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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第6章 商業都市アングローシャ
62/139

61.~~リルフィと実践魔法の授業~~


リルフィは今日も…

夢を見る日も見ない日も、同じように朝を迎え、同じように目を覚ます。



あの黄色い髪の“ひよこちゃん”は今日も顕在で、お互いに大きく手を振って朝のあいさつをした。



窓際の魔導書(グリモワール)


季節が変わると朝日の光の感じも変わる。

それに合わせて、表紙の謎金属のメダルの、その虹色の輝きもちょっと変わったような気がする。


そしてその周り、円環に並んだ三つ目の紋様にも色が(とも)っていた。

太陽神グィニメグの紋様だ。

炎と光の神であり、創造神でもある。


ルーメリアの(こよみ)の上では、三番目の月の守護神でもある。

その紋様には、明るい炎のようなオレンジの銅の色が点っていた。


季節的には、やや温かさが増してくる季節…

太陽神の月…にもかかわらず、山間部では雨が多くなる時期でもあり、農耕にとって恵みの雨になる。

帝都ルミナリスではそうそう雨は降らない、けれど昼夜の気温差には気をつける季節だ。


今日のリルフィは…

薄青(アクア)のシャツと藍色(インディゴ)のロングパンツ姿。

冷えた時対策で、上から長袖の薄いカーデガンを羽織る。


今日は体を動かす授業があるので、その衣服の下に白いレオタード系ボディスーツを着込んでいる。

リルフィは、その実践魔法の授業が、毎週、楽しみなのだ。



着替えが終わって、カーテンを閉めて…さあ、学園へ。





「おはようございます!」

リルフィのお家の前で、二人の女性兵士が歩いてくるのとすれ違った。


「あ、リルフィちゃん、おはようございます」

「リルフィちゃん、おはよう…」


この第26区の女兵士、マリエッタさんとナタリアさんだ。

お二人とも同じ歳で、お二人とも入隊してすぐにお子さんを産んでいる。

二人ともまだ二十を過ぎたくらいだし、そうと知らなきゃ子供がいるとは思えないカワイイお姉さんたちだ。


そのお二人の娘さん、ルーシェちゃんとフェルアちゃんは、今年から幼年学校に通っている。

今日はお母さんたちが朝からお仕事だから、女兵士宿舎の保母さんが、娘さんたちの通学までの対応をしているはずだ。


二人の女兵士…

兜の後ろから背中に流している、長いストレートの金髪と、少しウェーブのかかった黒髪を優雅に揺らしながら、中央通りの公園広場のほうに向かって歩いていく、魅力的な後ろ姿。

兵装のレオタードから半分くらいこぼれる丸っこいおしりが、歩く度に左右に揺れて、なんとも可愛らしい。



帝都ルミナリスの女性兵士さんたちが着ているレオタードの色は、日毎に変わる。


今日の色は、赤を基調とする朱と橙、それに黄と黒の混じった(ホムラ)模様は、今日が“火”の曜日である事を示している。



ヴェルサリアよりももっと古い時代から、一週間は七日と決まっている。


一説には、その頃世界の多くを治めていた妖精王が、七日交代で異なる種族の妖精の女兵士たちを侍らせたという伝説がある。

その親衛隊の女兵士たちは、七つの組に別れ、毎日交代で妖精王の守護を担当したという。

妖精の女親衛隊は、それぞれ日毎に違う色に統一された衣装を着ていたらしい。


古代ヴェルサリアでも、女性兵士たちが衣装の色で曜日を知らせる習慣があった。

このルーメリアでも、魔法技術の発展とともにその風習を復活させる事となり、

女性兵士たちの着るレオタードは、自動的にその曜日の色に変わるのだ。



週の七日の日分けは、魔法学の中の元素学における七大元素に基づいている。すなわち…

風、火、水、樹、鉱、闇、光


女性兵士さんたちの衣装が赤色系な今日は火の曜日という訳だ。




リルフィが女性兵士さんの後ろ姿を見送っていると…

「リルフィおねえちゃ~~ん!」

と、毎朝お約束の子が…


アイシャちゃんは、いつもどおり大きな胸を揺らして走ってきて…

…言うまでもない。

また朝から治癒魔法の出番だ…。


いつもの気を送り込む治癒魔法…


気の魔法を扱う魔法使いは基本的に、七大元素からではなく、属性学による九大属性の“気”系統の習熟を目指す者がほとんどだ。

魔法ではなく、身体で体得する技にも、この“気”を扱う武術系統、流派が多く存在する。

気の系統は素手での格闘術と相性が良く、気弾や、気砲、気功波、気功爆発などの攻撃技を繰り出し、あるいは自己強化や治癒など、気を扱って行うこともできるのだ。

ちなみに武術による技は魔法と違って、身体に魔奈(マナ)回路を持たない男性でも修業によって体得が可能だ。


今リルフィが使った治癒魔法の場合は、七大元素の“光”系統で、気を扱っている。

光元素による気を掛ける治療術は、一般的な治癒魔法だ。

ルナル地方のラナ教などは古来より、由緒ある光系統の魔法をもって、信徒たちに気による癒やしを与えている。





さて、リルフィ待望の実践魔法の授業時間。


この授業を受けるのは、基本的に女の子ばかりだ。

男性は身体に魔奈(マナ)回路を持たないので、魔法に馴染まない、というのは魔法学における第一歩目の常識だ。

が、実は幼少の頃から魔法修行を続けている男の子は、女性同様に魔奈回路が構築されている。だから魔法を扱うことができるのだ。

ただし、女性用に作られている魔法装備などは着用しても効果を発揮しない。

それは…ふくらむべき場所がふくらんでおらず、ついてはいけない場所についている…つまり身体の構造自体が異なる為だ…。



リルフィは上着とズボンを脱いで、白のボディスーツ姿になっている。

朝会った女性兵士さんたちと同じような形状のレオタード衣装。

胸元はちょっと見せ、おしりも半分くらいは見せている。

色っぽいように見えて、実はこの衣装は、脚の動きも阻害されない、機能的な衣装なのだ。


ミリエールは、胸元を派手に見せたビキニ風の藤紫のレオタード、

メアリアンも、大胆にお尻全出しの空色のレオタード、

キュリエは、フリル飾りのミニスカートつきピンクのレオタード、

ファーナは、キュリエとお揃いの新緑のレオタード、


一緒に授業を受ける別クラス、魔法学科の子たちも、同じような格好をしている子が多い。

中にはもっと大胆な格好をした女の子も多数…


リルフィはなんだか、昨日の夢で見た、女兵士たちの鎧選びの光景を思い出す…。





実践魔法とは、いわば戦闘用の魔法の事だ。


現在、学園で教えられる魔法は、学術魔法と呼ばれる。

学術魔法は歴史が古く、その原型は古代ヴェルサリア時代に完成したものだという。


ルルメラルア王国時代は魔法文化が廃れていたのだが、ルーメリア帝国樹立とともに魔法に関する研究が促進され、旧ヴェルサリアの魔法の研究が国家主導ですすめられた。


その結果、学術魔法や付与魔法の技術も、時代を経るごとに高くなってきている。

それでも古代ヴェルサリアの魔法技術には、遠く及ばないのだが…。




女子生徒たちが、教授やその助手たちの指導で、魔法の腕を磨く。

もちろん魔法系の教授たちも全員女性だ。


さすがに魔法学科の女子生徒たちは二年生ともなると、簡単な攻撃魔法くらい難なく発生させる事ができる。

この子たちの多くが、この先、魔法武官を目指したり、あるいはそれぞれの得意系統の魔法を生かした魔法系職業に就くのが目的だ。


炎や、雷、あるいは気による矢か弾丸を放つ子がほとんどだ。

九大属性の中では、この三系統が扱いやすいと言われる。

その三つは、比較的簡単に高威力を出しやすい、正の方面の力を扱う系統だ。


その逆に、九大属性には、“氷”や“虚”など、負の方面の力を扱う魔法もある。

それらは火や雷や気に比べると扱いづらい。

負の力には限界があるらしく、それは即ち威力の限界を示す。


そのためにやや不人気である。

あまり熱心に開発されないのも事実だ。


ただし、氷の系統、すなわち冷却魔法は、体系として確立していて、専門とする一派もある。

冷やす魔法は戦闘よりも、それ以外の事に需要が多い。

暑い時期などに空間を冷やしたり、高級食材の保存にも応用されている。

高い熱を出す病の治療にも持ちいれられる。


“虚”とはつまり、消失の魔法だ。

一部、この系統が大好きな男子はいるものなのだけど…女子たちには不評だ。

過去にルーメリアを怖れさせた、闇の教団が用いていたとかで、あまり印象が良くないらしい…。

なので人気はない。


だが、“虚”は“雷”の系統の対局にある。

ちょうど“氷”と“炎”のような対局だ。

そのため、対雷防御に転用される目的などで研究される事はあるようだ。



炎は赤、雷は青、気は金、と色で示される事がある。


そもそも魔法学における「九大属性」とは、最強の種族と言われる“龍族”に帰結するものである。

属性学における頂点の存在が龍族であり、それは九色の龍族の吐く猛息(ブレス)に象徴される攻撃だ。


すなわち、九大属性は、攻撃魔法を軸とした系統、という事になる。


気の系統などは、そこから派生し、強化や治癒に用いる魔法や技も作られているが、それ以外の九大属性の系統は、大半が攻撃のための魔法や技であり、言い換えれば、主に戦闘に用いられる系統だ。



それと比べると、七大元素は、攻撃魔法に限らない。


各地に残る伝統的魔法や技も、七大元素に基づいているものが多い。


ラト・ショコール地方は昔から水系の元素魔法をイーファ神の恩恵として使用し、

レパイスト島ではグィニメグ神の教義における術として火系元素の魔法術や武術が、

ルナル地方では、アーヴィル神の教義による光系元素の魔法、主に癒やしの術が広く用いられている。

東のラファールでは、夜の神リシュナスの闇系元素の技が、暗殺術に用いられたりする。


七元素を軸とするのか、九属性を軸とするのか、それによって行使できる魔法や技も変わってくる訳だ。



魔法学科の女子生徒たちは、教授の指導を受けながら、詠唱を早くしたり、精度を高めたり、威力の高いものを放ったり、または全く上位の魔法に挑戦していたりする。

魔法の研鑽に必死だ。


総合学科のリルフィたちのように、片手間に魔法を学んだりしている子たちとは違う。


魔法武官を目指す女学生たちは、九大属性のうち一系統を極め、その総合威力を高めようとしているのだ。

つまり、戦士や武術家が、強くなろうとするのと同じ事をしている。




ミリエールも、メアリアンも、キュリエもファーナも、威力の高い魔法には興味がない。

そもそも戦闘魔法を学ぶつもりはあまりないのだ。

指導を受けることで魔法の使用適正を上げ、生活や活動に魔法を活かそう、という程度の考えである。


だからこの子たちは、七大元素に基づいた魔法を練習していた。


ミリエールは、芸術の創作に役立つような魔法を、今は樹系や鉱系を中心に、

メアリアンは、衣服やモデルの仕事のために、主に水系、風系の魔法を学び、

ファーナは、彼女の行うスポーツに関連がある魔法を、現在はなぜか闇系だ…。


キュリエはあまり系統に(こだわ)らない。

わりと万能に色々な魔法を便利に使う感じだ。

しかも、系統を絞っていないのに、他の三人よりずっと上手く使いこなす。

この子は魔法素養がかなり高く、魔法学科への移籍を勧められたりしている。本人はそのつもりはない様子だけれど。



リルフィは…やっぱり系統に拘らない。

しかも、この五人の中でリルフィだけは、戦闘魔法にも興味ありありな感じだ。

魔法学科の女子生徒に混じって、攻撃魔法の実践練習に一生懸命だ。


しかも、系統を絞ることもなく、七大元素の系統でも、九大属性の系統でもお構いなく使いこなす…。

それも、魔法学科の女学生でもあまり使う子がいない、白=氷の系統や、黒=虚の系統の魔法まで放って、周りを驚かせている…。




魔法学の女教授が、魔法について教えてくれる。


一般に、強力な戦闘魔法ほど、詠唱などの準備時間が長くなる。

威力はないが、完成の早い魔法を使うほうが有利な場合もある。

優れた魔法使いほど、相手の得物や距離など、その場の状況を読み、即座に使い分ける。

補助的な魔法を有効に使いこなせるようになれば、さらに幅が広がる。


リルフィはその話を聞きながら、ずっと考えていた。

夢の中の魔女アルテミシアの事だ。


彼女は状況に合わせて魔法を使いこなす。

それも、即座に判断して、だ。

もちろん七大元素も、九大属性も関係なく使いこなしている。


リルフィも、どうせ魔法を覚えるなら、アルテミシアみたいな魔法使いになりたいのだ。


(そういえば…)


この魔法学の女教授…着ているものは、黒のレオタード系のボディスーツで、前は股間部に激しく食込み、後ろはおしりをかなり露出している…。

豊かな胸元も、見せ見せだ。

そして頭には つばの広い三角帽子を被っている。


つまり、夢の中のアルテミシアと、そっくりな衣装なのだ。

もちろん、その美貌や声は、遠く及ばないけれど…。

多分、魔法使いとしての実力も…アルテミシアには遠く及ばない気がする…。





さて。

授業のあとは休憩時間。

リルフィたちはレオタード衣装のまま、教室に戻ってみんなでスィーツの時間だ。


「お…リルフィの手作り~! 今日はなにかな~?」

「こ、これは…なんと、七色のゼリーじゃないですか!」

「…きれい…」

「おいしそうですね~~!」


七色の硬めなゼリーに、同じ色のキラキラのクリスタルシュガーをまぶした、宝石のようなゼリーだった。

ミリエールとメアリアンは「「もう待ちきれない!」」という感じだ…。


封を開けるとやっぱり、二人は食べるペースが早い…。


七元素ゼリーは好評だ。

今度は九属性にも挑戦しようかな、とかリルフィは考えている。


その五人の女学生の姿を、男子生徒たちはみんな揃って、じーっと見つめていた…。


…実践魔法の授業から着替えていないせいかもしれないけど…




急いでUPしてしまったので、見直すとけっこう雑でした…内容も薄いのでいつかこっそり書き加えよう…


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