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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第3章 星空の洞窟
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27.お部屋とお風呂とフローレン


クレージュに後の事を任されたフローレンが、今日ここに来たばかりの三人の女の子たちを部屋に案内する。この店の女子たちが暮らしているのはここの二階だ。


この店の二階には部屋がたくさんある。

もともと酒場 兼 宿屋にするような構想があったのだ。構造上、店舗入り口横の階段から二階に上がれるようになっていて、そういう部屋が五部屋もある。


なぜ宿屋にしなかったのか。

その理由は簡単だ。


最初から居候(イソーロー)が六人もいて、部屋を占領していたからだ。


その六人とは、レメンティ、ラシュナス、ユーミ、レイリア、アルテミシア、そしてフローレン、である…。ただ、彼女たちは不定期収入だけど冒険者という生業(なりわい)があり、現状では町にいる間も各自仕事が無いわけではない。

店主のクレージュに物資や労働を提供しているので、居候(イソーロー)というのは少し異なるかも知れない。部屋を占拠しているのは事実だが…。


フローレンが女の子たちを案内したのは、二階の端の部屋だ。

この向かいの部屋には、ネージェ、ディアン、ウェーベル、アーシャのアヴェリ村組四人が一緒に寝泊まりしている。


案内された部屋の中はすっきりとしている。

洋服箪笥(タンス)がひとつと、小物置きと、大きなベッドがあるだけだ。

お花が飾ってあるので殺風景ではなく、部屋中からいい香りがする。

宿屋予定で作られた部屋だから、向こう側にも扉があり、そちらが本来のお客様用出入り口、今入ってきた扉のほうが従業員用の扉だ。


「はい、このお部屋よ。ベッドが一つしか無いから、しばらくは交代で使ってね」

フローレンが三人の女の子にその部屋を紹介している。

綺麗なベッドは本来お客様用で、男女カップルが二人で寝れる大きさがあるのだ。


「キレイなお部屋ね~!」

「ほんと! 女の子の部屋、って感じです!」

「…すてき…」

「でしょ? わたしのお部屋だから」


「「「え~~?」」」

フローレンがあまりに軽く言ったので、三人が驚きの声を上げた。


「い、いいんですか~、それって~?」

「フローレンさんのお部屋、なくなっちゃう…」

「…ごめんなさい…」


「いいのよ。気にしなくって。わたしはどこでも寝れるから」

自分の部屋って言っても、お花を好きに飾ってあるくらいだ。

私物は何着かの服くらいしかないし、部屋以外で寝ることもけっこう多い。

店のテーブルの上で寝てて、クレージュに叱られたこともある。

店のテーブルの下で寝てた時は、もっと怒られた。

裏庭で転がってそのまま居眠ったり、厩(うまや)で藁(ワラ)にくるまって馬と一緒に寝たことも、何度も。

そして今夜は、夜風に当たりながら寝るのもいいかな、と思っている。


冒険者だから基本的にどんなところでも寝れるのだけど、年頃の女の子としては如何(いかが)なものか、とよく問われるところだ。せめて町にいる時くらいは女の子らしくしろ、と、クレージュによく言われるのだ。

フローレンはこのように、わりと無頓着でテキトー人間なのに、花妖精の血が強いからだろうか、清楚で可憐な雰囲気は保たれるのだ。


「あ~~お花のにおいだ~~フローレンさんのにおい~」

「フローレンさんて、いつもいい香りするんですよね…最初に助けてもらった時から思ってました!」

「…すてきなかおり…だいすき…」


自分では香りがわからないけれど、フローレンはお花の甘い匂いがする、とよく言われる。

花妖精(フェアリエ)の特徴であるらしい。


「いいですね~、ここ…みんな優しくて~…」

「すごく温かいです…ごはんもおいしいし…」

「…やわらかい…おふとん…きもちいい…」


先程の話で、この新しい三人には商売と酒場の両方の仕事を教える事になった。

色々な仕事をさせてみて、女の子たちの適正を見定めようとしていた。

なるべくその子に合う事をさせてあげたい、というクレージュの親心だ。


「明日からお仕事だけど、まずは起きてすぐ訓練よ。朝早いから覚悟なさいよ!」

「「はい! 何があっても頑張ります!」」「ます…」

二人の元気な声が響いて、控えめな声がちょっと聞こえた。


「じゃあね、おやすみ!」


自分の身は守れるようになりたい、。あの子たちからは三人ともそういう意志が強く感じられる。

明日からは空いてる時間を見て、この新しい三人の子たちも個別に鍛えてあげよう

彼女たち自身が、もうあんな目にあいたくない、強くなりたい、そう望むのなら。


女の子たちの適正を見極める、という意味では、フローレンにもその役割がある。

今後の訓練で、女の子それぞれに適した武器や戦い方を教えてあげなければならない。

輸送のお仕事に同行させる、という事は、襲撃される危険がある、という事だ。

先日まで村や町の娘だった女の子だから、鍛えてもすぐには戦えないだろう。


ただ、今後も賊なんかに襲われた時、自分の身を守る程度の戦闘能力は必要だ。

倒す事自体は自分たち冒険者組が一緒にいれば、その辺りの賊程度なら何とでもなる。

だから、体力を作って、守る力を身につける事を最優先に訓練する。


時間もかかるだろうし、やる事は沢山ありそうだ…。

でも、それはまた明日から。


(さ、お風呂入ろ)





「フローレン、さ~ん」

「おふろ、お先でーす!」


お風呂場に行くと、湯上がりの火竜族(サラマンド)の二人がちょうど脱衣所から出てきた。

この二人はレイリアの妹分で、フローレンたちが出発する数日前にここにやって来た。空き部屋がなかったので、レイリアの部屋で一緒に寝泊まりする…はずなのだが、荷物だけ置いてこの二人は倉庫の一角で寝泊まりしているのだ。


何故そんなことをしているか、と言うと、レイリアがいつも遅起きだからだ。

朝練の時間には起きるこの二人は、尊敬する姉御がまだ寝ているのを起こさないように、と気を使って寝る場所を変えているのだ。

決して嫌いな訳でも、先輩が恐い訳でも…いや、恐いかもしれないか…。


(いい後輩たちよね。レイリア、結構慕われてるじゃない)


レイリアは強くてインテリなくせに、酒好きで愛想がなくて乱暴そうに見える上にたまに暴走するような、ある意味破綻人間だけれど、実のところ仲間思いで面倒見がいいのだ。


脱衣場に入ると、浴室のほうから、女子たちの盛り上がる声が聞こえている。


フローレンも衣類を脱ぐため、まずは花びら鎧の換装を解く。

赤い花びらの光の螺旋に包まれ、それが消えると、町娘みたいな普段着姿になって…


(あれ…?)

なってない。


何も着ていない。


「あーー!」


思わず声が出た。

あの娘たちに、服、あげた事を…。完全に、忘れてた…。


(まあいいや…。あとでお部屋に取りに行きましょう)


でもここが脱衣所でよかった…。

胸を片手で抱えるようにしながら、

(街中で裸を晒すような事になってたら…もう、人様の前、歩けないよぉ…)

とか考えてるこの乙女は…

普段の格好も充分に際どい、という事を、自分ではあまり理解していない…

先程までの花びら鎧姿と、布面積的にはそれほど変わっていないのです…。

重要な部分は隠れてましたけど…ほとんどその、重要な部分だけ、です…



「あ、フローレンきたー!」「フローレン、おつかれー!」

「お、お先に失礼です、フローレンさん!」

先に入っていたのは、先月まで村娘だったネージェ、ディアンと、海歌族(セイレーン)の女兵士だったチアノだ。

この三人とも山賊や海賊の捕虜になって酷い目に合っていた子たちだけど、今はもうここの従業員として、商売や物資の仕事に関わっている。

そして強くなるための修行も頑張っている。


フローレンが来た途端、彼女たちの会話が止まった。

脱衣所にまで「きゃっ!きゃ!」と、楽しそうな声が響いていたのに…?


「ねえ、私が来るまでは、何の話してたの? 随分盛り上がってなかった?」

と聞くと、三人は… ちょっと、なんというか、言いづらそうな恥ずかしそうな感じで、身体をくねらせるような、そわそわした仕草を作った。お湯で温まっているから、ではなく、ちょっと顔が赤くなった気がする。


「いやぁん! 言わせないでよぉ!」「フローレンが、聞くぅ? それ?」

「そりゃあ、もう…ねぇ…? 女子三人寄れば…何とやら…って…」


彼女たちの話題が、お色気話だった事は明白なのだけど…当のフローレンにはさっぱりわからない。

フローレンは色恋沙汰に疎(うと)いのだ。驚くほど、疎いのだ。

それをここにいるみんな知っているので、三人が黙り込んだのも仕方がない。


「そ、そんな事より、」

チアノが取り繕(つくろ)うように、あわてて話題を変えた。


「フローレンさん、冒険のお話、聞かせてくださいよ!」

「あ! あたしも聞きたいなー!」

「あたいも興味あるー! 聞かせて! 聞かせて!」


ここの女の子たちはみんな、冒険の事を聞きたがる。流水色の髪がきれいなチアノは“部長”で女の子たちのリーダーで年長でしっかりした女子だけど、こういう好奇心旺盛なところは他の子と変わらない。


「あ、冒険の話ね! いいわよ!

どこから話そうかな…? そうね…、エルロンド大聖堂の西に、けっこう高い山があってね、そこの山中の森に…、え? エルロンド知らない? えっとねえ、ここから北に行って西に行ったとこに大きな聖堂があって、そこではこの大陸で信仰されてる十二神の全柱が祀(まつ)られていて…」

うんうん、と、三人は真剣に聞いている。


「…ラクロアに大きな木があるの、知ってる? そう、この町の半分くらいの幹の太さがあって、すっごく高いその木の上でね…」

三人はとても真剣に、聞いている…。かなり長い時間、聞いている…。


「…とまあ今回の冒険では、わたしはあまり戦うことはなかったんだけど…って、

 …あれ? ちょっとぉ! 大丈夫!?」 

三人がいつの間にか、ぐたーっとしてしまっている…。

逆上(のぼ)せて、話に熱中しすぎたらしい…


「やば…、話オモシロすぎたから…」

「ごめん、迷惑かけちゃったね…」

「反省します…」


一応、食堂の低温倉庫から氷を持ってきて頭を冷やしたりして、症状は大した事なかったので良かった、のだけれど…お風呂での長話はほどほどにしないと…。





坑道であの三人娘に分けて服をあげたので、花びら鎧の“中”には何も着てない。

お風呂上がりのフローレンは、(もちろん、花びら鎧姿で)そーっと、元自分の部屋に服を取りに来た。


そうしたら…


メメリ、キューチェ、ミミア、

三人並んで抱き合うようにして、ベッドで一緒に寝ていた。


(…仲いいわね)


微笑ましくなる光景を眺めながら、フローレンはそっと明日着る運動着と仕事着を持ち出した。


(さ、今夜はどこで寝ようかな…)



お店編女子話、今回で終わらせる予定だったのですが、長くなったので残りは明日に…。

人数多いので誰が誰かわからなくなる…でしょう。なります。軽く読み流して頂ければ、と。

次章でもっと増えるのでご覚悟くださいませw

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