32.ツンツン占い師とデレデレ踊り子
しばらくまった~り女子トークが続きます…
ちょっとエロっぽい表現多いですが… まだR15で大丈夫!…なレヴェル…のはず…
「たらいま~!!」
甘く陽気な声がクレージュの酒場の、その店内に響きわたった。
その甘ったるい声は、いきなり店に入ってきた、肌も露わな妖艶な乙女から発せられていた。
一瞬収まる酒場の喧騒。
そして…
「お! ラシュナスちゃんだ~!」「おかえりぃ~~!」「まってたよー!」
「今日は? 今日は踊るの?」「踊って、踊って!」「いっぱい脱いでー!」
男客たちの歓喜の声が響いた。
えらい人気だ。
そのラシュナスと呼ばれた、見るからにふしだらそうな衣装の、つまりエロい格好した娘は…
頬がピンクに染まっている。
明らかに、誰が見ても酔ってる。
それも、かなり出来上がってる感じだ。
「ちょ、ラシュナス…まちなさいよ!」
続けて今一人、彼女を追って、やや褐色肌の神秘的な女性が入ってきた。
あわてて追っかけてきた、この娘の相方、レメンティだ。
「あら…? レメンティ、ラシュナス!?」
「ごめん…クレージュ…! い、今帰ったわよ!」
本来は明日の予定、で、かなりサプライズな帰還だった訳だけど…
酔った状態で帰ってきたラシュナスにはさらにサプライズだ…。
「ラシュナスちゃんのぉ、ご帰還れ~す…!」
あきらかに酔っ払って出来上がっちゃってるこの娘は、店中に愛想を振りまくように、エロエロな笑顔を撒き散らしながら、大きく手を振っていたり、ちゅっ、とキスを飛ばしたり、横を通る男性客と握手したり…
このクレージュの店に住み着いていて、人気のある踊り子で、しかも男性客の中には運良く“夜のお相手”までしてもらった人もいることだろう…。
もっとも、それはけっして安くはないけれど…。
で、まあ、酒の入ってるお客たちも、そういう裏表ないエロカワ娘の雰囲気にのせられてノリノリに盛り上がる。
そしてどんどん酒が進み、さらに盛り盛り上がり、お店の売上もアゲアゲになるわけだ。
だけども…その騒ぎの元であるラシュナスは、かなりフラフラだ。
酔ってふらついて、テーブルにつまずいた。
で、よろめく…。
「あらぁ? ごぇんなさぁぃ…」
そこにいた男性客に抱き抱えられている。
その手が、ちょうど、大きい丸い柔らかい場所を、むにっと掴む形になってしまっている…
ここで清純な女子、たとえばフローレンだったら、「なにするのよ~~!」と相手を平手で叩くだろう。相手に非がなくても、だ。
ここで乱暴な女子、たとえばレイリアだったら、何も言わず相手をシメるだろう。相手に非がなくても…。
このふしだら娘ラシュナスの場合、、不可抗力とは言え、触られた事など気にもしていない。そしてそれは、別に酔ってるからでもない。
「ごめぇんねぇ~~…ぁりあとぉ~」
と、その男性の頬にお礼のキスをしようとまで…
「こらぁ! シャキっとしなさい!」
と、その酔っぱらい娘を引っ張り上げるようにして、その行為を寸前で止めしたレメンティ。
そのお客に「ごめんなさい! ごめんなさい! うちのラシュナスがご迷惑を…」と頭を下げながら、この足腰おぼつかない泥酔娘を、引きずるようにして店の奥へ連れて行く。
まあ、その偶然の幸運に見舞われた男性は、うれしい想いをし、最後だけちょっとガッカリな感じだった…けれど…
相方が倒れ込んだ事が、ごめんなさい、なのか、
キスさせてあげなくて、ごめんなさい、なのか
それとも…周りの他の男客からの羨ましい目線が痛々しくて、ごめんなさい、なのか…果たして。
ラシュナスは妖艶な踊り子だ。
その名前の響きは、東方やや北よりにある、荒野の国ラファールの出身を思わせる。
身につけているのは、半分透けているような薄ピンクの長い帯を、何枚か合わせて身体に巻いている感じの衣装だ。ひらひらが動く度に、色白な脚がちらちら見え隠れし、その上のお尻の丸みまで時々、いや頻繁に露わになる…。
で、明らかに「はいてない」感じなのもわかったり…まあ肝心なところは隠れるけれど…、上もお胸のまるっこいのがかなり際どいところまで見えそうになっていたりする…。
この子は髪もピンクの雑なふわふわ髪だ。目の色もピンクだ。
この子は夢魔族とも呼ばれる夢の妖精の血が非常に強い、という風に見られている。加えて海歌族や空歌族の血も混じっている、らしい。
その三つの妖精は、妖精の中でも特に魅力的で、いわば“性的”であると伝えられる。
つまりラシュナスは、これ以上ないくらい複合型妖艶乙女、というわけだ。
目つきも、とろ~んとしていて、流し目が特に…エr…色っぽい…。
冒険者組の中ではフローレンと同じ歳で一番年下にあたる。
そのくせ、このお店ではクレージュに次ぐ胸の大きさで、つまりフローレンやユーミより大きい。
それでもって、いつも露出度の高い衣服しか着ない…という、つまり、エロいとしか言いようがない淫靡乙女…
そしてこんな衣装でそのまま踊りを披露したりするのだから、当然のように男性人気はとても高い。
彼女のファンの男客たちも、彼女の踊りを楽しみにしていたが、ここまで酔ってしまって出来上がっている様を見て、
「あー今日は踊りは無しだな…」と悟って諦めている…。
久々にヒラヒラのスケスケ衣装で、メロメロでエロエロに酔っ払ってる、色っぽいラシュナスの姿を見れたから、「まあいいか」「楽しみは明日だ」と、納得している感じだ。
性格的に裏表のない、悪気もないこの娘は、わりと愛されキャラである。
占い師レメンティ
そのラシュナスの相方、というかいつも世話を焼き、振り回されている女子…。
頭にはきらびやかな半透明のヴェールを被っている。
顔を隠しているわけではないので、少し褐色の肌に深い黒髪の映える、東方系の美女である事がわかる。
上半身はヴェールと同色の少し分厚い布帯を、肩から掛けて、交差させて、胸を支え隠している感じの軽い衣装のみ、で細腰は露出、
下も同色の、ぴちっと密着した生地の薄いパンツで、腰から足元までを露出なく覆っている。あまりにも薄い布地のようで、身体のラインがそのまま出てしまっている…
ちなみに、おしりがかなり大きい…。本人は気にしているのだが…。
黄金の三角遺跡で有名な、東方やや南にある王国フリゼンハシュレイムの女性の衣装である事は、知る者が見ればわかる。商業都市アングローシャでもよく見かける、あまり珍しくはない衣装だ。
そしてレメンティは彼の地に多い、富の妖精の末裔らしい。
そして彼の地の上流の女性が黄金を纏うように、レメンティも多くの黄金の装身具を身に着けている。イアリングやネックレス、ブレスレッドから、腰回りの金襴飾りまで。
黄金の装身具は、薄く日焼けしたような、彼女の肌によく映える。
さて、このレメンティは…占い師で、普段は話し方が丁寧で、外見も神秘的、なのだけど…。
ラシュナスと一緒にいると、その行動に対してどうしてもツンツンな話し方になってしまう…
そして、いつも彼女のペースに振り回される訳だ…
相性がいいのか悪いのか…
レメンティは、黙っていれば、神秘的な美女なのだ。
…黙っていれば。
その二人。
足取りふらふらなラシュナスをレメンティが支えて、奥の女子専席まで来た。
みんなが「おかえり!」と二人を迎える訳だが…
そのラシュナスは、ここまで肩を貸すように支えてくれていたレメンティを、突き飛ばすように突き放すと、
「アル姉ぇ~~♪ あぃたかったよぉ~」
と、アルテミシアの隣に来て、その膝下にかがんで抱きつくようにして泣き出した。
「ああ、もう…♪ しょうのない子ねぇ…♭ はい、もう泣かないの♪」
と、アルテミシアも幼子をあやすように、歌のドレス姿のまま、やさしく頭をなでなでしている。
この二人は仲がいい。姉妹のように仲がいい。
ラシュナスがアルテミシアになついている。
多少大げさなのは、お酒が入っているせい…だろう。
この仲のいい二人、月の歌姫と艶やかな舞姫によるステージが、この酒場の夜の見せどころだ。
アルテミシアは歌は披露するけれど、それ以上の事はしない。
ラシュナスは先程のように、男性客によく触れるし、それ以上の事も好きでやっちゃう娘だ。もちろんお金は取るけれど…。
アルテミシアが“遠い”アイドルだとしたら、ラシュナスは“近い”アイドルだ。
お客たちにとっては、そういう両極の娘がいる事で、違った楽しみもあるのだろう。
そして、一つの日にステージに立つのは、どちらか片方だけ。
というルールを、クレージュが作っていた。
「ラシュナス…ここ、座って」
フローレンは席を立って、ラシュナスに座席を勧めた。
「ぁれぇ…?」
そんなラシュナスはフローレンに気づき、みんなと同じことを言った。
「フロォレンちゃん、きょぅは、およぅふく、きてるの…?」
それを聞いて、アルテミシアがクスクス笑っている。
「もう! あなたまで、言うかな? それ!」
フローレンはあきれたように席を離れ、逆側に回って、まだずっと肉を食べてるユーミの隣に腰掛けた。
フローレンは、ラシュナスに席を譲ったというより、近くを避けた、という感じ。
フローレンは、ラシュナスがちょっと苦手だ。
フローレンは、ラシュナスから意識されている。一種のライバル的目線で、だ。
それは “美貌” に関してなのだけれど、フローレンは自分の外見なんて気にもしてないし、当然、自分の魅力をわかっていない。
花びら鎧姿のフローレンはあまりに美しく、傍から見ると、妖艶である。
ラシュナス目線からの言い方をすれば「フローレンちゃんはとってもエロい」
まあ、それはそれで当たっている。
可憐な顔立ちに、清楚な雰囲気。長い優雅な薄い紅金色の髪。
花びらの胸当てから溢れそうな、ふくよかでやわらかなお胸。
花びらの上下に挟まれた、きゅっと細い腰。
花びらの腰当てから垣間見える健康的な生の脚、
そして腰当ての後ろ側が半分くらい隠しきれていないお尻の丸みと、
前側からちらちらと見えそうで見えない乙女の秘密。
天然でお花の香りまでする汚れなき柔肌を、惜しげもなく見せつける。
美とエロに強いこだわりのあるラシュナスは、こういうフローレンに対して、当然、あらゆる意味で強い興味を持っている…
裏表ないこの単純天然娘の場合、ドロドロした敵意な感じじゃなく、
「一緒に美とエロを盛り上げよう~」みたいな感じで接してくるので、
そういった事に理解のないフローレンは、自然とこの娘に対して苦手意識が先立つわけだ。
ラシュナスが近くにいると突然、フローレンの胸当ての間に手を入れてきたり、腰当ての中に手を入れてきたり…、だきついてお顔をすりすりしてきたり…
で、フローレンがびっくりして可愛い声を上げて驚く事があったりする。
ので、フローレンはラシュナスから距離をとるのだった…。
つれてきてあげたのに、いきなり放り出されたレメンティも
「ちょ…! あんたねぇ! お礼の一つくらい言ったら!?」
とツンツン説教するも、ガン無視だったので「まあいつもの事ね」とあきらめて、フローレンの隣りに座った。
目があったフローレンとレメンティが、肩をすくめ、首を傾げる。
お互いに、何も言わなくても通じている感じだ。
迷惑を被るこの二人も、悪気のないラシュナスに対しては、それ以上に悪く思う事もないのだ。
レイリアは相変わらず、カウンター席で飲んでいる。
みんなのほうに半分身体を向けているので、会話は聞いているようだ。
お酒が無くなるとすぐに、金褐色おさげ髪のほっそり系ウェイトレス、メメリがお酌をしに来た。
前かがみにお酒を注ぐと、メイド風ウェイトレス衣装の、超短いミニスカの後ろ側が派手に盛り上がるようになって、おしりが大きいのがかなり目立ってしまっている…。
ユーミは相変わらずお肉を食べている。
彼女の連れだった猟師のトーニャは、別の友人がカウンター席いるのを見て、そっちに移っていった。
この面々の中で、自分程度がいるのは場違いだ、と思ったのかもしれない。
今ここに座っているのは、店主のクレージュを含めて冒険者組の七人だけだ。
「っていうか…ラシュナスったら、なんでこんなに酔ってるの?♪」
アルテミシアが隣の席でまた飲み始めたこの妹分を、不思議そうに見つめる。
「あ、それね…この子、帰りの馬車の中で、かなり飲んじゃってたから…
いや、あたしは、飲むな、って言ったのよ!
帰ってからみんなで一緒に飲むほうがいいでしょ!?」
レメンティは止めたけど、彼女の言うことなんて聞くはずがないのがラシュナスという娘だ。
「帰ってからもぉ、いぱーい飲むからぁ、いいのらぁぁ!」
「よくないでしょ!
そ、そんな事してるから、稼ぎがぜ~んぶお酒に消えちゃう訳でしょ!
てか、あたしの稼いだお金まで酒代に使うなっ!」
まあいつもの仲良し喧嘩が始まった…。
「今日かぇる、って言ったからぁ、馬車さんのぅぇでのめるよぉにぃ、いぱ~い、ぉさけ、買ったのらぁ~」
「あ、えと、クレージュにわたす分は、ちゃ、ちゃんと残ってるから!
商隊の稼ぎの分ね。あと、私の占いと、この子の踊りで稼いだ分も!」
レメンティはどこから取り出したのか、金貨の入った袋をクレージュに手渡した。
「いや…自分の稼ぎは自分で使ったらいいわよ? お酒に変わったお金って…?」
クレージュはずっしり重い金貨の小袋を手のひらでつかみながら、聞いた。
「使っちゃったのはぁ、オトコのヒトとぉ、ネた分だよねぇ~?」
「ば、ばらすなーーー!」
まあ、ラシュナスは当然、として…
だけじゃなく、レメンティもそういう行為をするのは、みんな薄々は知っている…
そこを、黙っておけばいいのに、わざわざ反応するからドツボにハマる訳で…
で、そのドツボを自分で深掘りしてしまうのが、このがっかり神秘的美女なのだ…
「い、言っておくけどねぇ、あたしの場合、その人の運気を上げてあげるのが目的なんだから! その人の気を操って上げてあげるの! キモチよくなるのが目的な、あなたとは違うの!」
「でもぉ~レメちゃんったらぁ、あな、ぜんぶ、つかうんでしょ~?」
「そりゃ、つかうわよ! 三つとも! 用途に合わせるのって、大事な事でしょ!」
レメンティはけっこう声が大きい。会話に白熱すると、更に大きい。
「…あのさ…レメンティ…」
そして会話に熱中すると、周囲が見えなくなる…
「全部聞こえてる、よ…」
周囲の男性客が、みんな揃ってこっちを見ている…。固まった表情で…。
「あ…」
真っ赤になるレメちゃんのお顔。
「いあy、いやあ、やy…! ま、まmまっって!
い、今の、ナシ、ないなし、あぁぁぁ~~」
ヴェール姿の神秘的な…はずの東方美女は、顔真っ赤で両手振り回して、必死に、超必死に、男性客たちに無い無いアピールしてる…
男性客たちも「ああ…」「うん…」「はい…」みたいな感じで、聞いてなかったふりをするしかない…。
このように、彼女は黙っていれば神秘的なのに…、非常にがっかり女子なのだ…。
「でもどうして」
クレージュが空気を変えようと、話題を振った。
「今日、帰ってくる事にしたの?」
予定では明日のはずだったけど、何故か今日帰ってきた。
いつもは一両日遅れて帰ってくる事が多い。
大抵はこのラシュナスが面倒ごとを起こすので、帰還が遅れるのだ…。
「それはぁ~…、なんかぁ、レメちゃんがぁ、いそぃで、かぇる~~ってぇ、
馬車ちゃん借りてぇ、走ってきたのですぅ~」
言いつつラシュナスは、自分でお酒を注いで、ぐっと一息に飲み干した。
これだけ酔っていても、まだ飲むのだ。この娘は。
「う、占いの結果が出たのよ!
“聖なる樹に集いし聖女たちに、小さな恩恵の朝、来る”って
あー…つまりね、明日の朝に何かありそうだったから、早く帰らなきゃ、って帰ってきた訳!」
レメンティの占いは意味不明だ。
だけど後になって考えると、必ずその意味は当たっている事に気づく。
ここにいるメンバーはみんな、その事を知っている…。
「え…? 明日の朝…? 何か起こるの!?」
フローレンも驚いている。
「え…? 別に、何も…予定、ないよな?」
レイリアも懐疑的だ。
「え…? 私、まだお仕事の日程、相談してないわよね…」
とクレージュも訝っている
「え…? じゃあ、何…? 私の、あれ、かな…?♭」
アルテミシアの一言に、視線が集まった。




