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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第5章 南街道の行軍
51/138

50.増えた女子を養う、今後の相談

Mob女子多いのは物語上の仕様です。興味無い方は読み飛ばし推奨…


翌朝。


昨日来たばかりだけど、ユナたち八人も、さっそく朝練に参加していた。

孤児組の四人も、数日前から始めている。


顧問のフローレン、ユーミ、部長のチアノ不在の中、昨日まで部長代理として朝練を仕切っていたのは、最年長のウェーベルお姉さんだ。

家庭的で料理が得意でおっとりしているようで、人妻っぽい未亡人のウェーベルは、けっこう人を(まと)める能力もあるのだ。


人数は一気に倍くらいになった。

フローレン、ユーミと、27人の女の子たちが、お(そろ)いのゆったり白シャツと短いぴっちり青パンツ姿で整列し、ランニングし、訓練する姿は、わりと圧巻だ。


女子たちによる朝練はちょっと、兵士の訓練のような様相を見せている。

雰囲気が柔らかいのは、訓練を受けているのが体操着姿の女の子だ、という事だからだ。

でも女の子たちの表情は真剣だ。

新しい子たちは特に頑張っている。ぴっちりパンツが食込むのを直したりする事も忘れて、必死に動きについていこうとしている。





クレージュが女の子たちのご飯を作っていると、レメンティが死にそうな表情で起きてきた。


「おはよう、レメンティ。…あれ? …ベッドが合わなかったかしら…?」

クレージュは昨晩は事務所で寝ていた。

レメンティに部屋を譲ったのだけど…彼女はどこからどう見ても寝不足だった…。


今日からクレージュの部屋で寝ていたレメンティは、結果的にほとんど寝ていない。

眠れない理由は簡単だ。


となりのクロエの部屋で、レイリア、ラシュナス、クロエが飲み明かして、延々と騒いでいたからだ…。


女三人寄れば(かしま)しい、というけれど…

この普段から飲み仲間である三人組が同室になると、どういう事になるかと言うと…



「あー! こら! ヘンなとこ、触んな!」

レイリアは静かに飲んでいるけれど、ラシュナスが絡むので時々大声を上げる。


「いーじゃなぁい? 減るものじゃあ、ないんだし!」

クロエも店の女将(ママ)な時は落ち着いた大人の女性なのだけど、仲良しの二人と飲んでいるので、思わず羽目を外して、割と大きな声で話す。


「ほらぁ? クロェも、言ってるよぉ…?」

で、ラシュナスはしつこい。ボディタッチが容赦ない…。


「やめろって!」

レイリアも、相手が男だったら炎で瞬殺コースなのだが、さすがに天然エロ娘相手では、引き剥がそうとするしかない…。

で、また暴れてバタバタと物音が(やかま)しい訳だ…。夜中なのに…。


「えぇ~! やだやだやだやだ! 

 レェリァちゃんのぉ、さ・わ・り・た・いぃ!」


ラシュナスはメチャクチャ酔ってるので、シツコく絡んでくる…。

そして、勢い余って、二人一緒に壁にゲキトツだ…。

それもちょうどレメンティの寝てる部屋のほうの壁に、だ。

そして残念な事に、この店の壁はけっこう薄いのだ…。

ものすごく響く…。


そんな感じで夜遅くまで、というか、ほとんど明け方まで飲み明かしていたのだ。あの三人は…。

で、当然、壁の薄い隣室の人は、眠りに入った、と思えば、まだタタき起こされ…



「もー…! アイツら…! たいがいにしてろ、っての!」

寝不足レメンティは、ツンツン口調が、今朝は尖りに尖ってグッサグサだ。

髪ボサボサでお肌のノリも悪く、神秘的な黒髪美女がダイナシである…。


ちょっとそこまで考えてなかったクレージュは、ちょっと申し訳ない気持ちで、

「ごめんなさい、部屋、替えましょう…」というのだけど、


気の強いレメンティは、

「いや、アイツらダマラせる!」

と、オーラをみなぎらせながら決意を示す。

そしてクレージュの出した、疲れに効く果実ジュースを一気飲みし、

「うわっ、酸っぱ!」という顔をする…。

まあ、なんか…ちょっとムリそうだ。


レメンティは、一人でツンツンしている、がっかり美女なイメージが定着していて、残念ながら正論を言っても説得力がない…。

まあつまり、あの三人は言うことを聞かない。多分…。


特にラシュナス相手に説得する時の相性はサイアクだ。レメンティの小言を、ラシュナスはいつも、するっ! とすり抜けるように無視して逃げてしまう。

結局物事を言い聞かせるのに成功したことが一度もない…。


「あーもう、今日占い休む~…!」

レメンティはカウンター席でうつ伏せてしまった…。


最近は占い屋さんを出しても商売さっぱりなので、あまり行く気もしないのだ…。

それは不景気だからであって、彼女の性格に問題がある訳ではない…多分…。




そうしていると、場がにぎやかになってきた。

朝練を終えた女の子たちが入ってきたのだ。

それも、いっぱい。

「うわ…こんなに増えたんだ…」

白の短シャツと青のぴっちりパンツに統一された三十人近い女の子たちの姿を見て、レメンティはちょっと驚いていた…。


「あ、レメンティさん、おはようございます!」「ございまーす!」

「はじめまして!」「よろしくお願いします!」「しまーす!」

「いつも占い、ありがとうございます!」「また占い、しゃっす!」


代わる代わる、自分にもちゃんとあいさつもしてくる。

この子たちはラシュナスと違ってマジメで、素直に言うことを聞いてくれる。

かわいい子たちだ。

占い師の自分を尊敬しているようなところも感じられる。

ので、レメンティはこの子達に好感を持っている。




朝練の後は、みんな揃って、楽しい朝ごはんだ。

これまでは店の厨房の奥にある大広間で朝食、だったのだけれど、広さ的に三十人が座って食事するにはさすがにムリがある。

ので、今日から朝ごはんはお店のほうで食べる事になったのだ。


お店なので、履き物の土はしっかり落とす。

着ているものは体操着のままで、席は自由。



ちっちゃなアーシャが、可愛いキューチェと、あと同じ年頃の新しい二人、グリア村のフィリアとランチェと四人で座っていた。

ちびっ子を除いた歳が近い最年少組で、さっそく仲良くなった感じだ。

この四人とも背が低い。

おむねとおしりの格差は大きいのだけど…。


逆にフィリアのお姉さんのユナは、チアノ“部長”と、未亡人なウェーベルと一緒。

こちらも最年長組で仲良くなった感じだった。

そこにフローレンも加わった。四人とも同い歳だ。

こっちの四人はみんな揃って、かなり女らしい体型をしている…。



一人ひとり、自分で食事を受け取りに行く。

同じ食器が足りないので、みんなけっこうバラバラだ。

よく食べる子はやっぱり大きい食器を選んでいる…。

おいものサラダも、トマトのシチューも、容器が大きい方がいっぱい入るのだ…。




窓側の席では、南街道組のマリエとナーリヤ、花売りのリマヴェラが一緒、

清楚な、影のある、内気な、大人しい女子組で一緒のテーブルだ。


あっちでは、歌好きな海歌族(セイレーン)のアジュールとセレステが、お針子のトーニャと歌談話で盛り上がっていた。ちびっ子のプララもいる。

アルテミシアお姉ちゃんの熱烈ファン女子たちだ。


こっちでは、火竜族(サラマンド)のガーネッタとネリアン、それにグリア村の鍛冶屋の娘シェーヌが同席している。

どうやらこの子も火竜族(サラマンド)の血を引いている感じだ。


そっちでは、ユーミが猟師仲間のエスターに続いて、南街道組のレメッタも新しい妹分として認めようとしていた。

この三人は獣人族だ。獣人族同士は、なぜかお互いにわかるらしい。

ユーミとエスターは猫っぽく、レメッタは子犬っぽい。


食べた後なのに、まだ食べる話をしている女子も多数…


ほっそりなメメリが、ぶどうパンの素晴らしさについて語っていた。

先日までパン屋で働いていた、孤児のベルノと海歌族(セイレーン)のラピリスが「じゃあここでも焼いてみようか」みたいな話になっていて、料理人の娘のちびっ子レンディも「自分もパン焼きやりたい!」とか言い出しているのだった…。


その隣りでは、迷子のイーナが旅先各地の美味しいものについて語り、姉貴分の活発なディアンとネージェも、クレージュの行商に同行した時に商業都市アングローシャの露天で食べた麺料理の話しをして盛り上がっている。

そんな話を聞いて、脱ぽっちゃりなミミアが、身を乗り出すようにして興味を示している。


「おかわり、いる人~」

料理長のセリーヌが声をかける。

余った分を、希望者全員で分けるのだ。

ただし、おかわりを食べた子は、大鍋を洗ったりの追加仕事を手伝わなければならない。

それでも絶対におかわりを食べる子が最低二人はいるのだが…。



時間が来て、談話は終了。

今日の声掛け、の代わりに、新しい八人が改めて挨拶をした。

代表して年長のユナが話しをした。

行き場のない自分たちを、こんな素晴らしいところに受け入れて頂いて…と感謝の意を述べ、そして少しでも先輩方やお店や商売の売上に貢献できるように…と、来たばかりとはとは思えない、ここの業務内容も既に把握しているし、自分たちも売上に貢献する必要がある、とわかっている。


ユナは村長(むらオサ)の娘だった事もあるのか、言葉遣いも丁寧で、話す内容もしっかりしている。

“部長”チアノ、“部長代理”ウェーベルに次ぐ三人目のリーダーになる資質が早くも見えていた。


「今後とも、どうぞ、よろしくお願い致します…」

ユナが礼をすると、他の七人も遅れて見習って頭を下げた。

不揃いなのが初々しくて、逆にいい感じだ。





店の女子たちが、いつもの仕事を始める。

昨日まで、始めての行商に出ていたミミア、メメリ、キューチェは疲れが残っているので無理はさせず、今日は休みたい時に休ませる。

チアノ、ディアン、ネージェの先輩三人は慣れているので元気だけれど、今日のところは荷物のお仕事はお休みだ。

三人はそのかわりに、先輩として、新人組の訓練の手伝いをしている。



新しい十二人は、朝食後も引き続き、裏庭で訓練を行っていた。


南街道組のうち七人は遺跡の中で、例の論理魔法装備の守りの指輪を渡した。

後で加わった迷子のイーナにも、タムト村を出る時に渡している。

孤児組の四人娘には、昨日のステージの後に、アルテミシアが渡していた。


なので、ここにいる全員が論理魔法装備のアクセサリを持っている事になる。


そしてその十二人の子たちは、今日は朝食の後も換装武器のイメージングの修行だ。


店の仕事を覚えることも大事だけど、訓練を優先するようにクレージュから要望があったのだ。



新しい子たちは、得手不得手が両極端に分かれる感じだ。


南街道組では、年長のユナと、子犬っぽいレメッタは、体力がある。

鍛冶屋の娘シェーヌと、タムト村で加わった迷子のイーナは、まあまあ。

ユナの妹のフィリアとその親友のランチェは、そこそこ、

清楚なマリエと影のあるナーリヤは、ちょっと体力が乏しい。


孤児組では、猟師のエスターが、ダントツに体力があって、

花売りのリマヴェラとパン屋のベルノは、そこそこ、

お針子のトーニャは、体力がない感じだ。


マリエとナーリヤ、それとトーニャに関しては、アルテミシアが魔法を教えるような話をしていた。つまり魔法の素養が高い、ということだ。

それでも体力づくりは大事だし、最低限、換装武器の扱いだけは覚えておかなければならない。接近戦の能力も、身を守る程度には必要だ。


換装武器のイメージ能力に関しては、

得意そうなのが、マリエ、ナーリヤ、トーニャとリマヴェラ

まあまあなのが、ユナ、イーナ、ベルノ、

そこそこが、シェーヌ、フィリア、ランチェ、

苦手そうなのが、レメッタ、エスターの獣人族娘ふたりだ。


やっぱり魔法素養とイメージングは関連が強い感じである。

まあ魔法素養があっても、ちっちゃなアーシャみたいに、何回やっても武器以外の物が出てくる子もいるので、一概には言えないけれど…。でもあの子のお陰で、武器以外の有用な食器とか安眠まくらとかが見つかったので、適正がないとも言いきれないのだ…。



女の子たちが次々に武器のイメージを習得していく。

親友のリマヴェラが意外とイメージが上手なのを見ると、フローレンもちょっと嬉しい。


でもどの子もまだ、好きな武器を選ぶところまではいってない。

イメージングは早い子でも昼頃まではかかりそうだ。

今のイメージング鍛錬中心の状況では、フローレンの教える事もあまりないのだ。




「あ、フローレン」

レイリアが呼びに来た。


なんか、寝起きっぽい感じのだらしない格好だ…。

白い両開きシャツ一枚の姿…前ボタンもかけず、しかも素肌に直接…

そのシャツの布地がギリギリの高さで、下はショーツしか穿いてないのが見え隠れしてる…

それに加えて問題は、朝っぱらからその手にお酒のグラスを持っている…


「クレージュが呼んでるよ。会議だって」

「えー? 何だろ…?」


「ごめん、ちょっとお願いね」

この場をチアノ、ディアン、ネージェに任せて、フローレンは中に戻った。


一緒に来ようとしたユーミに、

「あ、オマエはいい」

とレイリアが静止した。


「なんでよー!!! あーし、ナカマハズレ!?」

キレるユーミにレイリアが、


「難しい話するらしいから、オマエついてこれないだろ?」

と冷静に諭す…


だけど…

「あーしを、ばかに、すんなー!!」


と言ってダダをこねて、結局ユーミも来た。

来るなと言ったら暴れそうなので、仕方なく連れていくしかなくなった…





厨房奥の大部屋では、クレージュを中心に、会議が行われようとしていた。

この店の冒険者組の女子たちが集合している。


今日は遅くまで寝ていたアルテミシアも、ちょっと気だるそうだ。

旅に次ぐ旅で疲れているのか、新月が近いから元気が出ない月兎族(ルナーレ)の特性なのか…


レメンティも寝不足っぽかった。

なぜ旅に行ってない彼女が疲れているのか、クレージュ以外は知らない…。

ちょっとレイリアに何か言いたそうにして、は、いるけれど…。


そのレイリアは先程の格好から、裸に着けたシャツを前で結んで、大きい胸を支え隠すようにしていた。下はヒモのようなV型のショーツだけだ。

女子しかいない環境だから、こんなだらしない格好をしてると思われがちだけど、レイリアは男がいてもあまり細かいことは気にしない…。

で、その格好で、まだ眠気が冷めないような、けだるい目つきと手付きで、グラスのお酒を(あお)っている。その仕草は、ちょっと色っぽい…。


フローレンとユーミは、まだ体操着姿のままだった。

ぴっちり赤パンツのまま席に座る。


ラシュナスはまだ寝ている。誰も起こしてもいない。





クレージュはいつになく深刻な面持ちだ。


「昨日も少し話したけど…」

要するに、これからどうするか、という事だ。


「北の内乱のおかげで、食料品をはじめ物価が上がっているのよ…」


その上、このフルマーシュの町を覆う不景気だ。

閉店する店も増え、商売で訪れる者も目に見えいて少なくなり、

この町でも、職を失う者が多くなってきているのだ…。


当然、このお店に来てくれるお客の数も減っている…。

それでもこの店はまだ流行っているほうだ。


「店仕舞いしてるお店も、増えてきたよね…」

フローレンが言う通り、この街の飲食店はここにきて、かなりの数が店仕舞いした。


「そう…実はさっきもね、知り合いが尋ねて来たの。

別のお店で働いていた母娘(おやこ)なんだけど、お店が閉まるから、ここで雇ってくれないか、ってね…」


でも今はこのお店も、人を雇うほどの余裕がない…。

もし受け入れ先が見つかったら、紹介してあげる約束はしたけれど…


「料理しかできないから、お仕事見つからなかったら…男性相手の仕事するしかないかなー、って言ってたわ…」

それも母娘(おやこ)で、だ…。たしか、小さな子どももいたはずで、養うには仕方ないと言っていた。


「だから、商売のほうを頑張るしかない、ってなるんだけどね…でも…」

行商を行うにしても、簡単にそれだけの利益を出すのが難しい。

儲かる商売なんてあったら、誰もがやっている。


全員を養える目処をつけるのが難しい。


不本意だけれど、知り合いの貴族に融資を頼む、というのがクレージュにとって最後の手段だ。

でもそれは、自分を “売る” ことになってしまう…。

その貴族に囲われる、という事だ。


「今までの遣り方じゃあ、ダメってことなのよ…」

クレージュはグラスを軽く(あお)った。

珍しく、朝から飲んでる…。


「ああ…なんか、こう…ものすごいお宝が眠ってるダンジョンとか、どこかに無いかなー…」

フローレンは冒険者らしい事を言った。


だけれど、そんな都合の良い冒険なんて、そう転がっている訳がない…。

このあいだの遺跡だって、魔法施錠された扉でまずあきらめた…。


危険だけ多くて、実入りが少ない、なんて事も少なくはないのだ。

地道に山賊討伐して、お宝を取り戻すほうが、このご時世では現実的だ。



「まあ、要するに…

 おカネになる商品があればいいわけよね?♪」

持ち前の明るい歌口調で言ったアルテミシアに、全員の目が集まった。


「そうだけど…」

クレージュは、それが難しい、と言っているのだ…。


「そして、あとは…

 私達が自給できれば良いワケよね♪」

と、明るい口調のまま、アルテミシアは続ける。


「まあ、そうなんだけど…」


食料自給については、クレージュも考えた事がある。

タムト村でやっていたような、自警団組織などを充実させ、生産を守る体制をつくる遣り方…。屯田というやつだ。兵士が農業生産を行うというのが手っ取り早い。

女の子たちがかなり強い武装を持っているので、屯田自体は不可能ではない。


だけど、現実には問題がかなり多い。

まず適した土地がないし、すぐに見つかるわけではない。

森を開いたり、開墾には手間がかかる…。


そして、農耕に関する知識も道具もない。

あと、土地を持って農耕を行えば、必ず領主に税を取られる事になる…


一番の問題は、今から耕しても、収穫には遅いという事だ。

来年の収穫まで食いつなぐ事ができない…


という事を説明すると、


「やまで、たべものとったら、いいじゃない!」

とユーミが言った。


それも一つの方法なのだけど、

「冬、越せないだろ!」

とレイリアが、もっともな突っ込みを入れた。


冬場には獣もいなくなるし、木の実も成らない…。

「あ、そっか~…」とユーミも理解するが、

「じゃあ、あーしらもトーミンしよー!」とか、ケモノぽい事言ってるのは軽く聞き流して…


「食料は一番必要だけど、それだけでもダメなのよね…」

文明の中で生きる者は、食べるだけではダメなのだ。

生活水準を維持するには、どうしてもお金が必要になってくる…。

なんとか食いつなぐだけの原始的な生活なんてダメだ。

ここにいる大半は、妙齢の女の子たちなのだから、そんな生活をさせて品がなくなるのは、絶対にさせたくない…。


「そう、だから…

 自給ができて、おカネになるモノが作れる場所があればいい、って事よね?♪

 そういう場所、あるじゃない♪」

アルテミシアは指を立てながら、軽く片目を閉じ、口調は崩さず言う。


「あ…」

「それって…」

フローレンとレイリアはすぐに気がついた。


「でも…」

クレージュも、その事には気づいている。

そこへの贈り物は既に用意してあるのだ。


「いい、って言ってくれるかしら…? 何十人も受け入れてほしい、なんて、言える…?」

下手をすれば、こちらのほうが人数が多いのだ…。


「ええ、大丈夫よ♪」

アルテミシアは自信ありげに言った。



「だって、もう話はつけてきたから♪」



「「「え~~ー!!??」」」

これには全員そろって驚かざるを得ない…。

うつ伏せて寝ている占い系の人と、ぼーっとしてる獣人系の子は除いて…。


「い、いつのまに?」

「この間の旅の時よ♪」


アルテミシアは南街道へ行く前、十日ほど北へ旅に行っていた。


「古い馴染みに会うって、言ってたけど…? その時、って事ね…」

フローレンが言うのは、あの“ヴェルサリア女子装備LV1”をもらった、

その“ちょっと変わった子” の事だ。


「ええ、“現地” で会ってきたのよ♪

 あの子も、いい考え、って言ってたわ♪

 “そこ”でも、もう受け入れ準備してくれてるしね♪」


「もう…決まっているなら、最初に言いなさいよ…!」

フローレンはちょっと怒りつつも、ほっとしたような面持ちだった。


「そうだよ…心配かけて…」

レイリアもぐっとお酒を飲み干して、またグラスに注いでいる。


「そういう事だったら、安心…していいのかな…?」

クレージュは緊張が解けた感じだ…。

無意識のうちに腕組みを解いて、重たい胸をテーブルに預けている…。


自分が必死に悩んでいた事を、アルテミシアはとっくに解決していたのだ…。

それも、買付けに行くよりも前に…


クレージュはほっとした…。のと同時に、何か拍子抜けた…。


「でも… もう話がついてたんだったら、買付けに行く必要って…?」

という、(もっと)もな疑問が浮かんでくる…。


「いいえ。その子がね、その買付けは是非行って、って言ってた♪

 なんかね、私達にとって、後々大きな意味があるんだって♪」


「八人も女の子を助ける事ができたからんだから、確かに意味はあったわね!」

フローレンはその意見に肯定的だ。

ユナは逸材だし、他の七人もいい子たちだ。いい出会いだ…。

きっと長い付き合いになるのだろう…。いい事だ…。


他にも、女の子たちの修行になった。

悪い山賊を始末した。

そして…

北に関する情報も得た…。


「そうね。その子の言う事、間違ってないわ」

結果論として正解だったことは、クレージュも異論はない。


たぶん、アルテミシアの古い馴染み、っていうくらいだから魔道士だろう。

そして、“その子” は預言者か何かだろうか?




それで解散となった。


「あ、アタシ、そろそろ、仕事いくから」

レイリアは今の格好の、ヒモみたいなショーツの上からショートパンツを穿()いて、残ったお酒を一気に喉に流し込むと、そのまま店を出ていった。

上はシャツ一枚を胸に巻いただけの姿だ…。


フローレンは新人の女の子たちの修行に付き合うため、裏庭に戻っていった。

今日のフローレンはずっと、ゆったり白シャツとぴっちり赤パンツ姿だ。


ユーミは着替えに行った。今から狩りに行くようだ。


クレージュは居眠りしているレメンティを揺り起こしている…。


アルテミシアはちょっと調子が出ない感じだ。

これから午後は、女の子たちの魔法の勉強につきあう予定にしている…。

この調子で、大丈夫だろうか…。


クレージュは、アルテミシアに感謝している。

月が満ちるまでの間、毎日新作スィーツを作ってあげようかな、とクレージュは思っていた。


あとヴェルサリア編で5章終了予定…

ただ、明日のUP間に合わない可能性あり…

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