35.女子兵は脱いだほうが強い…?
今回も、女の子たちの装備話ですが…ちょっとエロ度高めです…
「じゃあ、解析結果を発表するわね♪」
アルテミシアが説明を始めると、とりあえず女の子たちもアクセサリ遊びを中断した。
「えっと、まず…通常の物理耐性は…
“1点未満のダメージを無効”…、まあ論理魔法装備のお約束なやつね♪
これが通常時、ね…♪」
小さな傷はほぼ無効化する、という、論理魔法装備には必ず記述されている、お決まりの基礎防御だ。
高い防御効果のもので小さな攻撃を防いでいると、効率が悪い。つまり魔奈を余計に使わせるので、負担がかかる。
なので論理魔法装備はだいたい二段階以上の防御構造が記述されている。
一段回目が、“1点未満のダメージを無効”、そして二段階目に本来の防御効果の守りがある。
「そして…戦闘時には…最大+4相当…、かなりいい物ね♪」
これが二段目にあたる、本来の防御効果だ。
「+4ってどのくらい?」
「そうね…硬い革の装備くらい…いえ、もうちょっと上、くらいかな♪
たぶん、金属鎧まではいかない程度だと思う…」
「鋲打革鎧とか、蝋煮革鎧くらいって事かな…?」
フローレンもそれほど一般的な武装に詳しい訳じゃあない。
「まあ、単純に数値化って難しいんだけど、+4はまあ大体そのくらいだと思う♪」
アルテミシアも、大まかにしか知らない。だいたいの感覚だ。
もっとも、一般的な防具は、形状によって防ぎやすい攻撃など、特性も変わる。
例えば鎖編鎧は斬撃を通しにくいけれど、鈍器などの衝撃は抜けてきやすい。
そういう特性を踏まえると、単純に数値化できるものでもないのだ。
だから“+4相当”というのは、だいたいの目安ではある。
女の子たちは説明を聞きながらも、ぼーっとした感じだ。
冒険者でもない普通の女の子に、いきなり武具の話をしても、理解できないのは仕方ない…。
なので、フローレンが質問を続ける形になる。
「矢とか剣撃までは完全に防げないけど、かなりの軽減効果は見込めるって感じ、でいいのかな?」
「そうね♪ そして、その防御力が全身に行き届く感じ♪ 髪の毛の先まで、ね」
それが論理魔法装備の特性だ。
その効果は、装備者の全身に及ぶ。
論理的な魔法の文言が、全身を守るように“記述”されている“防具”だからだ。
鎧で覆っている部分しか守れない、通常の防具とは違うのだ。
「論理魔法装備は、それを着用する女の子の身体を流れる魔奈の循環を利用する構造となっているの♪
だから、その子の魔奈循環が重要になるのよ♪」
「ところで…♪
肌を露出させて、女の子特有の部分を薄くしたほうが、魔奈循環効率が上がる、っていうのは知っているかしら?」
と、アルテミシアは、ちょっと色っぽく自分の胸元に手をやったり、腰を傾けておしりを強調するような姿勢を取った。
そう、魔奈循環を阻害する主な要因は、その女性が纏う衣類なのだ。
「えっ? 脱いだほうが…」「強くなる…ってこと…?」「…ですか…?」
三人娘がそろって、不思議そうに、その妖艶な魔女の姿を見つめる。
「まあ、言ってることはそれで間違ってはいない…んだけど…
まあ、脱ぐ、ってほどでなくても…、できれば、お胸やお尻がちょっと無防備な方が、魔奈効率がいい、って事なの♪
逆に魔奈を阻害する他の鎧とか分厚い服とか着てると、防御効果が働かなくなる、ってことだけは覚えておいてね♪」
「この指輪の効果だったら…
身体を覆い隠す鎧なんか着込んだら、まず防御効果が発動しなくなる…(+0)
薄手の鎧だったら半分くらいは、効果減退って感じ…(+2くらいかな?)
鎧と併用するんだったら、フローレンが着てるみたいな、お胸やお尻を半分出してるような形のだったら、魔奈効率がほとんど下がらない感じよ♪(+4のままね)
でも、私達くらい露出しなくても、今みんなが着てる運動着くらいなら、それほど問題ないわよ♪(+3は保てそう)」
その運動着もけっこうぴっちりしてて、特に下の方は走ったり激しく動くと、後ろが多少なり食込んでくる…。特に十週ランニングの後はみんなけっこう、きゅっ、となってしまっているし、それ以外の訓練中にも女の子たちは、合間にそれを指で直したりしてる…。
「は~い!」「よくわかりました!」「…わかりました…」
今の説明で、この三人娘はじめほとんどの女子は理解したような感じだった。
「はーい、しつも~ん!」
テーブルに乗っかって腰掛けているのは、踊り子衣装のラシュナスだ。
ちょっと、いや、かなり…お酒に酔っている…。まだ朝なのに…
「じゃあ~、何も着て無くてもぉ、守られるのぉ?」
「まあ、そういう事ね♪」
もちろん、このアクセサリをつけていれば、だけど。
「やったぁ~~! はだかぁ! みんな、はだかがいいよぉ~!」
と言って、ひとりで嬉しそうに騒いで、ついでにそのひらひらな衣装を脱ぎだそうとするラシュナス。
「今アルテミシアが、そこまで脱がなくてもいい、って言ったでしょっ!!
あんた、ややこしいからだまってなさい! あと、ちゃんと服着ろっ!」
相方のレメンティがそれを引きずり下ろして、脱ぐのを阻止し、大人しくさせた。
アルテミシアはそんな妹分の行動に慣れっこな感じで、動じず言葉を続ける。
「いいえ。全部脱ぐのはお勧めしないわよ♪
完全に出しちゃうと逆に魔奈が身体から出て行っちゃう感じになるからね♪
上も下も、女の子の大事な部分は、魔奈が流出する部分だから、
そこだけはちゃんと隠さなきゃいけないのよ♪」
アルテミシアはそう言うと「私達みたいに♪」とフローレンと立って並んで見せた。
胸元が空いてかなり股間に食い込んだボディスーツと、胸と腰回りしか隠さない花びらの鎧。
アルテミシアやフローレンが性的に魅力のある格好をしているのは、実のところ、魔奈効率による防御効果の高い姿だという、ちゃんと意味があるのだ。
「おむねとかぁ、ぎりぎり隠すくらいが、いいって事ぉ?」
「そう♪ だけど、そこまでギリギリじゃなくてもいいけどね♪ こう…お胸とか、お尻とかのお肉は半分くらい…、鼠径部のお肉はちょこっと出すと、魔奈循環効率が良くなるカンジね♪」
アルテミシアはフローレンの、大きく開いた豊かな胸の谷間の部分を指差し、
次に自分の股間部にボディスーツの食込んだ鼠径部の肉を指で示して、
ついでにフローレンも一緒に後ろ向きになって、ボディスーツからもれたお尻の肉をさするようにしながら説明した。
おまけでフローレンのお尻の露出した部分を撫でると、「きゃ!」とフローレンが軽く驚きの声をあげた。
「おぱーいとか、おしりーとか、出したほうがぁ、まなみちゃんこーりつがいぃ、ってことで、おけぇ?」
「まあ、言いたいことは合ってるわよ♪」
「りょうか~い! ぜんらがいちばんつよい、ってことですねぇ~~」
ラシュナスが、またテーブルに座って、また脱ぎだそうとして…
「こら! 違うでしょ! 全部脱いだら逆にダメって、言ってたでしょ! あんた、話、聞いてたんか!」
と、相方のレメンティに激しく諭され、また引きずり降ろされる…。
「まあ…論理魔法の構築の仕方で条件は微妙に変わるんだけどね♪
ラシュナスが言うように、全…は聞かないけど、下にヒモみたいの一枚だけで、
上は完全に出しちゃうような半…兵装とかも、古代にはあったみたいだしね♪」
「え゙~! なにそれ~! めっちゃ、きょうみある~~~~~!!!」
「あんたはー! もういいから!」
さっきより格段乗り気な感じでラシュナスが盛り上がっている…
相方が止めようとするのだけど…興味の強さのせいか、今回はなかなかしぶとい…
「でもぉ~、まるだしって~…ゆれたり、しないんでしょ~か~?
ぁたしなんてぇ、ぷるんぷるん、なんですけどぉ~?」
「魔法装備なら、支える効果もあるって事でしょ! あんた、学びなさいよ!」
まだ言ってる酔っ払い娘を、やっとの事で引きずり下ろすレメンティ。
この二人の漫才みたいなやりとりに、女の子たちは唖然としている…
「はい、気を取り直して…♪」
「えっと…ハダカみたいな格好になったほうがいい、って事…?」
「必要だったら…あたし、頑張ります…けど…!」
「あ、わたしもがんばる! がんばって、脱ぎま~す!」
「まあ、仕方ないわねえ…」
海歌族の四人が、エロトークにつられて、そんな事を言いだした…。ちょっと顔を赤らめてる、のだけれど…
(なんでそんなに嬉しそうなの! 脱がなくていいって言ってるでしょ!#)
さすがに人魚族はエロい事に慣れてる…というか…イヤって感じじゃあないので、けっこう好きなのでは…?
「あ、いいえ、脱がなくても大丈夫だから…♭」
酒に酔ったラシュナスに、ヘンな世界に引っ張られないうちに、四人を引き戻した。
女子たちの中で、元ショコール兵の四人は、論理魔法装備に馴染みがある。
ショコール兵の、あの腕と脚丸出しの紺色のボディスーツは、たしかに論理魔法装備だった。脱いでも守れる、という意識が合っての、先程の発言だ…と、信じたい…。
「本来はね、フローレンが来てるような鎧とか、私のこういうボディスーツみたいなのに、論理魔法が記述されてる事が多いの。こういう指輪だけで身を守る、ってのはあまり聞かないわね…」
「じゃあ、みんな揃ってフローレンさんみたいな鎧を着ればいい、って」
「おそろいって、いいですよよね~!」
なぜか、火竜族の二人まで、エロエロにノリノリだ…。
「フローレンみたいな鎧って、この辺りではあんまり流行ってないよ。
うちの工房でも作ってないし。魔法装備じゃなきゃ実用性ないからね」
髪で隠れていない側の耳に、炎のような橙色のイアリングを輝せながら、その二人の“姉御”に当たる人物は、わりとマトモな意見を述べた。
レイリアの言うことはもっともで、魔法的な防御が無いなら、胸や腰だけ覆うような鎧は、あまり意味がない。
レイリアは上下セパレートな割と肌を出す格好をしているけれど、彼女の場合、身体に炎を纏わせて身を守っているのだ。これも魔奈循環と無関係ではないのだ。
「わたしみたいな感じの鎧って、北のルクレチアに行ったら、女兵士や女戦士はみんな着てるけどね。軍神シュリュートの神殿で作られる女の子鎧は、覆う部分は少ないけど、低ランクの論理魔法装備だから」
フローレンは北のルクレチア、つまり旧ブロスナム王国、その中でも特に軍神シュリュート神殿の勢力の強い地域で幼少を過ごしているので、戦う女性が肌を晒す鎧を着ているのが当たり前のような認識がある。
だから花びら鎧のような僅かしか覆わない鎧姿に抵抗がないのだ。
羞恥心がないわけじゃあない。フローレンはむしろ恥ずかしがり屋さんだ。
「論理魔法装備だから、毎日そんなムネとかシリとか丸出しな格好してても大丈夫、って言いたいんだろ?」
レイリアは、フローレンのほうに視線を向けながら言った。
ちょっとフローレンを誂うように言った感じだけど、当のフローレンが(鈍くて)気づいていない…。
「そうね♪ “1点未満のダメージ無効”効果のおかげで、いつもそんな格好でいても、小さな虫に刺されたり、草とか小石とかで傷つけて肌を傷める事もほとんどないって訳♪」
「その効果が無いただのハダカみたいな鎧で冒険に行ったら、大事なお肌が大変な事になる、けれど…」
「この指輪の魔法の守りがあれば、何も着てないような格好で外に行っても大丈夫って事…ですよね?」
そう質問したのは、活発なディアンとネージェだ。
「そう♪ 細かいケガをしなくなる、という意味では、それで正解よ♪」
「すごーい!」と女子たちは盛り上がった。
だいぶ論理魔法装備についての理解が深まってきている感じだ。
「で…他の論理魔法の装備との併用は不可…常に高い方の効果が優先して現れる事になるわ。まあ、これは論理魔法装備の常識だけど… だから私とかフローレンとかユーミには、防御関連の効果は全く無い感じね♭」
フローレンの花びら鎧も、アルテミシアの月影色のボディスーツも、ユーミの極光色の毛皮も、はるかに高レベルな論理魔法装備に当たる。
ただアクセサリの付け替えを楽しむ事はできる、ので持ってる意味はある。
そこは女子として、必要な要素だ。
「あとは、防御効果以外にもね…
冷熱耐性LV1、ある程度の暑さ寒さでも快適に過ごせる効果…
魔法耐性LV1、魔法攻撃の効果を弱める効果…
精神耐性LV1、精神干渉に抵抗する効果…
低速治癒LV1、傷の自然治癒を助ける効果…傷跡が残りにくい…
病毒耐性LV1、病気や毒気にかかりにくく、治りやすい…
流動加護LV1、矢などの攻撃を逸らす効果…
他にも、日光軽減、水流圧軽減、落下軽減、
電撃とか酸とか振動、に対する耐性までLV1か…
指輪ひとつなのに、なんか豪盛ね…♪
あ、こういう防御以外の効果も、重い鎧を着たり厚着したら効果がなくなるから注意してね♪ 何度も言ってるけれど、論理魔法装備は魔奈の流れを阻害しない事が重要だから♪」
「冷熱耐性…?
…という事は、寒い時でも、脱いだほうが暖かくなる、って事ですか!?」
お姉さんなウェーベルが挙手をして質問した。
今までのことをしっかり聞いていたから、こういう質問が出るのだ。嬉しい事だ。
「まあ、そこは…場合によりけり、かも♪ LV1程度だと寒すぎるのはさすがに防げないからね。今の時期だったら裸でも快適に過ごせるけど、雪が振る季節はそれなりの衣服は必要…くらいかな?」
アルテミシアの説明に、うんうん! なるほど! と頷く女子が増えてきていた。
「他には、えっと…♭ 生理欲求耐性LV1…♪
「なにそれ?」
フローレンにもそれは馴染みがなさそうだ。
「お腹が空いたり、眠たくなったり、まあ他にも生理的な諸々の事を、我慢するんじゃなくって、身体が軽減しちゃう、って能力ね♪ まあ、無効化できるわけじゃあないから、寝たり食べたりその他、我慢はしないほうがいいわよ…」
女子たちの反応は、なんか便利そう、みたいな印象だ。
本来は、長い時間の行軍や警備に耐えるためのものかもしれない。
「あと、兵士意識LV1♪」
「今度こそ、何、それ!?」
「まあわかりやすく言うと、持ち主に兵士としての意識を与える、って事♪」
その説明では、わかりやすくないようで、誰も理解した感じはなかった。
「ん…♭…えーとね~…♭♭」
アルテミシアはみんなにわかるように説明しようと言葉を選んでいる。
「どんなに強い装備を持っていても、実戦経験のない子が戦場に行ったら、どうなる? フローレン?」
「まあ、足がすくんだり、相手を斬ることを躊躇ったり、するでしょうね…
あ…! それを克服するような能力って事?」
「そう♪ 論理魔法の定義を訳してみると、
“戦闘に慣れた兵士のような意識を宿らせる”って事みたい♪
ここにいる子たちみたく実戦経験が無い子でも、既に一度二度くらいは戦った事があるような感覚で戦えるはずよ。さすがにLV1って程度だから、歴戦の兵士って訳にはいかないでしょうけどね」
兵士としての生死に関わる覚悟や、悪人や敵であれ斬ることへの躊躇や恐怖、
そういったものは必ず誰にでもあり、性格の良い子ほど、優しい子ほど、その気持ちはあるはずだ。
だがその優しさは、逆に自分や仲間の命取りになりかねない。
しかも、そういった精神的な能力は、日頃の訓練だけでは身につかず、実戦を経験しなければならない。
その意識の底上げができる、というのは、実は初めて戦いに臨む者にとっては、非常に意味が大きい。
初戦で相手を斬るのをためらって自分が斬られれば、そこで終わってしまうのだから。
「論理魔法装備って、わりと実戦向きに考えられてるのね」
「というよりは…その逆、かしら?
実際に作られた物を女兵士たちに使わせて、戦闘とかのデータを取って、再試行を繰り返しながら、何回もヴァージョンアップされている、って聞いたわ♪
ヴェルサリア時代の何百年にも渡って開発されてきた技術、って事でしょうね♪」
「それは確かに、有用なはずだわ…」
実地と検証によって何回にも渡って見直され、書き直されているのだから…
「まあでも、今回のこの装備が古代ヴェルサリアのいつの時期の物か、っていうのはわからないけど♪」
新しいものかもしれないし、古いヴァージョンのものかもしれない。
だけど、今説明された効果だけでも、充分すぎる程だろう…。
「そろそろ、次の説明…いいかしら♪」
アルテミシアの元に、全員の目が集まった。
その説明をしっかり聞こうと、真剣な眼差しで見据えている。
早くも“兵士意識”が発動しているのだろうか…?
「では次はいよいよ、武器について、ね♪」




