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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第8章 花月兵団
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77.仲良しな四人

建国フェイズが続いてます…そろそろ戦闘がこいしくなってまいりました…



一ヶ月後、ラクロア大樹の村…




踊り子のラシュナスはフルマーシュに戻された。

ここに置いておいても、やることがない…

せいぜい、宴会の時に踊りを披露するくらいだ…。

フルマーシュでも、踊ったり、男客の相手をする程度なのだけど…


ただ、店にも誰か冒険者がいると安心できる。

ラシュナスはふわふわしてそうで、実はかなり強い。

特に並の男性が相手なら、彼女の魅了術(チャーム)からは逃れられない…。



占い師のレメンティは一度フルマーシュに戻った後、商業都市アングローシャで別れた。

本人の希望で、北を見て回った後、旧ブロスナム領を西進して、北からスィーニ山に戻るルートを確認しておきたい、という事だった。

ここに来た頃既にレメンティは、スィーニ山をひとりで北上して、ブロスナム領へ抜ける道が続いている事を確認していた。

その手前に、昔の関所だったらしい建物がある、と言っていた。




そんな中、みんなこのラクロア大樹村の生活には馴染んできている。


女兵士たちは、訓練のない日や訓練前後の時間は、それぞれの仕事をしたり、誰かの仕事を手伝ったりしているのだった。



ウェーベルとユナ。

大人っぽい二人の女性が、並んで料理をしていた。

二人とも女兵士としては、壱番隊、弐番隊の隊長である。


頭の後ろで金髪をシニオンにまとめたウェーベルは、まだ若いくせにどこか人妻っぽい艶がある。

ユナは凛とした顔立ちの中にも、サイドポニーにまとめた明るい栗色の髪が、ちょっと色っぽい感じを出している。

ふたりとも、愛する男性に先立たれていて、お互いの境遇に親近感を感じている。

夜には、一緒にお酒を飲みながら、涙に暮れていた事もあった。

今は二人共、寂しさを乗り越え、ここにいる妹たちの世話を焼き守る事を生きる意味としている。


ちっちゃなアーシャと一緒に料理の手伝いをしているのが、フィリアとランチェ。

ユナの妹のフィリアは、姉と顔立ちは同じだけど、甘い栗色の髪をツインテールにしていて、かなり幼い感じだ。

その親友のランチェは、銀色ブロンドのふんわりした髪、目のぱっちりと穏やかで明るい印象の娘だ。


この二人は同じ歳の金髪三つ編みのちっちゃなアーシャと気が合うようで、

今もメイドのようなお揃いのエプロン衣装で、三人並んで楽しそうに一緒に野菜を刻んだり、調味料を振ったり、お鍋で煮込んだりしている。


お手伝いの彼女たちに食事作りの指示を出しているのは、ここの食事作りを担当する、小柄なキャヴィアンだ。

可愛らしい見かけによらず彼女は二人の娘を持つ母親で、彼女より背の高い長女のトリュールと並んで調理を行っている。

ここの村の全員分の食事を作っているのだ。

全員分の食事を毎日三食作り続けるのは、実に大変な仕事なのだ…





村の南側にある畑の方では、違う組の女子たちが、一緒に作物を育てている。

木の上なのに、はるか昔に持ってこられた土の地面があり、貯められた水の流れがあり、十分な農地が確保できるのだ。

加えて気候は温暖で、作物の成長がよく、しかも大樹の魔奈(マナ)の影響を受けて、通常より早く大きく育つのだ。もちろん、味もいい。


かなりの実りが期待できそうだった。

ここにいる全員が食べていけるだけの量を生み出すのに充分だ。

賊から救い出された女子たちは、もともと農村の村娘が多い。

ここで農地を耕す生活に抵抗が無く、自分たちの生活のために食料を生産する事に労力を惜しまない。





そして、お金に替えるための作物の生産も行われている。


最初に高値で売れたのは、この村の果実酒だった。

だけど、果実は成るに任せる量しか採れないので、作れる数は多くない。



主力商品は砂糖、そしてその(キビ)から作られる砂糖酒だ。


やはり海向こうの特産品は狙い目だ。


南のアルガナス大陸までは、かなり危険な航海となる。

海には危険な魔物が多数生息しているからだ。

ルルメラルアの大きな商船程度では、海を渡る事はできても、強力な海の魔物に遭えば一瞬で海の藻屑と化す…


主に南の大陸と貿易を行っているのは、武装商船を多く持つ西の自由都市ガルト。

または水術使いを多く擁する、東のショコール王国だ。


上級の魔物、大海蛇(シーサーペント)大蛸(クラーケン)大鯨(ケートス)などは、

ガルトの熟練傭兵や冒険者たちでも、ショコールの優秀な女兵士たちでも、

何艘もの、何人もの被害を出し、倒すどころか撃退するだけでもやっとだという…。


中でも海における最強生物とされる、海龍(パープルドラゴン)に遭遇すれば、まず助かる道はない。

その音波の(ブレス)は、ガルトの頑強な鋼鉄船すら振動で壊してしまう。

ショコール王国の海歌族(セイレーン)水術師たちは音波振動の攻撃を軽減する術を持っているが、その巨体で体当たりされれば船は木端微塵だ…。


つまり、南大陸の物資は、命懸けの商品なので、価格も半端なく跳ね上がる。


その上、その交易国が仕入れた物資を、ルルメラルアが買い取る形になるので、当然、他を経由する間に価格は跳ね上がる…。


だけど…それがこんな近場で作ることができたら…?





そしてもうひとつ、高い価値が見込めそうなのが…

先日から作られている葡萄(ブドウ)酒だ。


豪農の娘だったミミアが、村に帰って持ち帰った葡萄だ。





ミミアは故郷のイアーズ村に帰省した…


実家の農園は、数人のならず者に脅しを受けていた…

村の領主が兵を連れて北に行って不在なのをいいことに、そいつらは、農園の“護衛”を勝手に売り込んできて…勝手に住み着いて、散々好き勝手をしていた訳だ…。

そう、小麦パンを食べまくったり、ぶどうを食べまくったり、ぶどう酒を全部飲んでしまったり…(ミミアも狙っていた)五年熟成のソーセージを全部酒の肴にしたり…

と、(ミミア目線では)悪行の限りを尽くしていた… 

もとい、食べ尽くしていた…


そうやって農園を苦しめていたならず者どもを…

ミミアは、華麗に舞うように斬り伏せ、斬り捨て、ちょっとだけ親友メメリにも手を借りたんだけど…

ほぼ一人で片付けた!


あー…今までのは…「ミミアが語るには」である…

多少の脚色はある、と思う。

そう…多少、の…。

…彼女の愛用武器は戦鎚(メイス)なので、つまり鈍器だから、“斬り”はおかしい、とか言ってはいけない…


…そして…実はフローレンとアルテミシアが…こっそりナラズモノ共を叩きのめして、陰ながら手助けをしていた事を…ミミアは知らない…。



立派になった(ダイエットした)娘の姿に驚きつつ涙を流した父に別れを告げ、


沢山の葡萄の苗木と、タル数杯分もの葡萄を(父に断りもなく)もらってきた。



ついでにイアーズ村の娘を四人連れてきた。


メローネは、ミミアと仲の良かったお屋敷のメイドで、ミミアに引けを取らなほど胸が大きい…

ヴェルは、ミミアの母方の従姉妹で、ミミアにちょっと似てる、やっぱりかなり胸が大きい…

プラマは、ミミアと同じ歳の親友、この子もミミアより僅かに(1cm)小さいだけで胸が大きい…

チェイリーは、そのならず者どもに乱暴され「もうお嫁にいけないから」と、子どもの頃から憧れていたミミアについてきた村娘…実は親が決めた許嫁(ミミアのダメな兄)が嫌だったから逃げてきただけ…らしい。で、この子も当然胸が大きい。


大樹の村は葡萄(ぶどう)園の到来、と共に…花月兵団の平均胸囲が上がった。


この後、イアーズ村の葡萄を食べれば、胸がおおきくなる…とウワサが、大樹村に流れる事になる…。

あくまで、ウワサだけど…。


ここに来てからさっそく、持ってきた(タル)の葡萄を使って、五人揃って葡萄酒づくりを行っていた。





例の秘伝の肥料を用いると、ほんの数日で葡萄の苗が成長した。

その数日後には、葡萄棚にたわわに葡萄が実っていた。


「うわ~!」「やったー!」「ブドウだよー!」「いっぱ~い!」


葡萄で満たされる景色を目にした森妖精(ドライアード)たちが歓喜している。

「ぶどう酒!ぶどう酒!」と大盛りあがりだ。

森妖精(ドライアード)の目当ては、果物じゃあなくって、お酒のほうらしい…


女子たちは葡萄畑に集まって、とれたての葡萄を口にしていた。

なぜか…争うようにいっぱい食べている…。

当分は秘伝の肥料の影響ですぐにまた実るので、いっぱい食べても問題ない、のだけど…。

それにしても、なんか必死に食べている…。





一番喜々として葡萄(ブドウ)を収穫しているのは、メメリだ。


「ぶどうパンを、いっぱい作ってほしい!」

と、パン焼きのベルノに頼み込んでいる…。


だけどメメリがわかっていないのは…

ぶどうパンには通常、干したブドウを入れるという事だった…


メメリは…その驚愕の事実を知って愕然とする…


「じゃあ~、干しブドウを作ればいいじゃな~い!」


と、落ち込んだところを、相方のミミアになぐさめられるのだった…。

明日からは干しブドウづくりに勤しむメメリの姿が見られる事だろう…





メメリも故郷の村に里帰りをした。


メメリのアイーズ村はさらに少し北に入った山間の小さな村だ

ミミアのイアーズ村とは名前が似ているけれど、違う村だ。

実はこの両村はどちらも、古代より続く由緒ある村なのだ。


だけど…現在のアイーズ村は、非常に貧しい村だ…。


ただでさえ貧しい村なのに、先月現れた魔物の脅威にまで怯えていた…。



そこでメメリは故郷のために立ち上がり…村を苦しめていた魔物を退治した!


…気を失っていたのだが、目が覚めたら側で魔物が絶命していた…

一緒に倒れていた女の子たちも、メメリが倒したと思いこんでいる…とか、いないとか…


実は魔物を倒したのはフローレンとアルテミシアで、二人はもっと強い魔物を追ってさらに奥地まで行って不在だっただけなのだが…


一緒に倒れていた女の子たち…

アーディは、メメリの友人、村の孤児だったけれど、勇気を出してメメリと一緒に魔物の巣に向かった。

サブトゥレはその友人、幼い弟や妹を飢えさせないため、村を出るか魔物の餌になる覚悟で、巣に向かった。

ディヴィは、さらにその先の村で食い扶持を減らすため魔物の餌に出された…ので、村に帰れない女の子…

マルティナは、魔物退治に勇んで、そして返り討ちに遭った弱小冒険者パーティの生き残りの魔法系女子…



花月兵団が身請けしたその四人を仲間に加え、メメリは悠々と凱旋?した…

ああ、ちなみに…その四人全員やや大きめの、いいお尻をしている…のが目立つ…


彼女たちはメメリを慕っているので、一緒に干しブドウ作りにも参加してくれる、ことだろう…。





さて…

毎晩結構遅くまで明かりがついている建物がある。

この村の居住区で一番大きな建物だ。


クレージュの家である。

でも、クレージュは今、行商に行っているので村にいない。


彼女の仕事を代行しているのは、可愛いキューチェだ。


代表のクレージュは行商に余念がなく、この大樹の村と、フルマーシュやアングローシャ他の町を、常に行き来しているしているような状況だ。

この村に長く留まる事が、ほとんどない。


なので、この大樹の村での管理業務を主に担当しているのは、実はこの小柄で可愛いキューチェ、という事になる。




夜遅いのに、クレージュの事務所では、小柄なキューチェがまだお仕事をしていた。


親友のハンナはといえば…あちらのソファにもたれて、すでに居眠りしている…



光石のランプに照らされた机の上には、なんか難しそうな書物が、何冊も開いたままで置かれている…

そして、沢山の文字がびっしりと書きつけられた紙がいくつも並べられ重ねられている…

いかにも頭の良いキューチェの仕事場らしい風景だ。


全部、キューチェが書き入れた文字なのだろう…

繊細で、そして少し丸っこい、可愛らしい文字だ…


キューチェはさらに魔法の光で文字を書き、訂正してはまた光で書く…

それを繰り返している。

何度も考えては、修正し、やっと決まった内容を、紙に焼き付ける。


キューチェは、この村全員の仕事が段取り良く進むように調整し、指示を出している。


たとえば…

村にある施設が混雑しないように、使う順番の段取りを細かく決めていた。


フルマーシュにいる頃から、お風呂の順番決めには定評があった。

同時に四人しか入れない、あのお風呂。

でも、女子全員が毎日入りたいので、この順番の取り決めは極めて重要なのだ。

その順番決めに誰からも苦情が全く出なかったのは、キューチェの順番管理が実に繊細かつ的確で、全員に公平であるからだ。


キューチェは、他の子たちからは、有能で慕われる、というよりは、小柄な美少女なので可愛がられる、とういうのが正解なのだけど…。


「やっほ~! キュ~チェ~!」

「あらら…まだお仕事ですか…」


やってきたのは、ミミアとメメリだ。

大きなお盆に、夜食の巨大サンドイッチが、どさっと乗っかっていた。

「ほら~さしいれ~」

「作ってもらったですよー」


「あ、ありがとう…でも…」


キューチェは食事の間も惜しむ感じで、ここで仕事をこなしている。

部屋の端にある少し離れたテーブルの上には、簡単に食べられるように、

柔らかいパンに野菜や薄切り燻製肉を挟んだものが置かれていた。


…そして、ぶどうジュースが特大カップで置いてあった…


「あらら…お夜食~、かぶっちゃったね~」

「ですねー…どうしましょう…ここは私たちが、食べるのお手伝いして…」


はむっ!


メメリが言い終わるまでもなく…

居眠りしていた、と思ったハンナが、その巨大サンドを頂上から(かぶ)りついていた…。


ハンナはとにかく身軽な感じだ。

大好きなキューチェの指示を受けて、他の子たちに通達に走ったり、各部署を走り回っている。

とにかくこの子は、たえず動き回っているか、大好きなキューチェと一緒にいるか、どちらかだ。

畑で採れた野菜を厨房に運んでいった、と思えば、料理をしていたウェーベルから薪が足りない、と言われて、

今度は物資小屋へ走って、ディアンとネージェに薪を届けるようにお願いする。

その帰り道に鍛冶場や服飾工房なんかを順々に回って要望を聞いて回ったりしている。

こんな感じにハンナがあちこち走り回って潤滑に業務を回すので、各部署の仕事が効率よく行われている。


「あらら~…ハンナ~」

「まあ、いいですけど…」


ハンナは巨大サンドを、あっという間に食べ尽くしてしまった…。

「おいしかったですよ~」


そもそもキューチェのお上品なお口では、こんな巨大サンドは食べられない…

自分基準で作ってもらうから、こんな事になるのだ!…という事を、ミミアもメメリも…気づくことはないだろう。多分、永久に…。


「うふふっ!」

でも、そんな光景を見て、キューチェが笑っている。


「あはは! キュ~チェ、わらった~」

「よかったですよー!」


なんか、楽しい時間になった…。


「この四人で集まると~楽しいよね~」

「そう、なんか…昔からずっとお友達だったような…そんな気がして…」


うんうん、と(うなづ)く面々…


「…そうね、でも…」

「なーにか、足りないような気がするですねー」


四人は何となく、同じような気持ちを抱いている…。


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