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寄稿作品  作者: 采火
個人企画
14/21

【#Bパーツ選手権】恋の延長戦

エコー様主催「#Bパーツ選手権」参加作品

 コートのポケットに手をつっこんで、電話に出る。

 さっきちらりと見えた相手の名前は。

「もしもし。ま、松井さんっ?」

『こんばんわ。どう? あがれた感じ?』

「今、上がったところです!」

 待ち合わせをしていたはずの松井さんから、直接電話がかかってきちゃった……! 先週の土曜はドタキャンしちゃったから、彼も心配になったのかも。

『それなら良かった。ゆっくりおいで』

「はい特急で行きます!」

 電話の向こうで笑う気配がした。

 通話が切れると、私はダッシュで駅へと駆け込む。二つ目の駅で降車すると、改札に松井さんがいた。

「あれ!? 現地集合だったはずじゃ」

「現地だと僕のほうが遅れそうだったからね。時間的に駅のほうが会いやすいかもって思って」

 あはは、と笑う松井さん。

 そういうことならいいや、と私も笑う。

 松井さんはうちの会社の元営業。今はその手腕を見込まれて親会社に引き抜かれた超エリートだ。

 すごくスマートで、頼りになる人。松井さんと今でも交流がある人は何人かいるけど、今シーズンは私が一番会っているかもしれない。

 だって。

「今日の試合は中日と広島ですよね」

「安牌っちゃぁ安牌だけど、一進一退だからなぁ。気持ちのいい試合になるといいね」

 私たちは中日ファンという絆で結ばれているから……!

 やっぱりホームグラウンドでの試合は熱い。小さな頃は女子野球に参加していた私にとって、野球観戦は一つの楽しみ。それがこの松井さんと意気投合し、今でも交流のある理由だ!

 うっきうきでドームに向かい、私たちは観客席へと向かう。ざわつくこの活気が心地良い。

 試合が始まれば、私は夢中でチームを応援する。休みだったらユニフォームとか応援グッズとかフル装備だったけど、仕事帰りだから無念!

 最初のころは恥ずかしくて松井さんの前じゃ応援もかできなかったけど、今じゃ全力全声で叫びまくりだ!

「打てー! 打てー! うっ、げほ、こほっ」

「あー、もう、叫びすぎるから。はい、お茶飲んで」

 仕方ないなぁと松井さんが私にペットボトルを渡してくれる。面目ない……と思いつつ、お茶を飲んだらまた応援!

 そんなんだから、気づかない。

 松井さんの視線がグラウンドじゃなくて、私に向いていることに。

 知らないうちに恋の試合が始まっていたなんて、私が気づくのはもっとずっと先。


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