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覚醒は、龍より早くやってくる。
意識が表層へ浮かび上がるその前に手足が動き、心臓がいきいきと力強く脈動するのを感じる。
寝床から文字通り飛び起きると、天凪は腹いっぱいに空気を吸い込み、
「おっはよう!!!!」
と、迷惑極まりない大声を上げた。
大広間に雑魚寝していた年頃さまざまな少年たちは、眠そうにうなり声をあげて身じろぎしたり、抗議の声を上げて寝返りを打ったり、布団にくるまって耳を塞いだりしている。
好意的でない反応にもめげず、天凪は快活な笑顔で地響きがしそうな声を出す。
「みんな起きろーっ!メシ!朝飯の時間だぞ!」
各々の布団を一つずつ回ってひっぺがして叩き起こし、寝ぼけ眼をこすっている者を急き立てて廊下に押し出し、自分も一緒に汲んでおいた井戸の水で顔を洗う。
「うるせー。うぜー」
と、鬱陶しそうに不平を述べたのは、風牙という同い年の少年だった。
「しょうがねえじゃん。全員揃わないとメシ食えねえんだもん」
けろっとした様子で天凪は言い返し、既にくうくう鳴っているお腹を押さえつつ食堂へと走り出す。
もちろん、一番乗りで大盛りの器にありつくためである。
食膳に並んだ一見平等な配分の器から、一瞬で最も多く盛られた料理を見極める技は、天凪が十三年間で磨きに磨いた才能の一つであった。
「起こすのはいいけどさ、せめてそのテンションどうにかなんねえの?朝から無駄に疲れるんですけど」
ぴょんぴょんと毛の跳ね散らかった頭をかきながら、風牙がかったるそうな顔つきで言う。
他の者も同感らしく、天凪よりも年かさの少年など、目の下にくっきりと青黒い隈が浮かんでいる。
「ごめんごめん。明日からは、もちっと手加減するからさ」
と言って、ばしんと背中を叩かれ、風牙は思わず息を詰まらせる。
――この、馬鹿力め。
内心で罵るが、男の沽券に関わることなので骨まで響いた衝撃はおくびにも出さない。