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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第6章 商業都市アングローシャ
61/138

60.花と月の紋章


突如、店主クレージュの授爵を祝う事になった宴会の後…



閉店後。

総出で片付けを終わらせにかかる。

店内にたくさんある鉄のバケツ。

その中に入っているのは、むにむにっとした液体だ…。


女の子たちが、果物の皮や肉の骨など、皿の上に残ったものを鉄のバケツの中に放り込んでいく。


このむにっとした液体は、正確には液体ではない。

古代ヴェルサリアから伝わる技術で作られた流動型人工生命体、


通称、“スライム”


実に多種多様なスライムが存在するとされているが、このルルメラルア王国はじめ旧ヴェルサリア圏で一般に使用されているのは、主に有機物処理用のスライムだ。


ルルメラルアにおいて、単に“スライム”と言えば、この有機ゴミ処理用スライムの事をさす。

それほどに人の生活に欠かせない物になっている。


廃棄物処理用スライムは流動型だけど、一つにまとまって丸まる性質があるので、飛び散る事もない。


通常は鉄のバケツに入れて置いておくのだけど、アーシャみたいな娘がドジって転んでバケツを倒してしまっても、飛び散らないから大丈夫。

そのままスライムを抱えて、すぐバケツに戻せば何事もない。

ある程度以上の大きさの物は溶かせないので、放って置いても床を溶かすような事もない。

生ゴミから布ゴミ、枯れ草や虫の残骸、はてには排泄物まで処理できる。

溶かせない物も幾つかある、主に石や金属、など。

溶かせないものが魔法的に定義されているらしい、けど基本的に人畜無害。


数日放っておくと水気が抜けて、しぼんで固まってしまう。

凝固しても軽いので、持ち運びも簡単だ。

長い期間使わない時は、乾燥状態にして置いておくだけでいつまでも保存できる。

水につければすぐに元通りだ。

そして以外と値段もお手頃なのだ。



古代ヴェルサリア時代に作られ、何十回と品種改良を加えられているため、非常に使い勝手が良い。そして人々の生活に密接に結びついている。

スライムこそが古代ヴェルサリア最大の発明とされている所以(ゆえん)だ。



厨房の奥の一角で、食器洗いをしている。

水で洗うとすれば、いちいち裏の井戸に汲みにいかなきゃなので、お店の食器を全部水で洗っているときりがない…。

そこで、こういった飲食店で使用されるのが、食器をキレイにする洗浄用スライムだ。


こういった町に存在するスライムは、生き物や人体には全く無害だ

が…

抱き心地がいいからといって、抱いたまま寝ていた女の子が、翌朝には裸になっていた、なんて話も珍しくない。

人体には安全とは言え、取り扱いには注意が必要なのだ。



「スライム学はね、奥が深いのよ♪」


アルテミシアは片付け作業を魔法で手伝いながら、女の子たちが興味を持つスライムについて話をしている。


魔法の系統の中には、スライムを専門に研究する系統もあるという…。


薬用健康型スライムとか、観賞用スライム、、建材用スライム、

強い酸性や可燃爆発性を持つ、兵器用スライムなども存在したという。


「暗闇で光るスライムランプとか、キレイよ~♪

 他にも、ふんわり柔らかな、スライムクッションとか、スライムふとんとか…

 あとは、スライム風呂とか、あったらしいわよ♪

 お肌がすべっすべになるんだって♪」


「「「へぇ~~!」」」「キモチ良さそう~!」


「それにね…♪

 古代には、熟成用スライムを使った食材加工技術があってね…

 それでできるのが、幻のスィーツの材料なんだって~…♪」


「ど、どんな味なんだろ…?」「「たべてみた~い!」」


最後はやっぱりスィーツ談になるところがアルテミシアだ。


そんな会話をしながらも、後片付けは進んでいく。





さて、そんな家庭用スライムを駆使して後片付けを終われせいよいよ女子会だ。

女子のうち五人はエルフ村にいるので、全員揃って、といかないのは残念だけれど…。


この女子会ための料理は、お客さんに出す分とは別で作り置きしてあった。

料理は温かく、飲み物はよく冷えている。

アルテミシアだけでなく、ウェーベルやアーシャが温度操作系魔法を使えるようになったので、保存場所が少なくても、こういう事ができるのだ。

徐々に魔法を使える女子が増えてきている。


食事会の前に、まずは新しいメンバーの紹介と挨拶が行われた。

火竜族(サラマンド)のルベラとコーラー、料理人のキャヴィアンと二人の娘トリュールとフォア、そしてアングローシャから来たハンナだ。




食事会の後には、明日エルフ村に向けて出発するメンバーから、お別れの挨拶があった。

お別れと言っても…、またすぐ後にここを発って、あちらで合流するメンバーもいる。

それにあちらに行っても、行商でこっちに戻ってくるメンバーもいる予定だ。

そこまでの別れという訳でもないのだけど…。



そして、大部屋から荷物が運ばれた。

アングローシャで仕入れてきた物だ。


その女の子たちの前に広げられたのは…


「うわぁ!」「よろいだ!」「カワイイ!」「やった~!」


アングローシャで仕入れた女の子用の防具だ。


露出部分の多い、通常ではまず役に立たない、形だけの女子用鎧だ。

だけど、守りのアクセサリを持つ、ここにいる女子たちにとっては非常に相性が良い鎧だ。


その論理魔法装備の指輪は、新しいメンバー、火竜族(サラマンド)の二人と、料理人母娘三人、新人のハンナにも既に配られ、ここにいる全員が既に持っている。


ただ、ここで鎧を受け取るのは、戦闘訓練を受けている子たちだけだ。

年上組のカリラ、セリーヌ、クロエ、キャヴィアンは武装しないし、

プララ、レンディ、フォアのちびっ子三人は、まだ胸とかサイズが合う感じではない。

もちろん冒険者組も、自分の装備を持っているので必要ない。



素材は大半が革製のようだ。物によってはその上から金属で補強してある。

鎧の形状は様々。

胸元を強調した胸当てが多い。この形状だとお腹は露出する。

胸は大きく見せてるけど、お腹まで覆う上半身鎧もある。

中には…本当に胸と股間部の重要な部分だけ、というものまで…


数としては胸防具のほうが多く、腰部のみの物は少ない…。

その分、着合わせできるように、皮のミニスカートや、見せれるパンツ、ボディスーツなども沢山ある。



だけどさすがに、大貴族のアングローシャ領主が、自分の抱える女兵士たちに着飾らせた鎧である。その中古品に当たる訳だけど…とてもお古とは思えない。

外観はどれも美しく、また女性の美しさを引き立てるようなオシャレな(よそお)いである。


アングローシャで見かけた領主私兵の女子兵士たち…、あんな綺麗な乙女たちが肌見せ見せの薄い格好でしかも十人からの集団で歩いていたら、道行く男たちの目を引き付けないほうがおかしい。


そして今から、ここにいる女の子たちに、その華麗な格好をさせるのだ。



女の子たちは手に取って、自分の好みとサイズの合うものを探している…


ここにいない五人の分もちゃんと残してある。

チアノの分は海歌族(セイレーン)仲間の三人が、ディアンとネージェの分は、彼女たちの体型どころか胸やおしりのサイズまで知ってる同じ村出身のウェーベルとアーシャが、選んでいる。


店の商売担当カリラ、料理長セリーヌ、酒場担当クロエ、そして食事担当キャヴィアンたち大人組は戦闘訓練もしていないので鎧は選んでいない。

と、プララ、レンディ、フォアのちびっ子三人も、まだ鎧が大きすぎる。





全員が選び終わったら、いよいよ試着に入る。


…服を脱いで直接着ける子も多いので、女の子たちはちゃんと窓に背を向けて着替えている…。


ユナは尊敬するフローレンと似た形状の、高露出セパレートタイプを選んでいる、ウェーベルは胸当てと、スリット入りのロングスカートで大人っぽく。

ミミアはちょっとふくよかだけど、胸元派手見せな大胆なビキニスタイルを選んでいるし、メメリはこちらも大胆にお尻全出しのボディスーツと上半身鎧との組み合わせだ。

キューチェは飾りの多い軽い胸当てにフリル付きミニスカートという可愛らしい感じで、親友のハンナはそのほぼ色違いの鎧姿だ。

海歌族(セイレーン)女子たちは、ショコール兵時代の兵装と同じ形式の、胸当てとボディスーツの組み合わせを選んでいる。


他の子たちも、着合わせは様々で、肌に直接着けている子もいれば、恥ずかしがりの子は薄い服の上から胸当てを着けている子もいる。

上だけ鎧で下はミニスカートや見せパンツという組み合わせも多い。


そうやって全員が鎧を選び終わった。

これからは訓練や行軍の時は、同行する女の子たちはこの鎧を着て行動することになる。


やっとこれで女の子たちが、戦士らしくなった。

やっぱり見た目も重要である。


守りのアクセサリもあって、実はそっちのほうが防御性能が高いのだけど、

やっぱり鎧を着ることで、女の子たちは自分が戦士であることを自覚する。

そういうものだ。

女の子達の意気も上がっている。





鎧を買ってくれたクレージュに対して、始めて武装した女の子たちが、口々に感謝の意を述べている。


「いい感じね、みんな、似合ってるわよ!

 みんな、どう見ても、女兵士、って感じになったわね!」

クレージュも満足そうだ。


「うん、いい感じ! やっとらしくなったわね!」

フローレンも、訓練担当として、彼女たちの晴れ姿を見る思いだ。

女の子たちに合った鎧を選ぶアドバイスをしていた。


「やっぱり、見て呉れって重要よね♪」

アルテミシアも先程から、一応魔法を使う子たちには露出による魔奈(マナ)循環の話とか、体の動かしやすさとかを、他の子よりも念入りに見てやっている。





女の子たちが全員、鎧を身につけた。ただ…


「格好いいんだけど…なんかみんなバラバラよね」

フローレンが気にかけるまでもなく、それは全員が何となく思っていたようだった。


「そう。だから統一感を出すために、ひとつ決まり事をつけようと思います」

クレージュは武装した女の子たちに対して、説明を続ける。


「兵団活動のときは、目立つ場所に、これをつける事。

 それをもって私達の制服とします!」


クレージュの胸元に輝いているのは…

花の形状に並んだ赤ピンクの宝石と、銀色の三日月の組み合わせ紋章のブローチだった。

このアクセサリの最初の形であった、銀蔦にピンクハートの指輪にどこか似ている。


「目立つ場所ならどこでもいいから…」

と、ペンダントに変えたり、髪飾りにしたり、耳飾りにしたり、次々に可変して見せた。


「活動の時は必ず、このデザインに変えて、装備する事」


あの可変アクセサリの中に、花と月をあしらった紋章があった。

クレージュは迷わず、それをこの組織のシンボルに選んだのだ。


  花と月


クレージュはそれをイメージに選ぶことに迷いはなかった。


女の子たちは次々に、その花と月の紋章のアクセサリに変えて、鎧の上に飾ったり、露出度の多い子は、首元や耳や腕に飾ったりしている。

年上組やちびっ子たちも、アクセサリを花と月の紋章に変えて、身に飾っている。

フローレンやアルテミシア、レイリア、ユーミ、レメンティ、ラシュナス、冒険者組も含め、ここにいる全員が、一つの紋章で統一された。


「おおー!」「みんなお揃いだー!」「みんないっしょだよー!」

その一体感が、ここにいる女子たちを大いに盛り上がらせた。



クレージュは、彼女たちの組織の、その名前も既に決めてあった。




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