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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第5章 南街道の行軍
53/138

52.~~帝都を彩る女兵士と女戦士~~

今回けっこう好き嫌い分かれるところ、かも…

タイトルは、女兵士(ハイレグアーマー)女戦士(ビキニアーマー)としたかったのですが…。


ルーメリア帝都ルミナリス


リルフィ、武芸大会の帰り道



あの女剣士さんは、やっぱり強かった。

おっきな男の戦士相手に、ほとんど一方的な戦いで勝っていた。


やっぱりどこか、夢に出てくる花の剣士フローレンの姿と重なる。

あの舞うような美しい戦い方は、フローレンの動きを彷彿とさせる。

男の見物者たちは、その美しさ、妖艶さにものすごい歓声を上げていた。


調べてみたら、ルクレチアの女戦士だという事だった。

今自分が着ているのと同じ、姫紅鉱(エレミア)製のビキニアーマーは、現在でも軍神シュリュートに仕える巫女兵、あるいは仕えていた戦巫女が身につけるものだ。


(と、言うことは…

 軍神シュリュートの信者じゃないわたしが、これ着てると…マズい!?)

なんて考えが浮かんでしまう…


(あ、でも…軍神信者じゃなさそうな女の子が衣装遊び(コスプレ)とかしてたし…

 今だけは、大丈夫、よね! 武闘大会の…いえ、この軍神の月の間くらいは…)


と、何の根拠もない事を考えたりして、自分で納得してる…。





第4城郭と第5城郭を(へだ)てる城壁の広い門、その下のちょっと短いトンネルを抜ける。

壁の下だけど、大きな軍用馬車なんかも通れるほどの幅と高さはあるので、狭い感じはしない。

光石の明かりに照らされているけれど、ちょっと薄暗い。

トンネルを抜けるとリルフィの住む第5城郭だ。



帝都の中央通りだから、行き交う人や馬車の往来が多い。

もう夕方だから、なおさら多い。

買物帰りや仕事帰りの人が行き交う時間だ。


時々、軍用や企業所有の魔導馬車なんかが走っているのも見える。

帝都の中央通りならではの光景だ。



リルフィの家の隣りの公園広場が見えてきた。

毎朝、幼年学校に通うアイシャちゃんたちの登校班の集合場所だ。

アイシャちゃんは、今朝もコケた…。

リルフィのこの鎧姿が珍しくて、喜んで走ってきた感じで…早く走った分、いつもよりケガがちょびっと大きかった…。

もちろんリルフィが治癒魔法をかける…毎朝同じ事をしているのでもう慣れている。


ちなみにその広場の大通り側の隣りは、この第26地区を担当する軍の分署、

つまり兵隊さんたちがいる大きな建物だ。

そちらから兵士の一団が歩いてくるのが見えた。

先頭にいるのは、女性の兵士だ。



ちょうど公園の前で声をかけられた。

「あら? リルフィちゃん…? おかえりなさい」

先程の女性兵士だ。


「あ! ユウナさん。こんばんは!」

もちろん、リルフィもよく知っている。


ユウナさんは、リルフィの家があるこの区画の兵士長さんだ。

この第26区には女性兵士が八人いて、その隊長さんがこのユウナさん。

男性の兵士はたくさんいるので、あくまで女性兵士の中での隊長さんだ。


「ごめんなさい、そんな格好してるから、遠目にはわからなかったわ」

「ええ、今日、武闘大会に行ってきたから」


リルフィのビキニスタイルの鎧姿を見て驚いていたけれど、

ユウナさんたち、ルーメリア帝都の女性兵士たちも、わりと色っぽい兵装だ。


誰が名付けたのか、通称「ハイレグアーマー」と呼ばれている形状の、女性用兵装。

ハイレグカットのレオタードと、兜と胸当てのセットだ。


女性兵士のこの形状の兵装は、実は相当に歴史が古い。


ルーメリア帝国がまだルルメラルアという王国の頃から、

いや、一説にはその前身のオーシェ王国、またはさらに(さかのぼ)ってヴェルサリア王国オーシェ自治区の頃からの伝統であると言われている。

そもそも、古代ヴェルサリア王国の女性兵士の兵装は、この“ハイレグアーマー”形状であった事は、実際に残っている、数多くの装備から見ても間違いない。


上は胸当ての中央が空いていて、胸が作る谷間がはっきり見える。

特に下半身は、腰回りから細腿に至るまで覆う部分がないので、かなり脚が長く美しく見えて格好いい。

レオタードの前側がかなり食込んでいて、後ろ側もおしりを半分かそれ以上は晒している感じになる。

男の人たちは、女性兵士のこの衣装に、とても魅力を感じるらしい。


肌の露出は多い衣装だけど、女性兵士のその兵装は魔法の装備である。

魔法装備の多くは女性にしか使えない。

学園で学んでいるリルフィには、そういった知識も充分にあるのだ。


そして、女兵士たちのレオタードの色は、七つの曜日によって、それぞれ変わる。

今日の色は、濃青~薄青~水色、

今日は “水”の曜日なのだ。




城壁の門のところを守っていた男性の衛兵は、板金鎧(プレートアーマー)、いわゆる全身鎧を着ていた。

女性の兵士は、衛兵として立つ事はあまりないけれど、そういう時も基本的に兵装は変わらない。


今ユウナさんと一緒にいる男性兵士たちがそうであるように、町中の巡回を行う時などは、衛兵の時と比べると、わりと軽めの兵装だったりする。


一緒にいた兵隊さんたちは、ユウナさんに一礼すると、先にいってしまった。

町の巡回の途中だったのだろう。

今月配属になった新しい兵隊さんもいた様子だ。


ユウナさんがリルフィと話しているのを見て、そこで別れて巡回業務を継続していた感じだ。



兵士と言っても、男性と女性では役割が異なる。


そもそも男性の兵士は、国に所属する兵士であり、将軍旗下の軍に配属されたり、帝都各地に配属されたりする。帝都配属の兵は、基本的に数年で異動となる。


だが女性の兵士は、基本的に自分の出身区画、つまり生まれ育った場所への配属となる。

生活に直結しているので、そこから異動になる事がない。



帝都ルミナリスには、そういった女性の兵士も多い。

大通りの向こう側は別区画だけれど、そこにも何人かの女兵士が歩いていたり、立ち話をしている姿が見える。


女性兵士がいるのは、基本的には、第5城郭内と第4城郭内に限られる。

一部第6城郭内にも少数の女性兵士がいるが、基本的に治安のよい区画のみに限られている。


女性兵の場合、兵士ではあるけれど、戦うことよりも、街の人達が困らないように支援するのが仕事だ。

子供の通学を見守ったり、道を教えたり、落とし物を受け付けるなどの地味な仕事も重要なのだ。


だから住民との対話による聞き取りが重要だし、知り合いの多い生まれ育った区画での勤務になるのだ。

男性の兵士たちがユウナさんを残して巡回に行ってしまったのは、彼女がリルフィという一般市民と会話、という仕事を行っていたからだ。





「おかあさーん!」

兵務局のほうから、ひとりの女兵士が駆けてきた。

ユウナさんの事を呼んでいる。

だけどユウナさんは、その声をかけた女兵士を、厳しく叱りつけた。


「フィリー下士! お仕事の時は、隊長、って呼びなさい!

 何度も言っているでしょう!」

「あ、はい! た、隊長!」


娘のフィリーちゃんは今年軍学校を出たばかりで、まだ女兵士の鎧姿が初々しい一年目の新兵だ。

今月から母親であるユウナさんの部隊で一緒に町の女兵士として働いている。


「フィリーちゃん、こんばんは!」

「あ! リルフィちゃん!」

フィリーちゃんは、リルフィの幼年学校の一年下の後輩に当たる。

中等学校ではなく軍学校に進んだので、ここ数年は顔を合わせることもなかった。



そこからしばらく、立ち話をした。

ユウナさんはリルフィが産まれた頃から、この第26区画で兵士をしているし、フィリーちゃんは幼年学校の後輩だ。共通の話題は多いのだ。



ユウナさんは外見も若い感じで、フィリーちゃんとはお顔も似ている。髪の毛も二人とも、やわらかな甘栗色だ。

だから、こうして二人並んでみると、お姉さんと妹、みたいな感じに見える。


フィリーちゃんは女兵士の鎧姿がまだ不慣れで、というか、胸元が空いていたり、お尻が半分出しな格好が、まだちょっと恥ずかしい感じだ…。


ユウナさんは堂々としてる。

お胸もお尻も大きくて、大人の女性って感じの貫禄がある。

実は若い男の子たちにすごく人気がある、って事をリルフィも知っている。


ルーメリアでは、国家に身を捧げる女性の兵士は、とても尊い存在である。

平和な都とは言え、有事の際には命を懸けて戦う事も無いわけではない。

中には職務中に若くして命を落とす女性兵士もいないわけではないのだ…。

だから女性兵士は優遇され、慕われている。


そして、母と娘が揃って兵士になるのは、最も尊い姿とされていた。

貴族のお屋敷では、母娘の女兵士を私兵として抱える習慣があるくらいだ。



帝都勤務の女兵士は、若いうちに子供を生むケースが多い。

平和な時代とは言え、命の危険を伴う仕事なので、何かある前に子供を産んでおきたい、と考える女性が多いからだ。


真面目で意識の高い女兵士ほど、早くに子供を生む傾向にある、と言われている。

自分の代わりを産んだ事で、死に向き合う覚悟ができる為、とされる。

もし何かあった時も、残された子供の人生はしっかりと国が保証してくれるのだ。


ユウナさんも兵士になってすぐにフィリーちゃんを産んでいる。

産休の間も生活は保証されるし、母親ひとりで育児をしながら兵士を続けられるように、国による支援体制は整えられているのだ。




そうして立ち話をしていると、さらに三人の女兵士が、兵務局の建物からこっちにやってきた。


「あ、リルフィちゃ~ん!」

そのうちの一人、銀髪の子は、フィリーちゃんと同じ歳のランゼちゃん。

この子も、フィリーちゃんと同じ歳だから、リルフィの幼年学校の一年下の後輩だ。


後の二人は、レパイスト島出身のシエーナさんと、ヴァルハガルド地方出身のペメッタさん。

リルフィよりちょっと年上の女兵士さんたちだ。

リルフィとあいさつを交わした後、ユウナ隊長に敬礼をする。


「あ、フィリーとお話中でしたか?」

赤髪のレパイスト島出身の女兵士シエーナさんが、ユウナ隊長にたずねていた。


「あ、大丈夫よ、今から巡回ね? しっかり教えてあげて!」

ユウナさんは厳しい隊長さんだった。

仕事の時は、娘のフィリーちゃんを決して甘やかさない。

でもフィリーちゃんはユウナさんの事を、すごく尊敬している…。


要するに、この先輩の二人が、今から新人を見回りに連れ回すところだった、らしい。

それぞれ二組に別れて、彼女たちは巡回業務に戻っていった。


「「いってきます!」」

ちょっと子犬っぽい焦茶髪のペメッタさんが、銀髪のランゼちゃんと連れ立って行った。



女兵士が集まると、かなり色っぽい雰囲気になる。

全員が、胸元を大きく開けて、長い脚は丸出しで、お尻も半出しな格好なのだから当然だ。

それに兜は被っているけれど、その後部から長い髪を背に流す後ろ姿が、かなり魅力的なのだ。


ついでに、リルフィも今日はビキニアーマー姿なのだ。

女兵士さんの今日のレオタードの色が青系なので、赤いビキニ姿のリルフィはよく目立っていた。



女性兵士たちは、身体のラインがほぼ(あら)わになる衣装なので、その体型を維持する為に、毎日鍛錬している。 

腹部のたるみもなく、脚も細く長く、体型維持は努力の賜物なのだ。

見られる衣装だから、身体のラインを維持するために、肉体の鍛錬を欠かさない。


身体を美しく保つ必要のある高露出度の鎧姿は、女性兵士たちの、身体を鍛える努力を(うなが)す事になっているのだ。




第26区を担当するユウナさんの部隊の女兵士は八人。

残りの三人は、北の山岳のほうからの移民の副隊長フィーナさん、西のルナル地方出身のマリエッタさんと、東のラファール地方出身のナタリヤさんだ。





「リルフィおねえちゃーん!」

今度は元気な声が響いていた。


四軒となりのウェンディさんとアイシャちゃんだった。

大きな袋を下げているのは、買い物帰りのようだ。

今日はよく人に会う帰り道だ…。


で、元気にリルフィの名前を呼んだ娘のアイシャちゃんが、ぱたぱた走ってきて…

またコケた。

「うわぁ~~~ん!!」

「はい、泣いちゃダメだよ~」

と、いつもの治癒魔法をかける。治る。泣き止む。「大好き」と抱きつかれる。

いつもの流れだ。

でもリルフィは、このいつものが、嫌いじゃあない。



「あら、ユウナさん。お久しぶり」

「ご無沙汰してます、ウェンディさん。アイシャちゃんも…」

ユウナさんが丁寧にあいさつしている。


実はウェンディさんも、以前はこの第26区の女兵士だったのだ。

だからユウナさんの先輩に当たる。


双子のレーゼルさん、フィアナさんを育てながら兵士をしていたけれど、

結婚のために引退して、それからアイシャちゃんを産んだ。

リルフィも幼い時に、女兵士のウェンディさんに抱っこしてもらったのを覚えている。



ユウナさんとウエンディさん母娘は、そのまま立ち話をしている。

こういう対話によって信頼関係を築き、情報収集をする事が大事なのだろう。

でもこの二人の場合、先輩後輩で仲がいいから、ただの世間話になってるのかもしれない…


「じゃあそろそろ、わたしも帰りますね」


そこで別れた。

アイシャちゃんは「またあした~」と手を振ってくれている。

また明日…治癒魔法を、ね…。


これで第5章終了です。

諸事情により明日以降は投稿間に合わないかもしれません…

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