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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第3章 星空の洞窟
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19.朝の訓練と女子トーク


田舎町フルマーシュ、クレージュの店。

今日も変わらない日常がはじまろうとしている。


女子たちは朝の自主訓練の時間だ。

朝練は、フローレンたちがいない日も、ちゃんと行われている。

全員が着替えて集合、上はゆったりした白い短いシャツで、下はぴっちりした青色の短いパンツ、という全員おそろいの運動衣装で活動する。


女の子たちの主席は、海歌族(セイレーン)のチアノだ。

最初からここにいるショコール女兵士四人の中でもリーダーで、フローレンたちがいない時は、この子が指示出しするのだ。

朝の自主訓練も彼女が仕切っているので、誰が言い出したのか、

朝練の「活動部長」みたいな肩書きで呼ばれている。


チアノはもともと水術もある程度こなせる優秀な兵士で、術込みでなら、ここにいる女子の中で一番戦闘力が高いと目される。


海歌族(セイレーン)の他の三人、お店のウェイトレスのアジュールとセレステ、パン屋アルバイトのラピリス、も毎日元気にやっている。



そしてつい先日からレイリアの二人の妹分が加わった。


もちろん二人共火竜族(サラマンド)であり、グィニメグ神に仕える巫女である。

ので当然、炎の術を扱うし、戦闘訓練も受けている。まあ、“姉御”であるレイリアには、二人でかかっても敵わないけれど…。


でも二人共レイリアよりは家庭的で 鍛冶だけじゃなく、ここでは家事のほうも手伝ってくれたりするのだ。まあ、レイリアより家事女子力の低い女性を探す方が難しいのだが……あえて、一人挙げるとすれば、フローレンがいい勝負か…


ガーネッタは深い赤黒色ストレート髪の美人系、おしりのおおきな女子だ。

ネリアンは焔色のゆるウェーブ髪のおっとり系、おむねのおっきい女子だ。


この二人は数ヶ月前にレパイスト島からやって来た。


北の内乱のお陰で武器の発注が増え、レイリアの働いている鍛冶屋が忙しくなってきた。生産が追いつかないのだ。

それでもレイリアは本来冒険者なので、鍛冶屋の仕事を抜ける事がある。しかも何日も続けて。

レイリアが冒険に言ってしまうと、彼女の火術に頼り切りの鍛冶屋の業務は本格的に滞るので、レイリアは仕事を手伝わせるために、二人をこの町に呼んだのだ。


で、この二人はそこで男たちと一緒に住んでいたのだけど、色々(男)問題があって、そちらを引き払ってクレージュの店に寝泊まりするようになった、という訳だ。

鍛冶屋に仕事には続けて行っている。(男)問題を起こし起こされて、職場の雰囲気は微妙なものになっているのだが…。それでも彼女たちが行かないと武器の生産が間に合わない。

大いに尊敬しまた怖れる“姉御”に任された仕事を放ったらかす事はできないので、(男)問題を起こした職場で仕事を続けている…



そこに先月からの、ネージェ、ディアン、ウェーベル、アーシャ、山賊から救い出された四人も、毎日休まず朝の訓練に参加している。


家庭的な二人、お姉さんなウェーベルと、ちっちゃなアーシャは、訓練を始めた当初は町の区画ランニング十週ですら途中で歩いていたけれど、最近は体力ができてきた様子で、走るのも慣れ、朝練にも最後までついてこれるようになった。


畑仕事で鍛えられたネージェとディアンは元々体力があったし、最近では木刀さばきがメキメキ上達している。海歌族(セイレーン)火竜族(サラマンド)の専門的に軍事訓練を受けた他の子たちにはまだまだ敵わないけれど。


そして最初からいるお店のちびっ子二人、商売係カリラの娘プララと、料理長セリーヌの娘のレンディもいつも元気に朝練に参加している。

この子たちも走るのは早いし、戦いのほうも同年代だったら男の子にも負けないくらいに強くなった。




訓練を終えると朝食の時間だ。

食事はクレージュと、料理長のセリーヌが人数分を用意している。


海歌族(セイレーン)の四人の元兵士も、火竜族(サラマンド)の二人も、アヴェリ村の四人の村娘も、ふたりのちびっ子も、みんな一緒に朝ごはんだ。


席も決まっていないので、みんな好き勝手に座って、誰とでも話すし、みんな仲がいい。運命共同体な女子たちは、支え合い助け合って生きているのだ。女子たちはそういう意識的な面も鍛えられている。





朝食が終わると、女子トークの時間だ。

彼女たちの食後の話題は、現在冒険でお店を離れているメンバーの話になる事が多い。みんなフローレンやアルテミシアたちが冒険に行っている事は知ってる。どこに行っているかは知らなくても。



「何日もアルテミシアさんの歌が聞けないと…」「調子でないよね~」

少し寂しそうに話しているのは海歌族(セイレーン)のアジュールとセレステだ。


酒場のウェイトレスであるこの二人は、ステージで歌う彼女の姿をいつも見ている。

アルテミシアがあの月の歌声を披露する時、酒場の中の喧騒が一斉に止んで、そこにいる全員の目と耳が、いや、心さえもが彼女だけのものになる…。

そして、歌い終わった後のあの店中から巻き起こる喝采、あの一体感、歌の余韻…


アジュールとセレステはアルテミシアを尊敬している。

彼女の歌を楽しみにしているのは観客だけじゃあないのだ。


そしてこの二人はアルテミシアから歌を学びながら、二人揃ってステージに立つ事を目指している。

もともと海歌族(セイレーン)だし、歌には適性があるのだ。



「そういえば、アルテミシアさん、ファーギ村のスィーツのお話をしたら、すっごく興味を示してましたね~」

ふたりと一緒の席で食べていた、ちっちゃなアーシャが話に入ってきた。


「え? 何それ?」火竜族(サラマンド)のガーネッタと、

「あたらしい、スィーツ?」料理長の娘のレンディ、

他の子たちもその話題に興味を示した。


「あま~い、あま~い、あんころもち、ってやつです~」

ちっちゃなアーシャは嬉しそうに両手を広げるようにして言い放った。


「それってこのあいだ、みんなで作って食べたやつ?」

そう尋ねる海歌族(セイレーン)のラピリス。パンには詳しいこの子は、おコメのスィーツにもちょっと興味が湧いている。


「あ、あれはきなこもち。あんころもち、っていうのは、こう…」

お姉さんなウェーベルのスィーツ解説に、女子たちの注目が集まる。

女子はみんなスィーツに目がないものだ。


「おダンゴの外に、湯掻いたお豆の甘いコロモをまぶして…」


ウェーベルの解説に、女の子たちは想像をふくらませる。

朝を食べた後なのに、もう食い気の話になっている。さすがにみんな乙女(オトメ)なのだ。


外を薄皮にして、中にそのアンコを入れるものもある、という解説に、女子たちのスィーツ妄想はさらに膨らむ。


「なにそれ!めっちゃ美味しそう!」「たべてみた~い!」「つくって~~~!」


「私も、作り方は大まかにしかしらないんだけど…」

小さなお豆はわりと簡単に手に入るけど、お砂糖が高価だから、作るのは難しい、ということをウェーベルは続ける。



「アルテミシアさん、帰りにその村回ってくる、よね、多分」

「うん、あの人だったら、まちがいなくそうする」

きなこもちの件で関わったネージェとディアンの意見に、大方の女子がその通りだ、と思っていた。


「あの人、スィーツに事になると、(ヒト)変わっちゃうからねー」とリーダーのチアノも同意。うんうん、と(うなず)く女子たち。


「スィーツ食べてる時のアルテミシアさんって、ワカイイよね~」

というアーシャの一言に、うんうん、とさっきより大きく頷く女子たち。


「あの人、めっちゃキレイなのに、めっちゃ強いんだよねー」

「まさかっ…スィーツにヒミツが!?」

「なんですってー?」

「…ないとはいいきれない!」

女子たちの勝手トークに発展した…。


「じゃあ、アルテミシアお姉ちゃんみたいに、いっぱいスィーツたべたら、プララも魔法使いになれるん?」

ちびっ子の片割れ、プララが子供らしい質問をした。


「それは…」「ちょっと…」「違うかも…」


「そうね、魔法、だったら、別のお勉強をしなきゃね」

ウェーベルが優しく諭した。

「私も、魔法を覚えたいと思っているから、一緒に頑張りましょ」

剣の技はあっても、自分は戦士向きじゃない。他の子たちを支援する役目のほうが合っている、この年長な未亡人女子は自分をよく理解してる。


「わたしも! まほう! まほう!」

もう一人のちびっ子、レンディも一緒になって騒ぎ出した。


「アーシャも魔法(マホー)覚えたい!」

ちっちゃなアーシャも名のりを上げた。もっとちっちゃな二人と意気投合している。

この子はどうも、ちびっ子二人と気が合いそうな感じではある。この中ではちびっ子二人の次に年下で、歳が一番近い、というのもあるのだけど。


ウェーベルとアーシャは、アルテミシアから魔法の素質が高いと評されていた。

時間があれば魔法を教えてくれる、と言ってくれていたのだ。





「はい、そろそろいいかしら?」

お話で盛り上がっていたところだけど、チアノ“部長(・・)”のその一声に、女の子たちは一斉に会話をやめ、注目した。


号令がかかると、すぐにみんな一丸となって行動する。

もともとショコールの女兵士だった海歌族(セイレーン)の四人がここに来た最初のグループで中心になっているので、女子たちの間にもこの軍隊式のような雰囲気が生まれている。



さあ、ここからは仕事の時間だ。


「今日も、がんばりましょう~」

今日の声掛けは、新人の火竜族(サラマンド)ネリアンが行った。


「おー!」と女の子たちも掛け声を上げる。



外に働きに行く子は、このまま着替えに行って、すぐに仕事に向かう。

このお店で働く子は、自分たちの食事の後片付けをした後で、と取り決めしてあった。


自分たちの事は自分たちで、というのは、どちらかと言えば店主クレージュの意向である。彼女はみんなに対して優しく面倒見がよくそして厳しい。年齢的にはお姉さんと呼ぶべきだけど、みんなの母親的な存在である。クレージュに対しては、フローレンやアルテミシア、レイリアやユーミですら、逆らえないものがあるのだ。



女の子たちが活発に動き回る。

ラピリスはパン屋さん、ガーネッタ、ネリアンは鍛冶場と、外に働きに。

チアノはカリラと一緒に帳簿を見て話をしている。ネージェ、ディアンはその指示を受けて離れの倉庫で荷物整理だ。


厨房ではウェーベル、アーシャが料理長セリーヌを手伝ってお昼の仕込みを始めていた。アジュール、セレステはいつもの店舗の掃除だ。レンディとプララもお店のお手伝いをしている。



今日もクレージュの店は忙しくなりそうだ。


今回はメインをちょっと離れて、その他大勢な女子たちのお話です。

まあ話題は主にスィーツ乙女に関してでしたが…

そのスィーツホリックな魔女の暴そ…活躍は次回で。

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