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食堂では、中年の女性三、四人が食事の配膳を整えて彼らを待っていた。
「おはよう、マザー」
口ぐちに彼らは挨拶をし、年齢順に決められた所定の席につく。
マザーと呼ばれた女性の名は帚木、齢は四十代半ばほどだろうか、ふくふくとした豊満な体形とゆったりとした物柔らかな雰囲気、笑うと口元にさざ波のように寄る皺が、彼女の人柄の好さを伝えていた。
全員が揃ったところで、上座の帚木が口を開いた。
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます」
声を揃えて一斉に全員が唱和する。
「いいお天気ですね。今日は白露と言って、秋の深まりを天照神様がお教えくださる日です。どうか皆さんも大地の実りに感謝し、天照神様の恵みに喜びながら、今日という一日を素晴らしいものにしてください」
帚木の話の最中、何気なく人と自分の膳をすり替える天凪の手際は見事なものである。
皆が敬虔に目を伏せ、頭を垂れている隙をついて、横の風牙の小皿から卵焼きを一つ拝借するのも忘れない。
「それでは、ご一緒に。いただきます」
「いただきまーす」
フライング気味に叫んだ天凪は、両手を合わせるなり凄まじい勢いで朝食を頬張り始めた。
その鮮やかな箸捌きたるや、周りの大人たちも呆れるやら感心するやら複雑な気分になるほどである。