68.ラクロアの世界樹
スィーニ山の山中。
山の端を通る断崖の道から、いくらか山中に入った場所、
森を抜けた高台に彼女たちの姿はあった。
山の麓からは既にかなりの高さがある。
この山は西側にさらに高くそびえているため、ここが山頂に近いのか、まだ中頃なのか、それすらもわからない。
木々に隠されたように岩の裂け目の細道があり、その奥に四方を岩に囲まれたような空間があった。
その少し小高い場所に巨大な木が立っていた。
この場所からは見えないけれど、すぐ東にあるラクロアの大樹とは、もちろん比べ物にならない。
が、一般的には大木だ。樹齢数百年は下らないだろう。
「えっと…ここが、目的地…という事でしょうか?」
と、女兵士を代表してユナが質問した。
彼女と同様に、フィリアやランチェ、他の子たちも怪訝な表情をしていた。
道はここで終わっているからだ。
「いいえ、ここから飛ぶのよ」
フローレンの説明に、「飛ぶ?」と、ますますわからない感じに女の子たちは顔を見合わせた。
「転移魔法、ってやつよ♪
…待っててね♪」
アルテミシアはそう言って、その大木の前に進み出た。
「この木に触れると交信できるの…♪
…私達の到着はもうわかってるはずだけど…」
「あ、私。ええ、今ついた♪ 虹の橋、お願いできるかな?」
アルテミシアは大木に語りかけている。
事情をしらなければ、ちょっと“あちらがわ”な人に見られるところだ…。
「集まって♪ 転移魔法が発動するわよ♪」
アルテミシアが全員を荷馬車のところに集結させた。
転移魔法とは…
その名の通り、物質または人などを、別の場所に移動させる魔法である。
わりと有名な魔法の概念なのだが、実はとても難易度の高い魔法である。
難易度の理由は主に、莫大な魔奈消費量と、そして安全性である。
魔奈を蓄えるのも難しい。
長距離転移魔法に用いる魔奈は莫大なので、魔奈を蓄える装置などが必要になる。
そして蓄えるのに時間がかかる。…という。
安全な転移魔法の技術は、古代ヴェルサリアほどの魔法大国でも、確立が難しかったという。
転移先に何か物質があった場合…
転移は失敗する。
古代より伝わる逸話があって…
英雄クラスの冒険者グループが行方不明になった原因が、その転移の失敗であるらしい…。
魔道士から念を送っての知人への最後の言葉が、
「石の中にいる!」
だったらしい…
それ以降、その高レベル冒険者たちを見た者はいない…
魔法研究者や冒険者の間で、転移魔法の存在と共に、なぜかこの話が知れ渡って有名になっている…。
ヴェルサリアではこの問題を最優先に解決すべく、何年もかけて転移魔法の研究が重ねられたらしい…。
その結果、転移先で固体物との重複が合った場合、はじき出されるように改善された。
それでも転移魔法による事故は絶えなかったようで…
空中や海中に現れ、落下死したり溺死したり…
火の中に飛んでしまうケースもあったという…。
どういう訳か、転移を行った魔女の尻から下だけが壁から出ていて、色々な意味で事件になったり…という事もあったようだ…。
その魔女は助け出されて一命を取り留めたという逸話だが…。
そういう事もあって転移魔法は、ヴェルサリアほどの高度な魔法文明の中でも、限られた術者のみに許された、禁呪扱いとなっている。
瞬間移動:見える範囲への転移
帰還:あらかじめ受け先が決められている転移
転移門:あらかじめ決められた二点間への転移
引き寄せ:縁の強い物や人を自分の所へ引き寄せる転移
現存が確認されている転移魔法技術は、その四つに集約されている。
今彼女たちが使用している転移魔法は、二点間を繋ぐ転移門である。
「あの大樹の魔奈を使う転移魔法装置だって、お話よ♪
そして、あの大樹とこの大木が繋がるの…♪」
地面が輝く。
アルテミシアが魔法を使う時の、魔法陣のようなものが、大きく地面に描かえている…
それが光を上に立ち上らせ…一行は馬車ごと、その虹色の光に包まれた…。
十八人の女子たちから、目の前に見える風景が消えた。
虹色の光に満たされた空間。
その光が、すごい速さで後ろに流れていく…
いわゆる“瞬間”移動ではない。
“入口”から“出口”までの間、多少の時間はかかるのだ。
その高速移動によって、前方からのものすごい “光の風圧”、のようなものを受ける感じである。
冒険者組を除く女子たちは全員、一様に目を閉じ、構えたり抱き合ったり身を固くして、それに堪えるようにしている…。
その頃…“外”の世界では、虹が架かっていた。
ラクロアの大樹から、このスィーニ山にまで…
そう、ちょうど彼女たちのいた、大木の広場付近から、虹が立ち上っている…。
その転移門が開いている時、大樹からこのスィーニ山にかけて、虹の橋が架かるのだ。
迫る虹色の光の圧が弱くなる…。
彼女たちを取り巻く虹色の世界が、徐々に薄くなっていく…
新しい景色に馴染むまでの少しの間、目眩のような感覚が残る…
虹色の光が完全に消えた時、その鮮明な緑の景色が視界に入ってきた…
「到着~♪ ここが目的地、ラクロア大樹の上にある、エルフの村よ♪」
頭上を覆う、大木の枝と、そこに茂る多くの葉。
幾重もの枝と葉が、完全に日の光を遮り、木漏れ陽されも漏らさない…
ここが、大きな…実に大きな木の、その幹に隣接した村である事がわかるであろう。
もう夕刻だから、その薄暗さも増している感じだけれど、
その幹に据えられた光石の街燈が、この広場を白い光で照らしているのだ。
「あ、きたー!」「まってたよー!」
先にこちらに着いていたネージェとディアンが、駆け寄ってくる。
その後ろには、エルフの長ロロリアと、その相方の銀妖精アルジェーンの姿も見えた。
「ごめん、ロロリア。訳あって六人増えたの」
フローレンはユナたち女兵士八人と共に、山で知り合った二人の子供と四人の一家を紹介した。
「いえ…大歓迎よ…
百人と少しくらいまでなら、受け入れは大丈夫だから…」
ロロリアが言うには、受け入れには色々と制限はあるようだ。
まず、森妖精以外の男性は、あの転移魔法を受けられないらしい。
つまり、ここに来ることができない…
…危険な下の森を抜ける手はあるけれど…。
女性に関しては、フローレンやアルテミシア、クレージュの認めた者ならば問題はない、という事だ。
そもそも、ロロリアが認めた者以外は、あのスィーニ山の転移のための大木の広場までたどり着けないらしい。
大樹の幹は、真っ直ぐよりも僅かに内巻きに湾曲した、巨大な壁か何かのようにしか見えない。壁にしか見えないほどに大きいのだ。
ほぼ円形のそれは、一周するとおそらく、下の世界でいう、小さな町の外周くらいの太さになる。
フルマーシュの町の外壁より少し小さいくらいの太さがある木の幹、という訳だ…。
この幹の東側に伸びた大きな枝の上に、この村は築かれていた。
その北から南に半円を描くように、村が作られている。
スィーニ山から転移してくる場所は、幹のやや北側。
そこがこの村の端っこに当たる。
枝の上に木材がしっかりと組まれ、幹の周囲に隣接する形で、平坦な地面を作り出している。
ここは、“樹”の上の、“木”の村、なのだ。
ここは大樹の枝の上だけど、木材がしっかり組まれ固定されているので、地面は非常に安定している。
枝の先のほうは風が強いと揺れたりするらしいけれど、幹に近い場所は外気の影響を受けない。
雨水すら、ここより上の葉の傘が受け、しかもそれを幹の一箇所に用水として蓄えてしまうのだ。
全員で村の中心広場に集まった。
丸太を半分切りにしたようなテーブルが沢山並んでいて、ここでみんなでご飯を食べたり、集会をしたりするのだ。
エルフ村のロロリア、アルジェーンたち十人と、今回訪れた女兵士たちや山で加わったメンバーを含めて二十三人の女子が、まとめてこの中心広場に集まった。
エルフたちが食事を用意して並べている。
主にエルフ村で採れた野菜や穀物だ。
今回は肉はない…
明日の食事には食膳に並ぶだろう…狩る気満々な子がいるから…。
食事会の席で、全員が順番に挨拶をして、
代表してアルテミシアからロロリアに、お土産が贈られた。
クレージュが商業都市アングローシャで仕入れてきた品々だ。
「食器! 食器!」
とエルフたちが声を上げて喜んでいる。
…エルフたちは本当に…絵皿とか、綺麗なカップとか大好きなようだ…
他にも、硝子細工の工芸品や、金の燭台、銀の鏡や装飾品の数々…。
エルフ女子たちは初めて見る品々を代わる代わる手にとって、感激を表していた。
中には、ヘンなポーズをした動物の置物、とかもあるんだけど…
…とりあえず安かったので買ってきた、とクレージュは言ってたやつだ…。
高級食器には、破損に強くなるように、アルテミシアが魔法を掛けている。
食器の底に、硬化の魔法の言葉を刻み込んであるのだ。
それでも絶対壊れないわけではないので、扱いは慎重に気をつける必要はあるのだけれど…。
呪紋処理という。
一般に、論理魔法装備ではない、男性用の防具の強度を上げるのに用いられる。
食器にしても防具にしても、通常この処理がなされた物品は値が高くなる。
わざわざ高い物を買うのは馬鹿馬鹿しいので、アルテミシアが引き受けて呪紋処理を行っているのだけれど…
狭い場所に細かい文字をびっしり書きつけるような感じなので、非常に疲れる。
アルテミシアはこういう作業を手伝ってもらうためにも、弟子たちに魔法を教えているのだ…。
エルフたちはとても感謝している、けれど…
もともと彼女たちから預かった果実酒や、冷蔵果実、香辛料なんかを売ったお金で買ったのだから、エルフたちにお返しをするのは当然の事なのだ。
そして、クレージュからは今回また、販売できる品を持って帰るように頼まれている。
特に、あの果実酒は、できる限り欲しいという事だ。
あとは、例の砂糖だ。
そして、その砂糖の黍から作られる砂糖酒についても、かなりの期待をされている。
こちらに関しては、レイリアがクレージュから直に頼まれていた。
レイリアの酒に関する目利きを、クレージュは疑っていないのだ。
好きこそ物の上手、ということだろう。
作物は主に幹の南側で作られている。
この南側には、鏡のようなもので陽光を反射して、空間を照らす仕掛けがある、ということだ。
だから畑や果樹園にも、充分に陽の光が届いている。
翌朝。
レイリアは、火竜族の妹分、ガーネッタとネリアンについて、この南側の農園を見に来た。三人のエルフも同行している。
ロロリア以外のエルフの八人には、それぞれ担当があるらしく、この三人は、畑と、果樹園と、食品加工の担当らしい。
畑の案内をしてくれるのは、クリスヴェリンという淡黄緑髪サイドポニテの乙女エルフだ。ここの畑の管理をしている。
耕したり収穫したりするのは、手のあいている他のエルフも手伝う。
町から来た輸送隊のネージェとディアンも、よく手伝っていたそうだ。彼女たちはもともと農村の娘だから農作業は手慣れたものだったらしい。
野菜の畑があり、小麦畑があり、綿花畑や、麻が茂っていたり、薬草か何かよくわからない植物の畑もある。
特に、稲の生えた水田なんかを見ていると、ここが木の上なんて信じられなくなる…。
その奥に、甘い黍の畑が広がっていた。
「うわ…! また成長してるよ…」
レイリアが訪れるたびに、目に見えるほどに大きくなってゆく…。
「ここではお野菜も、麦も、お米も、よく育つのよ。
大樹の恩恵を受けているから、大きくなるし、外の世界よりずっと早く育つの」
淡黄緑ポニテの素朴なエルフ娘は、そう説明する。
「確かに…」
それはこの背丈よりもずっと高くなった黍を見れば、一目瞭然だ。
そこの横に、精製を行う施設が作られていた。
火竜族の妹分、ネリアンが砂糖の精製に詳しく、ここに来た当初から作成にかかっている。
精製小屋の中では、既にかなりの量の砂糖が、袋詰めにされていた。
「砂糖、問題なく作れてる?」
砂糖に関して、クレージュから念を押されているレイリアは、しっかり妹分に聞き取りを行った。
「ええ~…お砂糖はいっぱいできるんですけど~…袋が足りないんです~」
ネリアンが上げる課題は砂糖ではなく、入れ物の袋のほうだった…。
「麻もいっぱい植えてるから、もう少しすれば袋も作れるわよ」
畑担当エルフのクリスヴェリンが教えてくれた。
つまり、根本的には問題はなさそうだ。
今回だけでもかなりの量を販売に回せそうだ。
先のことは、ここに来たユナたちにも、袋作りを手伝ってもらえばいい。
その隣の酒の醸造所は、樹の虚のようになった部分に入ってく感じだ。
こちらはもうひとりの火竜族の妹分、ガーネッタの得意分野だ。
「姉御! 飲んでみて?」
ガーネッタが小さなグラスで砂糖酒の試飲を勧めてくる。
レイリアはいつも店で飲む感じに、小さなグラスを傾け、ちょっと口に含んだ…
レイリアは酒にうるさい。
それはつまり、口が肥えているということだ。
「ん…割といい感じじゃあない?」
そのレイリアが褒めるのだから、上物、という訳、なのだけど…
「まだ熟成が足りない感じ、かなー? もっと味に深みが出るはず、なんですよー」
一緒に飲みながら、ガーネッタはちょっと物足りない感想を述べた。
「いや、これでも充分なレベルだよ」
レイリアは故郷のレパイスト島で飲んだ砂糖酒の味を思い出していた。
巫女だった頃、グィニメグ神の祭事に使う酒を…こっそりと、だ…。
レパイスト島では量が作れないので、熟成を待たずに祭事に使うことになる。
でも、あの程度の熟成の砂糖酒でさえ、大陸に運べば、かなりの値がつくのだ。
ただ、砂糖酒は太陽神グィニメグの祭事に用いる重要な物なので、大量には輸出できないという事情があるのだ。
だからこの大陸の人間は、海を越えて南のアルガナス大陸から砂糖や砂糖酒を運んでくる訳だけど……その海が危険極まりない…。
その海域には、出会うと全滅確定の海龍はじめ、危険な大型生物が目白押しだ。
砂糖や香辛料には命がけの代金が上乗せされるので、砂糖酒は大陸では貴族様くらいしか飲めない高級酒になってしまう訳だ…。
しかも、ガーネッタが言うように、もっとさらに熟成した物を作れるとしたら…?
それがこの近場で作れる、となったら、大儲けは間違いない。
クレージュはお金を貯める為に稼ぐのではなく、みんなの生活を豊かにするために稼ぐ事を考えている。
だからクレージュに世話になっているレイリアも、その手助けをする努力が必要である…。
まあつまり…
「姉御! 飲み過ぎはダメですよ!」
と、ガーネッタに諭される前に、“商品”を浪費しないように、自制する事だ…。
いい酒があるのに飲めないのは、レイリアにとってはどんな難敵と対峙するよりも厳しい…。
一応、今の熟成段階での砂糖酒を数本持って行って、クレージュに判断してもらう事にしよう、とレイリアは決めた。
「ここでは短時間でお酒の熟成が進みます」
プレーナというマスカット色の波型に広がる髪のエルフ乙女が、お酒の醸造など食品加工の担当だ。
この醸造所では主に果実酒の醸造を行っている。
他にも、魔獣のロース肉で干し肉を作ったり、なかなかの挑戦家だ。
「牛を飼ってチーズを作ったりするのも良さそうだね」
レイリアは、ここならどんなチーズが作れるか、とか考えている。
もちろん、お酒の当てだ。
「? なんですか? チーズって…?」
「あー…今度持ってきてあげるよ」
エルフの喜びそうなものは、まだまだいっぱいありそうだ。
ガーネッタとネリアンは喜々として仕事に励んでいる。
この二人の妹分は、鍛冶屋での仕事は今ひとつだったけれど、ここでの仕事は生き生きとこなしている。
「う~んとねー…ここの果実は、育てるという感じじゃなくってー…自然に成るのを採る感じだから~…だから、数を増やすのが難しいの~…」
そう説明するのは、果樹園の担当エルフのスヴェン、
黄緑髪ウェーブヘアがどこか炎の揺らめきを思わせる、並外れた美少女エルフだ。
レイリアは今度は、果実酒についての相談をしていた。
これもクレージュからの指示である。
前回、アングローシャの商会で一番高い値が付いたのが、果実酒だったらしい。
「まあ、数が増やせないんじゃあ、果実酒は諦めかな…」
果実を他の目的で欲しい人もいる…
まあ、スィーツ中毒のアルテミシアの事なのだけれど。
「あ、でも~、月に一本か、二本くらいなら~」
「うん、できるよね」
果樹園担当のスヴェンに、加工担当のプレーナも、月に一本、時々二本なら作れる、という意見だ。
“一本”、というのは、“それしかない”、ということだ。
つまり、その一本には、かなりの価値がつく事になるだろう。
値が上がったところで、二本売る。
そういう売り方もありだ。
「一本分取っておくとしても~、あと一本は用意できますね~、果実酒~」
自分用と取っておく、というのは、生産者の役得みたいなものだ。
「アタシも飲みたいしねえ!」
レイリアは前に来たときに、一度飲んでいる。
「あ、わかります~! それ~ …あとでこっそり一杯やりましょ~!」
「あ、私も! …いいの隠してますから…」
二人のエルフは小声でちょっと付け加えた。
レイリアのこちらでの飲み仲間ができそうだ。
糖酒のほうが数的に考えて、商品として期待できそうだから、果実酒は月に一本か二本でも問題ないだろう。
フローレンは村の中を見て回っていた。
大樹の中で気分が落ち着くのは、自分の中にある花妖精の血のお陰だろうか。
自分だったら、ここで花を育てる、とついつい思ってしまう…。
自然に咲いている花もあるけれど、自分で植えて育てるのはまた違う。
この村を見て回りながら、店の女の子たちの姿を重ねている。
先に誰をここに連れてくるか、どういう仕事をしてもらえばいいか…
それを考えるのが、フローレンの役目だった。
今回は、ネージェとディアンが、輸送隊メンバーとして一旦フルマーシュに戻る事になる。
チアノ“部長”は残って商用の品の管理と、あとから来る子たちのまとめ役、
火竜族のガーネッタとネリアンは、残って砂糖関連の仕事だ。
そしてユナたち八人も、ここでの必要に応じた仕事を、それぞれ手伝うことになる。
まず必要なのは、みんなの食料を生産する事だ。
山中で出会ったニュクスの一家も協力してくれるし、二人のちびっ子もお手伝いする気は満々だ。
みんな、もうエルフたちとは仲良くなっている。
ここで暮らすエルフたちの生活を崩さないことが前提だったけれど、話す感じを見ていると、お互いに教え合い、満たし合って暮らしていけそうな感じだ。
次の便で、フルマーシュ孤児組のリマヴェラたち四人と、食堂の母娘三人がこちらへ来る予定だ。
他にも何人かが来ることになるだろう。
そのメンバーの提案を、フローレンが任されているのだ。
フローレンの人を見る目の正確さを、クレージュが買っているのだ。
大樹の下の森で一緒に狩った魔獣を抱えて、ユーミとアルジェーンが戻ってきていた。軽量化要員として、アルテミシアも一緒だ。
今夜はまたあの魔獣ステーキで宴会だ。
明後日にはまた出発。
忙しくなる。
しばらくはこのエルフ村とクレージュの店を往復する暮らしになりそうだ。




