89.雲海の神殿(3F)
諸事情により、一週間ほど小休止しておりました(しかも、また中途半端なところで…)
日々ご閲覧下さっている方々には、申し訳ございませんでした(いらっしゃれば、ですが…)
この先、毎日更新とはいきませんが、なるべく書いていけるようにしたいものです。
急いでUPしてた87~88話、再編集してます。
88話のほうは最後の方に多少加筆あり…古代武器?(あまり重要ではない)とか迷彩レオタ女兵士(数行だけ)の話…重要度は低いです…
村を襲った小鬼を全滅させたフローレンたち四人は、
上の階層へと続く、樫の木の螺旋階段に向かって歩いていた。
「ところで…さっきのあの武器って…」
イヴが隣を歩くフローレンに質問する。
あの高火力な古代武器にかなり関心を持っているようだ。
「あの筒状の射撃武器のこと?」
「ええ。古代のダンジョンって…あんな武器が頻繁に出てくるの?」
「どうかな…? わたしは一回しか遭った事ないけど…
戦ったのはあれを持った人間の兵士だったけど、実際は幻影で倒すと消えちゃったから、武器も残らなかった、って事なんだけどね」
とフローレンは「あなたはどう?」という感じに、後ろを歩くアルテミシアを振り返った。
「普通は兵士が持っている感じよね♪ 幻影じゃないのだったら、鉄機人の腕が、あの筒状武器になってるのと遭遇した事ならあるわよ♪」
「他の冒険者の話にも、時々はでてくる感じ…でも、撃ってくるのは決まって幻影の人間よ。
小鬼とか亜人が使ってくるのは、聞いたことないかな…」
「そうよね♪ …まあ今回の場合、転移型ダンジョンが重なるように生成されるっていう、ヘンな条件だったと推測されるから… 一種の不正常動作が起こった感じじゃないかな…?」
「でも、その弾、っていうのかな? 持ってこれたんでしょ? 幻影じゃなくって」
「武器だけがどこかから入って来ちゃった感じ、かしらね…?♪
詳しいことはよくわからないけれど…
自動生成型って、こういう不具合が時々あるみたいなのよね…♭」
言っている間に樫の木の螺旋階段にたどり着いた。
フローレンが先頭で自然に上って行き、イヴが一段遅れでその内側に並ぶように上っていく。
「私が心配しているのは…ああいう危険な物が出回らないか、って事なの。
あんな高威力な武器が悪人の手に渡ったりしたら、人々が安心して暮らせないでしょ?」
魔法知識のない者でも簡単に力を行使できるような物が存在する可能性…
要するにイブは、庶民の生活が脅かされないか、という事を警戒しているのだ。
フローレンは螺旋階段の外側の方を歩いていた。
重い鎧を着るイヴが自然に内側を歩けるようにだ。
「大丈夫だとは思うけど…?
絶対とは言い切れないけど…それらしい古代の武器が使われた、ってお話は聞いたことないからね」
「ええ、大丈夫だと思うわよ♪
あの武器にしても、このダンジョンどころか階層からの持ち出しにすら規制がかかっていたでしょ?♪」
そうでなければ、あれを持って村を襲いに来ていただろう。
「さらにその“上”でも何重にも規制がかけられてる感じだから♪」
だからそういう古代武器がまかり間違ってこの世界に存在したとしても、特定の場所からは持ち出せない。
仮に持ち出せたとしても、作動しないように世界法則に記述され、規制が掛けられている。
魔奈に頼らない古代武器や殺傷力を持つ道具は、ほぼすべてに関して規制されているという。
「まあ、太古の世界には、あの武器がカワイく見えるくらい危険そうなモノがいっぱいあるから♪
たった一滴で都じゅうに毒を撒く液体とか、人を生ける屍に変える病原菌とか、
一国を一瞬で消し去る光の爆弾とかね♭
そういった物も、もれなく世界法則で規制がかかってるから、大丈夫だと思うわよ♪」
実際、太古の文明は、先の説明にもあったような魔奈を用いない技術、当代の「科学」で作られた兵器によって、数多くの自然が消え、数多くの都市が消え、数多くの人の命が消えたという。
太古の文明が滅びたのは、その強大すぎる力を持ったが故、と伝えられている…。
生き残った太古の指導者たちは、世界の法則を記述する力を持っていた。
世界を崩壊させた、魔奈を用いない技術による兵器を使用できないように、世界の法則として記述した、と伝えられている。
…その技術力も、規模の大きさも、あまりにも違いすぎる世界。
聞きながらイヴはちょっと戦慄を隠せないでいる。
妹のセレナはぽーっとして、頭がついてきていない感じだ。
「…あ、着いたわよ♪」
話している間に螺旋階段は終了。
第三階層へ上ってきたようだ。
四人が現れた場所は…
ちょっと風が吹いている。
つまり…第三階層もまた続いて屋外仕様だ。
小さな「部屋」のような広さの空間だ…
ただ「部屋」じゃあない…
なぜなら…
壁も、天井も、無いからだ。
部屋のような広さの場所に、床だけがある…そんな空間だ。
「何…ここ…? 屋上…?」
かなり戸惑いながら、イヴがそう言った。
彼女の言う通りこの場の状況は、何らかの建物の屋上にいる、という推測が最も的を得た表現だろう…
一応、胸の高さの欄干が付けられていて、右と左には通路が伸びている。
「な…なんで~?
なんでここ、お空の上ぇなんですかぁ~!?」
セレナは驚きと恐怖が綯い交ぜな感じだ。
要するに、かなりテンパってる…。
まあ、彼女がそう言うのもムリはない。
そう、眼下には雲の海が広がっていた…
この“部屋”から手の届かない距離に、白い石の柱が無数に並んでいるのが見える…
かなり大きな石柱だ。
そして高い柱…柱の下は雲海に溶けているが、上は斜めに見上げるくらいの高さまで。柱の上部が横に真っ直ぐ揃って並んでいる。
「何だろ…ここ? 天空の神殿…みたいな感じかしらね…」
「こういうの、かなり珍しいわよね♪ 何が出るのかな~♪」
そう言ってアルテミシアはいつもの反応検知をしている…けれど…
このフロア自体が巨大な幻術のようなものだから、周囲全体が光る感じだ。
「一応…反応検知してみたけれど…特には…♭ あ!」
「何!?」
「大きな生命反応…? 数は…四?…あ~~六はいるかも…♭」
「どこ!?」
アルテミシアは広い空間の下方を指さした。
雲海の下に、何かが潜んでいる、という訳だ。
「飛行型生物ね」
それが突然襲ってくる事が考えられる訳だ。
「強いの?」
と、冒険経験のないイヴは、冒険慣れした二人に質問した。
「まあ…反応の強さからしたら…私達四人だったら、勝てない強さじゃない…とは思うけど…♭」
「不意打ちが厄介よね…ま、気をつけましょう」
経験の差というのか、アルテミシアとフローレン、冒険者の二人はまだ余裕がありそうだ。
その分、イヴは慎重だった。
右と左の通路、そして周囲の空を油断なく見渡し…
「これ…どっちに行けばいい、とか、あるの…?」
と聞いた。
「そうね…どっちに進んでも、同じような作りになってる、と予想…♪」
「わたしも同感。だからどっちでもいいわよ」
決めて、という感じにフローレンはイヴに委ねた。
イヴはあまり迷わず、こっち、と近い方の右側を指差した。
この女騎士は性格的に決断が早い。
こういうところ、フローレンと似ているところがある。
細い通路だけど、横に三人並んで歩ける程度の幅はある。
等間隔に並んだ白い大きな石柱は、大きな正方形を描くように、この天空フロアを囲んでいる。
他の遮蔽物がほとんど無いので、非常にわかりやすい。
正方形は、ここに入る前に見た、この建物の外周と大きさがほぼ一致する感じだ。
つまり、その柱は、この「建物」の外周を取り巻くように並んでいる、と予想される。
その正方形に囲まれた空間、出発点は北側の中央だ。
反対側の南側…その両端に、外周の白い柱とは異なる、二本の柱が見える。
その柱は陽光を返すように輝き、遥か上まで伸びている。
輝く柱にはどうやら、扉のようなものが付いているように見える…
そこに向かうしかないようだ。
その場所までは、外周近くを大回りして行くことになる…
細い橋の上を、四人、身を合わせるように、慎重に、歩いてゆく…。
イヴは臆することなく、ただ慎重に歩いている。
セレナは…姉の背に隠れるように歩いている…気の毒なことに、かなり表情が強張って足もすくんでいる…時折、雲海に目を遣っては、また「あわわゎ…」と怯え…かなり…高いところが苦手な感じだ…
「これって…幻影…? よね…?」
とても幻の中にいるとは思えないようで、イヴは怪訝な表情で確認を求めてきた。
そう思うのはムリもない、とフローレンもアルテミシアも思う。
この二人にも、実際に天高くにある細い橋を歩いているような感覚がある。
足元やこの欄干だけは実物だろうけど、上方の大空も、眼下の雲海も、鮮明な幻だ。
「うん、幻は幻、なんだけど…」
「でも落ちたら実際に死んじゃうと思うから♪ 気をつけてね♪」
それを聞いてイヴではなく、セレナが「えええぇぇ!!」と大いに驚いていた…
強力な幻術は、ただの幻じゃない…
直接脳に働きかけるような、鮮明な感覚として認識されるのだ。
幻の剣で斬られたら痛いし、幻の炎で焼かれれば熱い。
強力な“攻撃”を受けると、死を認識してしまい、実際の外傷はなくとも死んでしまうのだ…
当然、お空の上から地上に落下する幻覚を脳が感知してしまえばどうなるか…言うまでもない…
それを聞いたセレナは…姉の背にくっつくようにして、おどおどしながら足取りおぼつかず…。
(言わなきゃよかったかな…♭)
ちょっと気の毒すぎる感じだ…。
西方向に進んだ“橋”は、直角に南に折れ、同じ幅で南まで続いている。
橋を渡るのも半ばを過ぎた頃、対岸の柱と扉が、次第に鮮明に見えてきた。
目的地の南側は上ってきた北側と違って、横長に床が広がっているように見える。
その両端に、外周の白い石柱とはまた違う大きな柱が立っていて、そこに扉がある。
その目的地がはっきり視認でき始めた、その時…
中央付近の雲海が波打ち、そこから、翼を持つ影が現れた。
それ、は彼女たちの頭上高くに飛び去り、そしてその辺りの空を廻っている…
「何…あれ…!? 竜!?」
叫びながらイヴが、身構えるような姿勢をとっている。
「あれは…飛竜ね♪」
「二本足だから、そうよね。ドラゴンほど強くないわよ。
とは言っても…」
「そうね。この状況であの足に掴まれたらおしまいだから、要注意ね♭」
強くない、とフローレンは言うけれど…それは彼女の基準であり一般人のそれではない…
飛竜はかなり大きな魔獣だ。
あの巨大な前足で掴まれたら、空中に運ばれてしまって、そのまま雲海に落とされれば、助かる術はない…
だから強さ以前に、掴まれない事が肝心である。
"上空”を飛ぶ飛竜の急降下を警戒しながら、歩を南に進める…。
飛竜は、上空を旋廻していて、こちらの様子に気づいて、隙を伺っているような印象を受ける…
だから四人は、上空に気を配りながら前進している感じだ。
「地形的には絶対的に不利…厄介ね…」
イヴは冷静にこの状況を読んでいる。
「こ、この下には…まだ、いっぱい…い、いるんですよね…?」
妹のセレナは、もう可哀想なくらいおどおどしている…
眼下に広がる雲海だ。
この雲の下には、小鬼の村があったんじゃないか…とか、そういう常識的な疑問は通用しない。
この下には雲の海があり、飛行生物が潜んでいるのだ。
今はそれが事実だ。
その雲が、いきなり波打った。
橋の真横の雲だ。
そして…
真横の雲を貫くように、また飛竜が舞い上がった。
下からの突風が身体を掠める。
四人は思わず目を閉じ、下からの風圧に堪えるように、身を硬くしていた。
アルテミシアの山高帽が風に飛ばされ飛んでいった。長い銀髪も風を受けてボサボサだ。
セレナはローブのスカートが高く舞い上がるのを、前だけでも、と必死に両手で押さえている…後ろは、幸い誰も見ていないけれど…白いヒモ巻き下着の食込んだ可愛らしい生のおしりが露わになっている…
「二匹目…?」
新たに現れたその飛竜は、もうかなり上空へ舞い上がっていた。
その突風で各々体勢を崩しつつ、その姿を目で追う四人…
そこに隙ができていた…
最初の飛竜から目を離した、という隙が…!
先に舞い上がった飛竜が、その隙を付くように迫っていた…!
死角からの急襲!
鋭い鈎爪が襲うのは…
ローブ姿の無防備な少女だ…!
「きゃぁぁぁ!!」
迫る巨大な飛竜に、セレナが悲鳴を上げた。
「危ない…ぃセリナ!」
イヴが叫びながら、重なるように少女の身を庇った。
その巨大な前足が、獲物を捕らえた…と思った瞬間…
二人分の身を守るように現れた巨大な盾がその攻撃を受け止める…!
ピンクと銀の色合いの…つまりLV1装備の換装武器の大盾だ。
イヴは使い方を聞くまでもなく、咄嗟の判断で武器換装を使いこなしていた。
攻撃を阻まれた飛竜はそのまま、また高みへ舞い戻る…
「やるじゃない!」
フローレンは手を差し伸べる。
「ええ、いいわね、これ。気に入ったわ」
イヴもその手を取って立ち上がった。その大盾は既に消えている。
セレナも、「あ…あ…ありがとうございますぅ…」と怯えながら姉の手を取り立ち上がる。
頭上では、二匹になった飛竜が輪を描くように旋廻している…
先程より高度が近い…
獲物を狙いやすい高さを学んだような気がする…
「また来るわね…来たらとりあえず、できるだけ端に寄って、身体を低くして…
そして盾を出して防御、それで躱せるとは思うわ」
フローレンの戦術に、イヴも、ええ、と頷き、そして
「セレナ! 守りをかけなさい!」
が叱りつけるように妹に命令をした。
おどおどしていた少女は、はっ!と、自分の役割を思い出したように目を見開き、そして光の術を行使する…。
<<天光の聖盾>> セレスティアルホーリーガード
天の光の守り。
四人の身体を、輝く光が包み込む…
その光は、激しく輝き、そして姿を消した。
「そうね、ムダな戦いは避けましょう♪」
アルテミシアも攻撃の為に魔法を使うのをやめ、欄干に身を隠すようにしゃがみこんだ。
いつの間にか、吹き飛ばされたはずの山高帽を被っている。
フローレンとイヴは、いつでも盾を出せるように意識を集中している感じだ。
そして、下りてきた!
一匹、そして少しの間を置いて、また一匹…
二匹は時間差で迫ってくるようだ…
四人は、端の欄干に沿い、身を低く構える…。
そこに、再び襲いかかる、巨大な鉤爪…
だけど…
換装装備の盾を出すまでもなかった。
セレナの守りの盾がバチッっと音と光を立てて、飛竜の鋭い前足を退ける。
立て続けに二匹。
その巨大で鋭い前足は、彼女たちのかなり上方で、不可視の盾に弾かれる。
不自然な形に、飛竜たちが弾き飛ばされるように上方へ仰け反った。
そして…
捉えるのが困難と見るや、飛竜たちは諦めたように、遥か上空へと飛んでいった…
姿が見えないほどの上空だ…
この上にも階層があるんじゃないか…とかいう常識的な考えは、とりあえず無しだ。
とりあえず目の前の脅威は去った。
みな油断はしていないが、そのまま南に向けて走る。
セレナの守りの盾がかなり強力だとわかったからだ。
「でも、あれ…倒さなくても良かったの?」
「ええ、倒す必要はないわよ。ムダだし」
イヴの質問に、フローレンが即答した。
「無駄?」
「そうよ♪ だってあの飛竜、幻影だから♪」
アルテミシアが説明する…
この建物の外観を見ているので、一つの階層の高さはある程度予想がついている。
通常だったら、雲の下は下の階があるわけで、逆に飛竜が上を飛び回っている場所には、上の階層があるはずだ。
幻影だから、下や上の階層を無視して飛び回っているのだ。
実体だったら、ここにあるべき天井を越えては飛べない、という事になる。
そして、幻影を倒しても、何も持っているはずがない。
倒したという経験と自己満足しか得るものは無い訳だ。
尤も…幻影でなくても、この魔獣が価値のあるものを持っている可能性は低い…。
「無駄な戦いを避けるのも、冒険者の実力のうちよ」
フローレンがそう締めくくる。
「ああ…そういう事なのね…」
この女騎士も色々と学んで、少し冒険に慣れてきたようだった。
そうやって獰猛な飛竜を往なしながら、南側にたどり着いた。
大きな柱が立っている。
周囲の白い石の柱ではなく、透明な柱だ。
遥か上まで伸びていて、どうやら柱の中は空洞になっているように思える…。
そして柱には両開きの扉が付いていた。
「…同時にじゃないと開かない構造、だって」
扉に触れたフローレンが手を話しながら言った。
「え…? なぜわかるの…?」
と、怪訝なイヴに、
「触ればわかるのよ」
と、フローレンがイヴの手を取って、扉に触れさせた…
「…成程…」
直接頭にイメージが伝わってくるのだ。
この階層に残っている人数の、半分ずつで二箇所の扉に分かれて入る必要がある…
その二つの扉の中の人数差は一人まで…この階層に他に人がいない事…
つまり…
「二手に分かれないと進めない、って事?」
「そう♪ 次の階層は二手に分かれて探索って事になるわね♪」
「分かれてって…大丈夫なの?」
「まあ、こういう分割型のダンジョンは、後で合流点があるはずだから♪」
「以前、四分割させられたの、あったよね? 四人バラバラで、結構大変だったじゃない?」
「あれね♪ ユーミが簡単な計算問題が解けなくて、かなり待たされたやつ♪ …っていうか、フローレンも計算にかなり時間かかってたんだけど#」
「え~? そうだっけ? …まあ今回は単独じゃなくて、二人ずつだし、大丈夫! …多分」
フローレンは嫌な記憶は思い出さない、嫌な事はあまり考えない主義だ。
「じゃあ、私は、アルテミシアと行けばいい、のかな?」
「そうね、それが最善ね」
冒険の経験と、前衛後衛で分ける、と考えれば、この分かれ方しかない。
フローレンやアルテミシアは当然、イヴも即座にそう思ったらしい。
セレナだけが「えっ? えっ?」と戸惑っている…
「まあ通話はできるようにしておくから♪」
<<遠隔通話>> リモートトーキング
遠隔での会話内容を四人で共有する。
心で話す念話とは違う、実際に声出しは必要だ。
フローレン、セレナ組が、西側の扉の前で待った。
イヴ、アルテミシア組が、東の扉に到達した。
『準備はいいかしら?♪』
はるか向こうのアルテミシアの声が、何も無い空間から聞こえた。
「ええ、こちらはいつでも!」
フローレンはセレナと扉に触れる。
少しすると、その扉は真ん中から両側に、滑るようにゆっくり開いた。
柱の中に進む。
透明な柱だ。分厚い円状の、水晶か、硝子のような…
二人が入ると、扉がゆっくりと閉まった。
そして…
突然、床が揺れた。
セレナが「きゃ!」とバランスを崩してよろめく…
床がせり上がっている…
上へ、上へと、ゆっくり上がって行く…
雲海の神殿が、小さくなる。
反対側では、同様に透明な柱の中を上がっていく、イヴとアルテミシアの姿が見えた。
その雲海が見えなくなってゆき、周囲は次第に暗くなる…
かなり上った感じがする…
その真っ暗な空間で、ゆっくり扉が開いた…。
扉の向こうから、冷気が伝わってくる…。
フローレンが先に扉を出た。続いてセレナが。
突然、明かりがついた…
そこは…、第四階層は…
凍てついた洞窟だった…
本来、このダンジョンもの…本編からはあまり重要ではないのですが…
なんか、書き進めちゃってます… 全く予定に無い事しちゃってます…




