93.黒の獣、からの…黒レオタ女軍団?(5F)
一万字越えたので、泣く泣く分割します…今回でダンジョン終わりませんでした(反省)
巨大雷獣をアルテミシアの重力空間で葬った…
その跡に現れたのは、同じく巨大な虚獣だった…。
「何…? 身体が…重い…?」
“虚”の属性は、言わば消失の力。
直接的に活力を奪われたようになるのだ
「離れて!# 多分…ある程度の距離に近づいたら、一気に持っていかれるわ#」
その言葉に、進もうとしていた二人が動きを止めた。
アルテミシアの警告に従って、虚獣から離れた。
しかし…距離をあけても、徐々に体力が持っていかれる感じが抜けない…
虚獣は、まだ目覚めの浅いような…半分眠っているような様子だ。
近づいて来るどころか、能動的な動きを取る事もなく、まるで寝ぼけているかのような緩慢な動きを、その場で繰り返すだけだ…
この“虚獣”は、いるだけで周囲の活力を吸い取っていく…そういう強敵らしい。
<<虚無抵抗>> レジストヴォイド
アルテミシアが魔法の防備をかける…
それで奪われる体力が少なくなった実感はある…
だけどやっぱり…僅かずつでもに身体から力が抜けるのは避けられない…
「やっぱり…私程度の防御術じゃあ、防ぎきれないわね…♭
セレナ! 対虚防御、お願い!#」
「えっ!? ええ~~っ!
えと、その…やった事なくて…
そ、そもそも…虚って、何なんですか~… あわわゎゎゎ…」
とセレナが言うのも仕方ない。
虚にあたる現象を見るのは初めてだろう…
自然現象では説明しにくいし、
「眼の前のやつ見て# あれから守る方法を何とかするの!#
…って、まずは…お・ち・つ・い・て#」
大慌てして「どうしよう、どうしよう」とその場で右往左往している不穏娘を、まずは落ち着かせれるのが先決…。
「何とか頑張るの!# 雷の逆みたいな物だから!
対雷防御ができるんだったら、原理は一緒よ!」
「げんりは…いっしょ…? あわわゎ…」
そんな事を言ってる間にも、虚獣の活力吸収は止まらない…
「…それまで、私でも…何とかできるかしら…?♭ 少しでも…」
<<稲妻鞭>> ライトニング・ウィップ
アルテミシアは電光の鞭を振るって虚獣を牽制する…
けれど…実際に鞭で打っても、その巨大な虚の塊には、大した打撃にはならない。
雷光を打ちつけている間、吸収の威力は弱くはなる。
だけれど、力を相殺されるうちに、電光の鞭は細くなり、やがて切れてしまう…。
また鞭の雷光を伸ばし、別の鞭を発生させ、アルテミシアはその牽制を繰り返す。
現状では、遠距離から攻めるしかない。
近距離に寄るのは危険だ。
もっと大幅に体力を吸われる。
イヴはその剣に、先の戦いで蓄えた電光を溜めている。
だけど近寄る事もできず、両手で剣を構えて、向かい合っているだけだ…
剣に纏わっている雷撃が、糸を引っ張られるように…、少しずつだけど、稲妻が黒い影の獣に吸われているのが目に映る…
花びら鎧の属性防御があるフローレンはまだしも、ほぼアクセサリでしか属性軽減できないイヴは、かなり息が上がってきている。
治癒魔法を受けたとは言え、先程の雷獣からのダメージもあり、そこに僅かずつだが体力を消失し、それが累積している感じだ。
フローレンは何も行えない…
雷で斬る技はあるけれど、近寄れなければ意味はない…
すぐ後ろにいるセレナにすべて掛かっている…そういう状況なのだ…。
「セレナ… あなた計算は得意なのに…! 防御もあの調子でがんばってよ!」
フローレンにしてみれば、戦闘よりはるかに苦手な「計算」を難なくこなすセレナは、頼りになる子なのだ。
なので、セレナの事を、やればできる子だと思っている。
計算だけじゃあなく、ここまでの魔法は攻撃も防御も治癒も、すべて卓越しているのを見ている。
「計算…あ! そうですよ! それです!
計算って考えれば、簡単な事かも…!」
そのフローレンの言葉に、セレナが何かを思いついた。
その矢先…
セレナの手から電光の欠片のような青白い光が走り、
瞬く間に四人の身体を円状に包みこんだ。
「あ、できました!」
対虚防御が完成していた。
四人の身体から、力が抜けていく感覚がなくなった。
電光色の防御膜は、虚無の獣の活力吸収を完全に防ぎきっている。
攻略とはまず、相手の攻撃を受けきる、躱しきる、耐えきる算段を着けることだ。
完全に防げないなら、わりと賭けに出る必要も出てくるけれど、守りに気を使わなくて良くなれば、苛烈な攻撃を仕掛ける事ができる。
「じゃあ反撃開始、かしら?」
アルテミシアがゆっくりと、次の魔法を完成させる…。
「展開♪」
<<稲妻網状陣>> ライトニング・ウェブ
稲妻の鞭が伸び、集結し、網状に展開される。
「捕縛♪」
巨大な虚獣に、青白く光り弾ける雷の網がかかった。
「えーーーい!!」
セレナのくっつけた両手の平から、まばゆい光線が迸る
光線は巨大な影の獣を貫き、その背から抜けている。
わりとえげつない威力だ。
光の“気”の技もまた、虚の対抗的な属性であるのだ。
虚獣が、苦しそうな吠え声を上げた。
怯んだところに、前衛の二人が駆け寄った。
虚獣が、雷の網を破って振り上げた爪を振り下ろす。
だけどその鋭そうな爪も、かなり離れた高さで、青白く輝く障壁に弾かれた。
フローレンもイヴも、躱すまでもない。
逆に虚獣のほうが、羹に触れたように驚いて手を引いている。
《雷斬・菖蒲八橋》 ブルーアイリス・ライトニング
花園の剣に咲いた青く輝く菖蒲の幻花が、鋭い稲妻が昏色の獣を裂いた。その黒い巨体に、鮮やかな青い稲妻が駆ける…!
虚獣が、大きく怯んだ。
「今よ!」
そこにイヴが、雷を蓄えた、黒曇色の剣を大振りに構えた。
《霹靂之剣・轟雷一閃》
そして一気に距離を詰める。遠距離から放つのではなく、その雷剣で直接叩き斬る!
その輝く青白の雷剣が、切れ残った雷の網をも吸収しながら振り下ろされた。
落雷のような雷剣。
昏色の巨獣が、雷色の一閃に、縦真っ二つに切り裂かれた。
先程自らが放った雷によって、虚獣はその活動を停止した…。
青白の雷光と、濃紫の暗黒…
反する属性の力が相反消滅してゆく…
残った黒の虚獣の身体も、砕けるように粉になり空中に蒸発していった…
イヴの剣も黒雲が晴れ、元の爽やかな青空が戻ってきたようだ…。
ゆっくり見る機会もなかったけれど…
おそらく唯一品の伝説級武器であろう…
そのあまりに美しい青空を映したような金属の剣身は、強烈にフローレンの印象に残る…。
広い部屋のあちこちから、色様々な光がいくつも立ち上ってくる…
それが部屋のはるか上方で弾けて、光の花のように広がる。
「何…この光は…?」
「き、きれいです~…」
「ダンジョンクリアの祝福、ってところかしら♪」
「そうね。…まあまだ、お宝を頂きに行かなきゃだけどね!」
そして、どこからともなく流れてきた、細やかなピンクの光の流れが、四人の身体を優しく包み込む…生命の光、である。
ここまでに四人が受けたダメージは、この光に包まれるだけで、すべて癒やされていった。
やがて、光の祝福が終わった。
「これで…戦闘は終わり…? ちょっと、呆気ないかも…」
「いいえ…虚獣は強敵、のはず…だったんだけど…♪」
あの虚ろの獣にとっては、相手が悪かった…としか言いようがない。
ここまで天の術や雷の技に長けたメンバーが揃っていると、手早く片付くものだ。
要は、相性の問題である。
「やっぱり、セレナの対虚防御が決め手だったわよね♪」
あれが決まった時点で、勝負は決まったようなものだ。
「フローレンさんが計算、って言ってくれたからですよ!
あれで、ぴんっ!てきたんです…」
セレナが言うには…
彼女が炎と氷の防御を張る時、何らかの温度の計算みたいな事をするらしい…
アルテミシアが言っていた「雷防御と原理は同じ」というのを思い出し、
雷と虚も同じような考えで、正と負の計算をすればいい…
…という考えに至ったらしい。
「えっと…わたしの頭では、よくわかんないんだけど…」
「それは私も…術の概念が違うから、何とも言えないけど…
まあ、うまく行ったなら結果おーらい、よね♪」
イヴの剣術も、セレナの防御術も、他の一流冒険者にも引けを取らない、優れたものだった。
「二人共、冒険者になったら? また一緒にどう?」
「そうよね♪ 素質充分よ♪ 歓迎するわよ♪」
まあ、褒め称えはするけれど、半ば冗談だ。
この二人には、冒険者をする以上に、それぞれの今の立場があるはずだ。
「それは…
機会があれば、ぜひお願い、と思うけれど…
それより、貴女たちって…いつもこんなぎりぎりの戦いしてるの…?」
「そうねえ…古代ダンジョンはいつもこんな感じ?♪」
「こういう冒険は久しぶりだけどね」
最近は、守る戦いが多くて、そちらのほうで苦戦している
「でもまあ…今日のは、ギリギリって感じ、じゃあないわね」
「そうね♪ まだいくらか余裕あったわよ♪」
え、どこに? という感じにイヴもセレナも驚いている…
「人間、追い込まれると、意外な力が出るものよ」
「そのギリギリまで待ってた、って感じかしらね♪」
「最悪、雷獣のところで一旦引く事もできたんだけどね」
「そう♪ あそこで、対雷防御が完成してから再戦する手もあったのよ♪」
「え…そうなの…」
「うん、古代ダンジョンのボスって、割と逃げて再戦とかできるのよね」
「二回逃げて、作戦変えて勝った事もあったかな♪」
それに、攻略をあきらめて撤退したこともある。
「いざという時のポーションもあるしね」
フローレンはどこからか、ピンク色の薬らしい液体の入った
指ほどの大きさの、ガラスのようなビンに入った液薬のようだ。
本当に、どこから出したのか、謎ではある…。
フローレンは、どこにも小物入れらしいものを着けていないので…
ふくよかで丸っこい胸の間に挟んでいたのか…
花びら鎧の蔓草状のどこかに挟んでいたのか…
それとも、その腰当ての内側に、引っ掛ける場所があるのか…?
それとも…まさか、その…穿いてるかどうか怪しい、さらにその中…?
…まあ、これは永遠の謎、オトメのヒミツなので、詮索してはいけないのだ。
「イヴの体力がもうちょっと厳しくなっていたら、このポーションを使用するつもりだったけど…必要なかったわね」
そのフローレンの言葉に、イヴもセレナも驚いていた…
イヴにしてみれば、けっこうぎりぎりな思いだったのだ…
フローレンにしてみれば、もう一段耐えられる、という読みだった訳だ…。
「それに、私はまだ奥の手があるからね♪」
アルテミシアも余裕たっぷりに言い放つ。
「奥の手…ああ、あれ、ね。」
「「あれ…?」」
「ええ。胸がおおきくなるやつ」
「そうね♪ 六割増しくらいになるかしら♪」
「「???」」
「あれ使ったら、あの獣くらい、瞬殺だったんじゃない?」
「あ~でも…月がでてないと、そこまででもないかも…♪
あと、すっごく疲れるから…本当に奥の手、って感じ♪」
イヴとセレナは顔を見合わせている。
まあわからないのもムリはない。
花月兵団でも、アルテミシアのその秘密を知るのは冒険者組メンバー数人だけだ。
「ま、勝てたんだから結果的におっけ!」
「ええ♪ 先へ進みましょ♪」
部屋の北側へ進むと…
円形の模様の床が、浮き上がるようにせり上がってきた。
その石柱が少しずつ段差違いに伸びて、反時計回りの螺旋階段ができあがった。
「最上階がトレジャールーム、ってことね♪」
「さあ、お宝を受け取りに行きましょう」
階段を上ってきた第五階層は…
古代の夜の町中のような場所だった。
もちろん幻術空間の中にいるのだけど…
その正面にあるのが、大きな建物…そう、ちょうどこのダンジョンの入口で見たような…硝子張りの五階層の建物だ…。
ここが屋内であり、五階建てダンジョンの最上階である事は紛れもないのだが…
イヴもセレナも慣れてしまってか、もう驚かなくはなっている…
その建物の入口の前に、女の衛兵が二人、立っていた。
二人とも黒一色の切れ込みのきついレオタードだけを着ていて、黒い覆面で目より下を覆って隠している。
ぴっちり身体に密着した黒いレオタードの、膨らんだ胸の大きさからも、股間部の鋭い食込みからも、露出した肩の丸みからも、女性であることは紛れもない。
黒覆面の上には女性特有の瞳が見えるし、二人共長い髪を後ろに流したり頭上で括ったりして、いかにも年頃の女の子らしい。
彼女たちはその手に長い筒状の武器を携帯している。
下の階層でなぜか小鬼が持っていたような、鋼の弾丸を打ち出す古代武器だろう。
本来は彼女たちのような古代の兵士が持つべき武器だ。
「あ、大丈夫よ。ただの衛兵だし、戦いにはならないから」
警戒したイヴをフローレンが手で制した。
ここがもし、ラスボスを倒した後のトレジャールームでなければ、戦いを警戒しなければならないところだ。
過去に挑んだダンジョンでは、実際にこの姿の女戦闘軍団とは戦ったこともある。
女衛兵たちは少し横に移動して、扉への道を開けた。
上げた手を曲げ、敬礼のポーズをとっている。年頃の乙女の感じだけれど、眼つきは鋭く、姿勢も良く動きにも無駄がない…よく訓練された兵士という感じがする。
…古代にはこういう若い女兵士も多くいたのであろうか。
硝子のような透明の扉は、自動的に左右に開いた。
最上層と思われるここ五階層は、高級な作りの落ち着いた感じの空間が広がっていた。
このダンジョンの、一階層の構造に似ている…
この入口ホールの空間内にも、外の女衛兵と同じ、切れ込み激しい黒レオタードに、黒覆面姿の女兵士が十人近く立っていた。
真正面に、受付…らしいカウンターがあり、中には同じく黒覆面姿の女兵士の姿があった。彼女だけは大きな古代武器を持っている感じはない。
後ろに流したエレガントなウェーブの髪が大人っぽい印象で、この受付の女性だけは他の女兵士たちより少し年齢が上な印象だ。
彼女たちの隊長、なのかもしれない。
四人が近づくと、受付のその女兵士は恭しく礼をし、何か挨拶のような言葉を発した。
話しかけられたところで、言葉は通じない…けれど、客として遇されている雰囲気は、兵士にしては柔らかいその物腰からしっかり伝わってくるから不思議なものだ。
一応、四人の頭の中に、説明がイメージとなって“聞こえて”くる…
それは…
『ここにいる女兵士たちに戦闘行動を行おうとすると、警告が流れる。
それを無視して戦ったり、一方的に危害を加える行動を取れば、ダンジョン外に強制転移させられ、お宝が無効になってしまう…それも全員が、だ…』
要するに、彼女たちは兵士の姿をしているけれど、ただの接待者である。
受付の女子は、傍らの女兵士を一人呼び、その子に何か指示をした。
やはり言葉はわからないけれど、案内を指示した、というのは身振りだけでわかる…
受付女兵士は、背を向けた四人に向かって、また恭しく礼をしていた。
案内役の女兵士は、肩から掛けたその古代武器を持つのと逆の手で敬礼をした後、先の通路を示した。そして先導するように歩き出す。
黒レオタード姿で前も後ろも食込み激しく、丸出しのお尻を揺らしながら歩く…兵士らしくない色っぽい衣装の女兵士の、その後ろをついていく…
通路は一本道で、両側にはいくつも扉が並んでいる。部屋が幾つもある、という事だ。
案内役の女兵士は、その扉の一つの前で立ち止まり、その扉を手で示した後、敬礼姿勢をとったまま動かなくなった。
フローレンは「ありがとう」と女兵士に声をかけ、その扉を開く。
「トレジャールームね」
部屋の中は、高級居室のような空間だった。
高級絨毯のような床に、格調高いテーブルに椅子、壁際には自然風景の絵画が飾られ、陶磁器の壺や銅像が置かれている。
部屋の端の目立つ位置に、下の階で見たような大きな画面が置いてある。
財宝らしいものは何もない…
「え…? これが…宝の、部屋?」
「な、なんだか…旅館のお部屋のように見えるんですけど…?」
イヴとセレナが驚くのもムリはない。
どう見ても、旅館の作りだった。
戸の開いたあちらの部屋には、二つ並んだベッドが置かれている…
「あ、うん、まあ…ゆっくりしていっていい、って事じゃない?」
「まあこれもご褒美のひとつ、みたいなもの…だと思うわ♪」
こういうダンジョンを何度も踏破しているアルテミシアは慣れた感じで、自分の家に帰ってきたみたいに、ゆったりとくつろいでいる感じだ。
部屋の端に置かれた小さな四角い箱の戸を開けると、中からオレンジ色の液体の入った柔らかいビンのようなものを取り出し、蓋を開けて飲み始めた。
その小さな箱の中は、よ~く冷えている。
箱が冷気を保つ作りになっているらしく、アルテミシアは古代ダンジョンで見かけたこれを参考に、フルマーシュの店やラクロア大樹に、食材冷蔵保存用の箱を作ったのだ。
アルテミシアが満足気に飲んでいるのは、蜜柑を絞ったジュースのようだ。
「あ、わたしも一本もらおうかな…あなたたちも、どう?」
フローレンが選んだのは、ちょっと黒い色をした、古代の飲み物だ。
口の中で泡がぴりぴり弾ける、爽快感のある甘い飲み物…でも果実のジュースではないらしい。
花妖精のフローレンは、味でどの植物なのか、わかったりする…
以前に飲んだことのある、熱帯で採れる木の実の絞り汁に近い感じがする…もっとも、あれは果汁というより、気付け薬のようなものだったけれど…。
「じゃあ…同じのを頂こうかしら…」
イヴもちょっと喉が乾いている…激しい運動をした後の水分補給は大切だ。
「「乾杯!」」っと、フローレンに倣って、イヴも飲んでみる…のだけど…。
初めて飲む弾ける飲料に、思い切って、ぐっ!といっぱい飲んだところ…
「あー…これ、一気に飲んじゃダメ…って! あー…遅かった…」
一気に沢山飲んでしまって、ちょっと吹き出す感じになった…
「古代の飲料…なかなか手ごわいわね…」
イヴは初めて飲む弾ける飲料にも、何事も経験、と勇んで挑んでいる…。
「甘~い…! 古代の飲み物って、甘くて美味しいんですね~!」
セレナは大喜びだ。こういうところは、見かけ通りちょっと子供っぽい…。
「でしょ♪ ここからは持ち出せないから、いっぱい飲んでいきましょ♪」
スィーツ好きなアルテミシアは、既に二本目を開けている。
さっきとは色が違う、今度は薄黄色の果実ジュースだ。…林檎らしい。
そんな感じで、旅館のようなこの空間で、ちょっと一息…
ちょうど4人分のソファがあって、座ってくつろげる…
ちなみに、このトレジャールームのルールは…
寝泊まりするための個室が人数分あり、一泊のみ可能である。
時間になると食事が給仕されてくるサービスもある。
ちなみに…このメンバーは全員女性なので関係ないけれど…
ホールにいた女兵士のうち一人を選んで、部屋に「お持ち帰り」が可能…彼女たちは全員訓練された女兵士であり、戦闘のみならず男性に対応する訓練も受けている…との事。
「あ、みてくださ~い! こっち、おふろもありますよ~!」
セレナは、子供みたいに居室内を探索して、
奥の部屋で浴室を見つけて嬉しそうだ。
「セレナ! そこまで時間ないわよ! みんな村で待ってるんだから!」
姉に叱られ、セレナは「そ、そうでした…」と…ちょっと残念そうだった。
「そうね、みんな心配してるかもだし…」
「そろそろお宝受け取っちゃおうか♪」
とアルテミシアは三本目の蓋を開けながら、部屋の反対の端に立てかけてある大きな画面に歩み寄った。
そこに三人が集まってくる…。
ダンジョン、次回こそ終了…さすがに…
トレジャールームで遊びすぎました…はい。




