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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第4章 女子兵たちの装備
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36.女子兵たちの武器選び


アルテミシアは、次は武器について説明する、と言った。


「え…? アクセサリだけじゃないの?」


「その指輪を装着した事で、その女子はヴェルサリアの訓練兵として認められた、って感じになるみたい♪ そしてね、訓練兵の女子たちは、それぞれ一つ、武器を与えられる事になる、って書かれていたわ♪」


書かれていた、とは、さっき空中に浮かんだ、虹色に輝く光の古代文字だろう。

この中ではアルテミシア以外誰も読めないものだった。


そして、最初にこの指輪をつけて解析を行ったアルテミシアには、先にその武器のイメージが見えていた。

さっき女の子たちに「アクセサリ以外の物が見えても触らないように」と注意を呼びかけていたのは、この為だった。

イメージ力の強い子は、説明するより先に武器のイメージにたどり着いて、出現させてしまう危険があるのだ。



武器がもらえる。

そう聞いた女子たちがかなり興味を示した。

みんな揃って、ちょっと興奮気味だ。


その反応を見て、フローレンはちょっと意外だった。

武器に慣れていない子たちは、怖がって緊張すると思ったからだ。



毎日の武芸訓練の課程で、お店の倉庫にある武器を、フローレン“顧問”が許可して、実際に触らせてみて、実際振らせてみたりする事がある。


鉄製の剣は、女の子の手には、ずっしりと重い。

そしてそれは、実際に「斬れる」ものなのだ。

それを数回振っただけで、興奮して、あるいは怖れて、震える子もいるくらいだ。


元ショコール女兵士や、太陽神巫女の子たちは、既に軍事訓練を受けていて、武器の扱いには慣れている感じだけれど、つい先日までただの村や町の娘だった子たちに、殺すための武器をもたせれば、それが当然の反応だろう。


活発なネージェ、ディアンや、剣士の妻だったウェーベルはまだしも、

ちっちゃなアーシャや、新しい三人ミミア、メメリ、キューチェは、武器を手にしただけでも、かなり怖がっていた…。



だけど…今…女の子たちは、自分の武器を手にするのを、今か、今かと、ワクワクして待っている感じだ。そのか弱い四人も、先日、鉄の剣を持たせてみた時の感じとはぜんぜん違う…


(あ…これ…ひょっとして…さっき言ってた…

 兵士意識LV1ってやつが発動してる…?)


と思われる…。

そうでもないと、彼女たちのこの変貌ぶりは説明がつかない…。

兵士としての意識が上がれば、武器を欲しくなるのは、まあ自然な感じだろう…。



だけど、そうなると話は早くなる。

武器に馴染んで、使いこなして、そして実戦に出るまでが早くなる。


「武器ひとつ…って、それは剣?」

フローレンが尋ねた。


フローレンは女の子たちの訓練につきあい、指導をしている。“顧問”だ。

主に短い棒か木刀を振らせているのだけど、中には長い棒や木槌のような物のほうが向いていそうな子もいる。つまり実戦武器では、槍や鎚に当たる。


「えと…ひとつ、って言ったけど、一人に一つ、って意味なの♪

 そしてその武器は、使う者の意思によって、形を変えられるの♪

 剣だったり、槍だったり、弓や盾なんかにも、ね♪」


「可変型…ってやつ?」

「う~ん、どっちかって言うと、換装型かな♪」


レイリアの火色金(ヒイロカネ)の剣ように、同じ一つの物が別の形状に変わるのが「可変型」の武器。

「換装型」というのは、幾つかの武器が並んいるうちの一つを選ぶ感じだ。

もちろん、無い状態もその形態のひとつ。

フローレンの花びら鎧やアルテミシアの月影ボディスーツも、有る(ON)無い(OFF)かを選ぶ換装型だ。



新入りの黒髪お姫様カットの小柄で可愛いキューチェが、アルテミシアに呼ばれてみんなの前に出てきた。

アルテミシアが女の子たちのアクセサリ変更の習得を見ていた感じ、冒険者組以外の女の子たちの中では、この小柄な可愛らしいキューチェのイメージング能力が、群を抜いて高いのが見えた。


「いい? そこにある武器のイメージが頭に浮かぶはずだから…

 論理魔法の記述では“武器庫”って言うんだけどね♪

 そこにある武器を自由に選んで取り出す感じ♪

 さっきのアクセサリの時と、基本的は同じよ♪」


アルテミシアの説明に可愛いキューチェが頷いた。

ここにいる全員の目が、この緊張気味な可愛い黒髪姫カット少女に注がれる…。


「じゃあキューチェ、好きな武器を出してみて♪」


言われたままにキューチェが可愛い瞳を閉じた。何かを考えている様子だ。

そしてすぐに答えに行き着く。

軽く光が舞って、そしてキューチェの手に現れたのは…


…ノコギリ型の剣だった。

無骨な感じじゃなく、輝く銀色の刀身に、柄はピンク色の飾りがついている… 女の子にしか似合わないような、キレイでカワイイ感じだ。



「うわ!」「すごい!」

側にいたミミアとメメリが驚いた。

いきなり武器が現れた事もそうだけれど、こんなちっちゃくて可愛い子が、なんでそんな武器選ぶかなー…と他のみんな驚いた様子であったけれど…。

キューチェは目を細めて、なんか恍惚とノコギリ剣を見つめている…

好きなのだろうか…?


「持ち手だけには重さの負担が軽減されるの、一般的にそういう論理魔法の記述があるものなの♪」

言われていれば、けっこう重そうなのに、小柄で細いキューチェが片手で軽々持っている。そして角度を替えながらうっとりと眺めている…。


「キューチェ、武器を替えてみて♪」


言われたキューチェが我に返り、うん、と頷いて、また目を閉じる…

ノコギリ剣が光に包まれた…と思うと…

今度は大鎌が現れた。

銀色にピンクの飾りがついているけれど、穀物の刈り取りを行う時に使うような両手持ちの大きい鎌だ。


この子、可愛いのに、なんでまたそんな武器を…

と、武器が変化したことに合わせ、みんなまた驚かされる…。


「じゃあ、みんなもやってみましょうか!♪

 武器がぶつからないように、お互いに間を開けて♪

 …あ、周囲にも当てないように注意してね♪ 机とか、床にも…」


武器は取り扱い注意だ。

彼女たち同士もそうだけど、テーブルや床も傷つけたら大変だ…。

そう、ここはまだ開店前のお店の中なのだ…。


アルテミシアは、クレージュに目配せした。

(店内で武器とか、ゴメン♭ 最初の一回だけ、許して…)

クレージュはちょっとだけ、口元で微笑んだ。



女子たちはかなり興奮状態だ。

毎朝、戦闘の訓練を受けて、戦う意識の上がっている女の子たちにとって、初めて自分の武器を持つことになる、というのは、こういう高まった気持ちになるものなのか…。

元兵士の子たちも、久々に自分の武器を持つ事に、やっぱり気分が高まっている感じだ。


そして店内のあちこちで、光って、光って、光って…、そして…

女の子たちの手に、思い思いの武器が現れる…。


あ姉さんなウェーベルは、やっぱり()りのある刀を、迷いなく選んでいた。

ディアンとネージェは、とりあえず長剣だ。だけどあまりしっくりきている感じじゃあない。

ちっちゃなアーシャは、細い棒の先のほうが広がった、フトンたたきのような武器を…というか、それ武器じゃあなくって、絶対フトンたたくやつだ…。


ぽっちゃりなミミアは棍棒みたいなのを…、って、何か村で使う道具っぽい…

ほっそりなメメリは長い棒を…、って、それ、物干し竿…


農村の女の子にいきなり武器、って言っても、難しいのかもしれない…

まあそこは…これから色々試して自分に合ったものを選んでいけばいい…。


可愛いキューチェは、またノコギリ剣に戻している。…やっぱり好きみたいだ。


海歌族(セイレーン)の四人は、片手用の短槍(ショートスピア)とか、小型の片刃剣である舶刀(カトラス)を選んでいる。

火竜族(サラマンド)のガーネッタは両手に短剣(ダガー)、ネリアンは両手用の長槍(ロングスピア)で、どちらも刃の部分が炎形刃(フランベルジュ)になったものを手にしていた。

この子たちは、武器選びには迷いがなかったようだ。



「じゃあ、ここで…♪」

全員が武器を… 武器?を手にしたのを確認して、アルテミシアが説明を再開した。


「基本的なルールがいくつかあるから、まず聞いて♪

 色々な武器を試すのはその後で…♪

 かいつまんで説明すると…」


・自分の物しか扱えない。

・常に一つしか扱えない。ただしもともと二刀用の剣や、弓矢や、投げナイフのセットなど、複数でひとつという物もある。既存の別の武器との二刀流や、盾などとの併用は可能。

・手元を離れても、自分の手に引き戻す事が可能。ただしほんの少しの時間、|呼吸にして一つ二つほどの時間がかかる。

・もし破壊されても再生する、ただし空間の魔奈を消費するので、差はあるが少し時間がかかる。


「…というルールは覚えておいて頂戴♪

 あと、私は解析を続けるから、何かわかったらまた教えるわ♪

 みんなも、何かあったらすぐに報告して頂戴♪」



ここで解散にしよう、としたら、質問があった。


防具(ボーグ)はぁ。ないのですかぁ~?」

また酔っぱらい娘ラシュナスだ…。


「ほら~ぁ、こういぅ~、ぐっとくいこんでるやつとかぁ、前の上と下しか隠してないみたいなのとかぁ、ギリギリなカンジのやつぅ、きぼう~ぅ!」

ラシュナスが言うのは、要するにアルテミシアやフローレンが着ているような防具だ。


「えーとね、但し書きみたいに書いてあったんだけど、これは訓練用のとりあえず装備で、正式な防具、的なものは、次回…ですって♪」


「次回…って…?」


「最後に出てきたあの古代文字に“次回”って書いてあったの。

多分、訓練兵から正規兵になる時に受け取る物じゃないかな…

もしその次の“LV2”みたいなのが手に入れば、もっとすごいんでしょうね♪

…存在すれば、だけど…♭」


このもらった“ヴェルサリア武装倉庫”だって、過去の遺産である。

正式にそのお姫様からもらって、正式にその兵士になった、訳では無い…。


だから、“次”なんてものがこの時代に現存しているかどうかも不明だ…

それに現存していたとしても、手に入るかどうかなんて判らない…。


「ざぁんね~ん…」

ラシュナスは、相方に引きずり降ろされる前に、意気消沈して大人しくなる…。


「まあ、仕方ないわよ…。これは、訓練兵に贈られる、とりあえずの装備、みたいだから…♪」


「とりあえずの装備、ねえ…」

綺羅びやかな女の子たちの武器やアクセサリを眺めながら、フローレンがつぶやく…。


「にしては、アクセサリと武器が選び放題とか、各種防御効果とか…かなり豪華な感じなんだけど… しかもこんな大人数分… 

これ、値段にしたら、かなり高いんじゃない…?」


レイリアが言うまでもなく、冒険者としてはまず、アイテムの価格が気になるところだ。


「そうね…売ったらかなりの値がつくでしょうね…♪

 でも、売れないのよ♭

 絆装備だから♪ 所有権を放棄しようとすると消えちゃうらしいわよ♪


 …あと、これをお金目的で販売することは“禁止”だって…

 無関係な他者への販売は絶対ダメって、釘を差されたから…

 だから余っている分を売って生活費に当てるとかはできないの♭」


そう言ったアルテミシアは、ちょっとクレージュに対して、謝るように目を下げた。

この指輪を、商業都市アングローシャの冒険者御用達の店で売却すれば、ここに住んでいる全員の何ヶ月もの生活費に当てる事ができるだろうから…。


「それはいいわよ。

 でも…こんな価値の高そうな物を簡単に譲ってくれる貴女の友人って…?」


クレージュが気になるのは、相手は相当な資産家ではないか、という事だ。

知っている商人や貴族の誰か…ではないか、と勘繰(かんぐ)っている。

でも、それはどうやら違う、ようだ。


「昔からの馴染みでね、いい子よ♪ ちょっと変わった子だけど」

アルテミシアも充分変わっているので、まあそのへんは言い方の問題だ。

魔法使いという時点で、普通ではないと言えばそうだし…。


「冒険者とかじゃない普通の女の子が増えてきた、って話をしたらね、

 これいるでしょ?って、軽いノリで渡された感じ♪

 みんなにわけてあげて、って言ってたわ♪ 

 お金とか価値のことなんて、なんにも…」



このヴェルサリア訓練兵女子の論理魔法装備、通称“LV1”は、ここにいる全員に行き渡った…けれども、まだ半分以上も…百個近くも残っている…。


管理担当カリラや料理人セリーヌ、その娘のプララやレンディはここを離れて戦いに行く事はないであろうが、それでもアルテミシアはこの“装備”を渡した。

まだ小さなプララとレンディは大喜びだった。

けれど、その母親であるカリラやセリーヌは既に受け取った後だったけれど、事前にわかっていれば「自分たちに武器はもったいない」と、断っていたところだ。


だけどこの先、何があるかわからないし、第一この二人も大切な仲間であることに変わりない。

それに、防御以外の効果も有用なのだ。

「例えば、熱耐性の効果があるから、調理中に火傷をしても軽く済むわよ♪

それに熱いの寒いのも負担になりにくくなるし、怪我しても治りが早くなる効果もあるしね♪」

とアルテミシアが説明すると、


「なるほどね」「それは、助かるわ」

と、納得して受け取った後は…アクセサリを好きな色と形に変えて楽しんでいるあたり、彼女たちもやはり女子であるのだ。

ちなみに、カリラは事務員らしく落ち着いた紫水晶(アメジスト)のブローチで、セリーヌは娘とお揃いのオレンジの花の髪留めだ。

この二人はお母さんだけど、まだクレージュと同年だし、割りと美人だし、女性としても全然イケてる感じで、可愛らしいオシャレも似合う感じなのだ。



ここで今月の朝の全員集会は終了となった。


解散となって、仕事のあるメンバーは作業に入り、それ以外の子たちは店の裏手の空き地に行って、武器のイメージングや練習を行っている。


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