーー!!」
今日も今日とて、安寿園にはお馴染みの、天凪の絶叫が響き渡るのだった。