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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第5章 南街道の行軍
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51.~~リルフィと武闘大会の女剣士~


ルーメリア帝国 悠久の帝都ルミナリス

帝国(インペリアル)学園(アカデミー)


今日も変わらない、いつもの一日が始まろうとしている…。


今日は、変わった格好をした子がいるくらいだ。


「…あのね~、リルフィーさ~ん…」

「リルフィ…なに着てきてるんでしょうか!」

「リルリル、アタマ大丈夫ですかぁ…?」

友人たちが、驚いたというか、呆れたというか…なんとも対応に困っている…。


その日のリルフィは普通の服装ではなかった。


その形状は、といえば、

…下着


良く言えば、夏場の海岸にいるのがふさわしい、ギリギリな格好、

…いわゆるビキニ水着だ。


その布面積はものすごく少ない…

お胸のふくらみも、お尻のほとんども、豪快に露出…

胸部と股間部の大事な部分しか隠れていないような布面積…

いや、布面積って言うけど、そもそも布じゃない!

赤いけど、あからさまに金属!


つまりリルフィは…

ビキニアーマー、と呼ばれるものを着ていた。


…ここは、学園の、総合学科二年生の教室である。

そんな格好が周囲から浮いている事に気がついているのかいないのか…


「「なんでそんな格好してるのよー!?」」


「なんで、って…? だって、武闘大会があるじゃない?」


「そうじゃあなくって~!」

「なんで、学園に」

「「ビキニアーマー着てきてるのよ!」」


「え~…? だって、武闘大会があるから…」


話が噛み合ってない…。


確かに武闘大会はある。行われている。

軍神シュリュートの月であるこの2月、毎年、帝都ルミナリスでは武闘大会が開催される。

すでに本戦の試合もかなり進んでいて、残り試合はあと数えるほどだ。


武闘大会会場の受付や案内の女兵士のお姉さんたちは、今のリルフィみたいな格好をしている。

まあ彼女たちのは、赤いのと違って、鉄製のビキニだけど…

一応、会場では、今のリルフィみたいな衣装遊び(コスプレ)してる女の子もいる。


だけど、そういう事ではなくって…

「そんな格好で学園に来るのがどうなのか」

ということを、友人たちは言っているのだ…

けど…

どうやらリルフィには、その事が理解できていないと思われる…。


「だって、鎧なんてこれしか持ってないもの!」

ますます噛み合わない方向に話が進んでいる…


「そもそもぉ、リルリル、なんでそんな鎧、持ってたですかぁ?」

ファーナが顔を傾け、ふわっとした金髪を揺らして、興味深そうに聞いてくる。


「なんかね! おうちにあったの!」

リルフィの家の地下室には、色々なものがあるのだ。

あのキレイな魔導書(グリモワール)も、多分あそこにあったのだ。



「だいたい~、なんで今日、いきなりその格好なのかな~?」

ミリエールがリルフィに負けないほど大きな胸をはずませながら、ちょっと顔を寄せて聞いてきた。


「ほら? だって、昨日の試合、すごかったじゃない!」


昨日は放課後に五人で武闘大会を見に行った。

そして、今日もまたいくつもりだ。


かなり高いところまで勝ち進んでいる、女性の剣士がいた。

その女剣士が強く、剣技が美しく、その上美人だったので、確かに話題にはなっていた。

しかもかなり際どい、つまりリルフィが今着てるような鎧を着ていることが、さらに話題性を高めた。


今の話では、リルフィの今日の衣装の原因は、その女剣士の影響であることは間違いない。と、友人たちは理解しただろう…。

でもリルフィの中では、それだけじゃあないのだ。



リルフィの夢の中に出てくる、花の女剣士フローレン



武闘大会に出ている女剣士の姿とは、どうしてもその印象が重なる…。


その女剣士も赤のビキニアーマーに、薄い紅金色の結い上げたポニーテール、頭には兜じゃあなくって、真っ赤なバラの花を飾っている…


夢の中のフローレンたちの活躍にわくわくするリルフィは、

現実世界の、あのステキな女剣士さんの活躍も、とても楽しみなのだ。


今日のリルフィの髪型がハイポニーテールで、赤いバラの咲くようなカチューシャを着けているのも、彼女、達を、ちゃんと意識しているのだ。

ただ、夢の中の花の剣士、フローレンの鎧は、赤い金属エレミア鉱じゃなくって、赤い花びらでできている、という違いはあるのだけど。



「あの女剣士さん、と-っても素敵だわ!」


つまり…この超を三つほどつけても足りないほどの天然娘は…

単になりきりたいだけ…という事になる。


要は、小さな女の子が正義の魔法少女に憧れて、魔法使いっぽい格好をして魔法の手杖(ワンド)を振って満足する、あれと同じだ。


「リルリルって、子供みたいなとこ、あるよねー」

「みたい、って言うか~…」

「子供、ですよね、まるっきり…」

「…かわいい…」


友人たちも、呆れるとか、がっかりするとか、そういうのを通り越して、

「ま、リルフィーだったら仕方ないかー」という感じに認めてしまわざるを得ない…。



「みてみて!」

立ち上がってその場で、くるっと回ってみる。軽くゆっくり二周り。

きゅっと締まった腰…、長くすらっとした脚…、

支えると言うより、僅かに隠す程度の胸当て、に包まれた豊満なお胸…、

ほぼ丸出しの、発育のいい年頃のお尻…

その前側は、股間部に食込む感じに、わずかな面積しか覆われていない…


「いいでしょ!?」


遠くで男性生徒たちが、目をハートにしながら、うんうんと頷いている。

別にこいつらに見せてる言ってる訳ではないのだけれど…。


男子生徒たちは、見とれているだけじゃあなく、小型魔導書(グリモワール)である学園生徒手帳を使って、描写記録(シャメ)機能をフル活用している…。

つまり、彼らの生徒手帳の中は、リルフィのビキニアーマー画像でいっぱいになっている訳だ…


もともとリルフィは、男性が自分をどういう目で見るのかなんて、関心はまったくない。

で、描写記録(シャメ)を取られている事も、別に嫌だとも思っていない…

羞恥心がない、警戒心がない、訳ではないのだけれど、その基準が一般人から大きくズレている可能性がある…


そういうところをわかっている友人たちは…

(あー何言ってもしょうがないなー…)と、リルフィの無防備すぎるところを心配しつつも、美貌も性格も能力も、すべてが稀有なこの女子の友人である事を楽しんでいる、のである。



「まあ~、そういう事にしておきましょ~…」

「ええ、言っても聞かないですからねえ…」

「リルリルだがら、仕方ないですよ、うん」

「…すてき…」


「えー、どう? 微妙? いけてないかな?」

リルフィは友人の反応がちょっと微妙なのを気にしている…。


「いえ、似合ってますよ…とっても、似合ってます、けどー…」

「えっと、ただ、ですねえ…」

「そう~、この格好で、授業を受ける気なの~?


「?」

リルフィは「当然受けますけど、何か?」という感じだ。


「着替える気、ナシな訳ね~…」

「わかってましたけどねー…」





そして肝心の授業時間…


一限目は経済学…

非常にマジメな若い男性教師だ。


授業の始まる時も、まず教師が怪訝な顔をする。

まあ実際、目を引くのだし、

まあ実際、やりにくい感じはあるし、

まあ実際、男子生徒たちは頻繁にチラ見してるし…


非常に気が散る感じでありましたけれど、そんなこんなで一限目は終了。




二限目は考古学のイェーロ教授だった。


「おお、これは…!」

教授はリルフィの鎧姿を見かけると、近寄り、感動的にしげしげと見つめだした。

ちなみにこの考古学においては帝国内でもかなりの権威であるところの中年の教授は、女子学生を中心に非常に不人気である。

理由は、露骨にエラそうで、露骨にエロいからだ…。


「これは、ルクレチアのシュリュート神に仕える、戦巫女たちの衣装だなあ…。そしてこの赤い金属は、エレミア鉱という、女の美しさに反応するといわれる、魔法金属、だな」


教授は、胸のあたりをじーっと見ながら言っていた。

鎧と、どっちを見ているのだか。


「この紋様…ルクレチア共和国時代の物じゃ。同じシュリュート神の紋でも、時代によってデザインの変遷が見られる…これは…滅多にない、貴重なものかもしれん…」

自分では見えないけれど、左胸の下の部分に、その紋が入っているらしい。

…教授の目は…あからさまに違う所を見ているのだけれど…。


リルフィは、家にある魔導書(グリモワール)の事を思い出した。

あの表紙にも、十二神の紋様が描かれ、この軍神シュリュートの紋もあって、ちょうど赤い金属の色がともっていた…。それは、この鎧と同じ色だ…。


「ちょっと立ってみたまえ」

言われてリルフィは立ち上がった。

男子使徒から歓声が上がる。特に、後ろ側にいる生徒たちだ。

ほぼ丸出しのお尻が露わになったのだから、そりゃあ盛り上がるだろう…。


だけど、リルフィの鎧姿の立ち居は、なんか結構貫禄がある。

武芸をやっている事も影響があるかもしれない。

先程キュリエが「格好いい」と言ったのも、間違いではないのだ。


教授は身を低くして、鎧の下側の部分を指でさし、触れる…寸前でかろうじて手を止めながら、説明していた。

「この部分を多く露出することが肝心なんじゃ。魔法で守られた女性専用防具は、逆に防御性能を高める事になるという…いや、ワシ自ら、ルクレチアの巫女さんに会って、耳と目と手で確認したから、間違いないぞ!」


“耳”は聞き取りだとして、“目”と、“手”で、何を確認したのやら…。


V字の(ヒモ)ショーツみたいな、鎧の下半身部分は、ただ、股間に直接当てているのに、“鎧”の形状は身体に合わせて、布地のように身体に密着している。

なめらかな細かい鎖を編んだような、金属なのに柔軟な作りなのだ。

そしてその金属の重さで垂れてしまって、中が見えてしまうような事もない。

女の子の大事な部分を“物理攻撃”と“視線攻撃”から守るために、実に精巧に丁寧に作られている…。


ここを、“目”ならともかく、“手”で確認されたら、流石のリルフィも、その実行者が国家的な考古学の権威であるとか抜きにして、(グー)でぶん殴ると思う…。


男子生徒は周りに集まってきて「観察」に余念がない…。かつてこの教授の授業で、ここまで熱心に男子たちが取り組んだ事があったであろうか…。


「実にすばらしい!」

教授が声を上げた。

それは、ルクレチア共和国時代の骨董価値のある鎧について言っているのか、

その目線の先にある、年頃の乙女の豊満な身体について言っているのか…。


「あの、先生? 授業、授業!」


ああ、そうじゃった、と教授はちょっと名残惜しそうに…

否、ここで行う授業という仕事を思い出し、教壇に戻っていく…。


まあ今日はそんな感じなので…教授は授業を行っている、のだけど…

男子生徒、誰も聞いてない…。


「…エヴェリエ天湖の南は…現在は東西に魔導列車が走っているが…それ以前はひどい山道であり交易もままならない場所であり…」

まあ、教授も総合学科二年の男子生徒など、ダメな連中だと思っているので、つまり、授業もテキトーだ。


男子生徒たちは、リルフィの鎧姿、もとい露出度の高さ、胸や腰や脚やお尻、女性独特の曲線美に、視線と気持ちを奪われ、考古学の授業どころではないのだ…

まあそもそもこの教授の授業を興味を持って聞いているのは、リルフィくらいのものだ。

ちなみにミリエールはこっそり落書き…もとい授業中に浮かんだデザインを描き留め、メアリアンは週末のアルバイトの段取りを覚えるのに必死で、キュリエは教科書に隠して関係ない本を読み、ファーナは部活の朝練で疲れて居眠りをしている…。


「…その遺跡はどうやら聖なる杯を祀っていたような跡があるのだが、その杯自体は持ち去られたようで…」

歩きながら話をする教授は、リルフィの側でぴたっと停止。

もちろんその目は例の鎧、正確にはその周囲に注がれているのだ…


「で、先生? その聖なる杯は、見つかったのですか?」

突然のリルフィの質問に、教授は我に返ったようになって、


「ああ…いや、見ておらん! いや、見つかっておらん…!

 あー、杯の遺物は各地で出土しとるが、その遺跡のものとはどれも形状が異なるのだ…」


と言いながらまた教壇に戻っていく。

とまあこんな感じで、普段から授業になっていないこの教授の授業は、今日ますます授業にはなっていなかった…。





休み時間、また仲間内で、この鎧の話題で盛り上がる。


金褐色のクロワッサンカールのおさげ髪を揺らしながら、メアリアンがリルフィの身体をしげしげと見つめる。

いやらしい感じじゃあなくって、ファッションの店でアルバイトしているメアリアンはこの衣装に、色々と関心があるようだ。

いかに機能性を保ち、いかに見せるか、が彼女の関心なのだ。


「リルフィ、その鎧…寒くないのですか? 風邪でも引いたら大変ですよ…」

だからこういう事が気になって聞いてくるのだ。


「これ? 寒くないのよ。なんかね、暖かくって、涼しい感じ?

 とーっても、着心地いいのよ!」

というのが率直なリルフィの感想だ。


夢の中でも女の子たちの装備について、冷熱耐性、とか言ってたのを思い出す。

この鎧にも、その魔法がかかっているのだろう。


「着てみる?」

といって、首の後ろに両手をやった。

鎖の留め金らしき箇所を触ったのか、胸当てを上から釣っている鎖が外れてぶら下がった。

胸当ても少し浮いた感じに揺れる。


「「「ここで脱がないの!!」」」


メアリアンとミリエールにファーナまでもが、大声で叱った。

背中の留め金に手をやっていたリルフィが、驚いて手を止めた。


「なんで脱ごうとするのよ~! 男の子いっぱいいるじゃな~い!」


ミリエールの言う事はもっともだ。

というより、ここで脱ぎだすほうがおかしいのだけど…


リルフィは、

「あ、ごめん。ちょっと失敗♪」みたいにかる~く流した…。


「ちょっとぉ…リルリル、恥ずかしくないんですかぁ?」


ファーナも呆れている。

さっきから男子の視線はリルフィの胸元に釘付けだ…。


で、またメアリアンは興味本位で質問する。


「それ、胸当てと腰当て支えてるの、鎖ですよね? 

 肌に食込んだりして、痛くないですか…?」


「ううん、全然痛くない感じ! 

 昨日帰ってからずっと着てたけど、お肌に鎧の跡もつかなかったし!」


昨日、帰ってからずっとその格好してたのか、と、みんな驚く…。


「えっとねえ、こうお胸に当てて、後ろの留め金を、ぷちっってするとね、この繋いでる鎖の部分が縮んで、身体にぴったりする感じ。フリーサイズ、ってやつかな?」


「へー…上手く出来てるんだー」


「そしてね、留め金っていうか、くっついてるの。磁石みたいな感じ。

 でもゆるくなくて、自分の意志がないと、他の人じゃ外せないみたい」


「こんなふうに」と言ってまた脱ごうとする…

胸を横に支えている鎖がゆるんで、胸当てがちょっと浮いたようになって…


「こら~!」「だめですよー!」「またー!?」

また友人たちに叱られるリルフィ。


男子生徒たちは目が離せない様子で、ずーっとこちらを見ていた…。





帝国主催の武道大会があり、この帝国(インペリアル)学園(アカデミー)でも、その小型版とも言うべき、武芸祭が行われる。


「リルフィ~、今年は武芸祭、出ないの~?」

「うん、出ない」


「去年いいとこまでいきましたのにー…」

「うん、だから出ない」


去年のこの時期。

学園で開催される武芸祭に、まだ一年生だったリルフィは調子に乗って参加したのだった。


「腕に覚えがあるから」というのがリルフィらしい参加理由。

ああ、ちなみに、昨年はまだこんな鎧は着ていなかった…。


一回戦の相手は、士官学科の二年生男子。


何か将来をすごく期待されてる感じの、優秀な男子生徒だった、らしい。

対戦相手が一年生の学園アイドル級美少女だということで、

「おい、泣かすなよ!」「手加減、手加減」

「勝って告白し(コクっ)ちゃえよ!」とか散々周りから言われてた感じだ。

「一年に、メチャカワイイ子がいる」って噂の女学生なので、戦う本人も、

「ケガさせちゃマズいよなー」とか勝つ前提で、つまりナメてたのは確かだろう。


何のことはない。

そのエリート男子を、リルフィは一発で()してしまった…。


これには学園じゅうが驚いた。


“武芸祭”なので、戦闘魔法は使用禁止。

放っておくと士官学科の生徒だけの参加になってしまうので、わざわざ別学科からの参加枠を設けてある訳だけど、大抵上位に残るのは士官学科生徒だ。


そんな中で、優勝候補の有望男子を、一年生女子が一撃でノした、という…。


士官学科の生徒は、この武芸祭で好成績を出すことで、それが将来に関わるのだ。

学生時代の優勝経験などは、下手すると永久に箔が付いて回るのだ。

これは他のスポーツ競技などにも同じことが言える。


だからみんな、すごく気合が入っている。


四回戦まで進んだところで、リルフィはそういう事情を知ったのだ。

で、棄権した。


その四回戦の対戦相手も、士官学科の三年生男子で、ここで武芸の腕を示しておきたい所だったのだが、試合前からこの対戦相手の美少女には、かなりビビっていたらしい…

で、リルフィが棄権し、結局その男子が勝ち上がって優勝していた。


そういう事情を知ったから、リルフィはこういう大会にはもう参加しないと決めていた。

別に士官を目指しているわけでもないし、武芸の箔がついたところで、意味はない。


去年はあれから、三回戦までに倒した相手全員に、わざわざ謝りに行ったりしたものだ。

まあ全員「負けたのは実力だ」とか「来年また頑張る」とか、

「それより今度、お茶しない?」とか言ってきた訳だけど…。


リルフィは、子供の頃から様々な習い事をさせられた。

母親の趣味によるところが大きく、踊りとか謎なものも多かったけれど、武芸をはじめ体を動かすことは全般的に性に合っていた。


リルフィは女の子でありながら、子供の頃から剣が得意だった。

普通の男の子には、まず負けない。


大人たちから褒められ、ものすごいと驚かれたりするけれど、自分にとってはそれが普通の感覚だから、よくわからない。


でも剣の道を目指す事はなかった。

嫌になったわけではない。いまでも時々、お庭で練習している。


その理由は…

他にも天才的な才能が山ほどあるリルフィには、剣一本に絞る必要なんてないのだ…。


リルフィは色々な事をまんべんなく楽しみたい女子なのだ。


今もまたお菓子作りの才能で、四人の友人、特にそのうちの二人、を驚嘆させているところだ…。

「いやぁ~このフルーツパイの焼け方、もう芸術って感じ~! はむっ…」

「うん…中の果実の配分も完璧です…もう何枚でもいけちゃいます… はむ…」


また一人分とか残ったらミリエールとメアリアンの“冷戦”が始まるので、先に平等に切り分けておく。

平等、って言っても、この二人の分だけ露骨に多いんだけど…。


でも、先に食べ終わる二人…。


「キュリエの分~、ちょっと多かったんじゃな~い?」

お上品なキュリエは食べるのが遅い、そして少食である。


そんな訳で、キュリエの眼の前にはまだ手つかずなパイが一切れ、そのまま残っている。

今食べている一切れも、まだ半分くらいしかいってない。


「よかったら、食べるの、手伝って差し上げますよー」

眼の前の二人は、他人のパイを巡って、また冷戦を始めようとしていた…。


「いえいえ。そこは親友のあたしが!」

横に座っていたファーナが、手つかずのパイを手にとってかじりついた。


ミリエールとメアリアンは「あああぁぁ…」ってな感じになる…。

キュリエはそのやり取りを見て、お上品に食べながら笑っている。

黒髪姫カットの小柄で上品なキュリエは、とっても可愛かった。





午後の授業が終わったら、今日も武闘大会の見学だ。

あの女剣士さんが、今日も活躍することを、リルフィは疑っていない。



ルーメリア編、次回まで続きます…。


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