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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第2章 焼け崩れる山砦
13/138

12.戦いの中の村娘たち


こちらに気づいた新たな敵が向かってくる。


そして、村娘の誰かが叫んだ。

「あ! あっちにも!?」「て、敵です!」


南東側ではない。彼女たちが示すのは、北の方、バルコニーのあった階の、その上の城壁上通路だ。そちらにも十人ほどの人影が見える。

月の光に照らされたその姿は、弓を手にしているように見えた。


フローレンたち冒険者女子にとっては、通常の相手の、通常の矢による攻撃など大した問題ではない。だけど、村娘たちでは(かわ)したりできないだろう。彼女たちに魔法の守りが掛かっているとしても、やはり危険がある。

かといって、矢が確実に届かない場所へ移動するには、南東側からこちらに迫ってきている敵が邪魔になる。


面倒なことに、南北両面から敵に挟まれた状況になっている…。

だが、フローレンはこの状況でも、最善と思われる行動を直感で判断するのだ。

そして実行に躊躇(ためら)いがない。


「アルテミシア! 城壁の上の敵を…」

お願い、と言うまでもなく、アルテミシアはもうそちらに向き直っていた。

「了解。あっちは任せて♪」

この砦の外壁の高さは、軽く見積もって背丈の十倍(15メートル)弱はある。

あの高さにいる敵には、この中ではアルテミシアにしか対応できないだろう。

彼女もまた、自分の役割をよく理解していた。


南東方向から、六人の新手が近づいてきていた。

その六人は、ここまでの山賊たちとは明らかに雰囲気が違った。ただの山賊じゃあないのかもしれない。

武器も、洗練された感じの剣、六人全員が同じ装備だ。そして動きに統一感がある。


(この感じは…? 訓練された…兵士…?)


フローレンは直感でそう感じた。花園の剣(シャンゼリーゼ)を持つ左の手にも、少し力が入っている。


多少強い敵と言っても、通常の状況なら、フローレン一人でも対処できない相手でも人数でもない。

ただ今は守るべき村娘たちがいる。この人数だと一度に全員を相手にしながら、彼女たちを守るのは難しい。


「ユーミ! レイリア! こっち、お願い!」


「いくよー!」と、ユーミは左手に持ったニクを食べきって残ったホネを、ポイと投げ捨てた。その右手には漆黒の大斧が現れた。

「やるか…」とレイリアも、酒を飲み干した(ビン)を投げ捨てる。替わって赤銅色の燃える剣を現した。

「喧嘩を中断された憂さ(ウサ)を晴らす!」みたいな、まだ全身から怒りが(くすぶ)っているような感じで、並んで歩を進めている。


二人は少し進んで迎え撃とうとしてる。中央に置かれた材木や物資の置場を利用して、女の子たちを守る壁をつくる位置取りに持っていこうと動いていた。若干冷静ではなくても、自然体でそのくらいの状況に応じた動きはできるのだ。


フローレンはあまり前に出ず、村娘たちを守ることができる距離を維持した。


「油断しないで! さっきまでのとは違うわよ!」

相手の力量に気をつけるというより、むしろ女の子たちに攻撃が行かないように、という意味ではある。


その六人の新手の山賊は、こちらを測るようにしながら近づいてくる。

それに、こちらが女だからと油断もしていない。

(やっぱり、ただの山賊じゃあないわね…)

それはユーミもレイリアも、肌で感じているだろう。

洗練されている。間違いなく、正規の訓練を受けた事がある、兵士崩れだ。




アルテミシアは北の壁のほうへ距離を詰める。攻撃魔法が充分届く位置までは近づく必要がある。


《吸引磁風》 ウィンドマグネティカ


宙に描かれた淡い紫の魔法陣が、前に突き出したアルテミシアの左手の指先へと収束していく。

それは、矢を避けるのではなく、引き寄せる魔法だ。そうする事で、(そら)してしまって後ろの仲間に当たるような事がない。


飛んでくる矢が空中で引っ張って寄せられるようにアルテミシアに集中した。

狙われている訳ではない。一本、そしてまた一本、実際にすべての矢は吸い込まれるようにヘンな軌道になって、彼女の突き出した左手の指先に引き寄せられているのだ。

そして矢は全部、その指先の真ん前の空中で動きが止まっている。


アルテミシアは軽くひねるように、左手の指を振り払った。動きの止まっていた矢が全部、地に落ちた。

逆の右手が、月の光の色に輝きはじめ、徐々にその光を増してゆく。彼女は歩を進めながらも、攻めに転じる月からの魔奈(マナ)をその右の手に蓄え始めている…。



フローレンは最初、女の子たちを守る位置にいた。

けれど、レイリアもユーミも、六人のうち、それぞれ二人を止めるのが精一杯な感じだ。 

そして敵の二人が抜けてきた。


それを迎え撃つために前に出る。女の子たちから少し離れる形にはなってしまうが、彼女たちに接敵されるのは避けたい。


結局、それぞれ一人が二人に対し当たる形で迎え撃つ形になった。


花園の剣(シャンゼリーゼ)を構える。


そして、剣を交えて改めてわかる。

敵二人の動きに連携がとれている。やはりブロスナム王国辺りの敗残兵か何かか。

その上、こちらの後方、女の子たちのほうへ抜けようという動きを見せてくる。

奴らは、女の子たちを狙う構えを見せれば、こちらの気が逸れる事を理解して動いている。


(やりにくいわね…)

それでも、二人に挟まれる位置は取らせない。もちろん、村娘たちのほうへ抜ける位置もだ。


だがここで、状況の変化が起きた。不利な展開が、だ。


新手。

二人いる。北東の(うまや)の辺りから現れ、駆けてきている。

女の子たちのところへ、だ。


この位置から行けない事はない。

だけどそれには、眼の前のこの男二人が邪魔だ。

どうする…? 


だが、考えている間もなく、次の展開が起こった。


「ここは、私達が!」「いくわよ! こんな連中!」

体力系の村娘二人ネージェとディアンが、掛け声と共に前に出た。気が強のは知っているが、武器を持った男に立ち向かうなんて…ただの村娘とは思えない勇敢さだ。


(だけど、あの二人なら)

フローレンには彼女たちの力量が測れた。相手も大きいだけの山賊で、大した事はない。その上、相手が囚われていた女の子だと知っている。連れ戻そうとやってきている訳ではないが、甘く見ている感はある。

アルテミシアが施した守りの魔法を加味すると、そうそうやられる事はない。フローレンはそう判断した。ネージェとディアンも、その防御力を加味しての大胆な行動なのだろう。

予想通り、二人の村娘は、攻撃に対し、わりといい受けをしている。

(その調子よ! 身を守ってさえくれればいい…!)


こちらを早く片付けなければいけない。

フローレンは再び、目の前の敵に意識を集中させた。


打ち合う、そして、花園の剣を斜めに構えた。

斬る、と見せかけた行動。眼前の敵はそれを警戒して剣を受けに構えた。だけど違う。

刀身の先、幻花の咲いていない位置で、照らす月光を弾く。

相手が光を避けるように目を細めた。これがもっと強い太陽の光なら、完全に目が眩んでいるところだ。

その瞬間を見逃さない。できた隙。

相手の防げない位置から剣を繰り出した。普通の相手なら、これで終わりだ。

斬った。だが浅い。深く踏み込んで斬れないのは、もう一人が横から来るからだ。 

その横からの一撃を、フローレンは妖艶に腰を捻らせた不安定な体勢で(かわ)す。山賊とは思えない剣撃だ。一撃をもらったら、この花びらの鎧の防御力でも全ては防げないだろう。

不安定な体勢から、手で地を叩くように身体を縦に回転し、立ち姿勢に戻り、構えた。

目を眩ませ浅く斬った敵も、立ち直ってこちらに剣を向けてきた。


(面倒ね…)

女の子たちのほうに目を遣る。動きは良い。

ネージェは動きで、ディアンは力で、賊どもと渡り合えている。

それぞれが一人、受け持って受け止めている。


持ち堪えてはいる。だが、相手を倒す決定打は無い。何より持っている武器がナマクラな(ナタ)と木の棒、と貧弱すぎる。守りは魔法で与えられていても、女の子の体格では差があるし、当然それは力の差があるという事だ。状況の好転は望めない。

もうあまり時間はかけたくない。


《散花変幻・鮮血之舞》

フローレンは、花術の技を仕掛けた。手っ取り早く片付ける為だ。


だけどこの技は、隙が大きかった。

技のための構えで、動きが止まってしまっている。少なくとも周囲からはそう見えているのだ。


腕の立つ相手はその隙を見逃さない。躱す間もなく、その剣が無防備な女剣士を捉える事となる…

フローレンの身体を、賊の剣が貫く。

真っ赤な血が、月の下に舞い散った…。


だが。


舞い散ったのは鮮血ではない。

それは、赤い花の幻影だ。

斬られたはずの女剣士は、無数の花びらとなって舞い散り、その姿は消え去ったのだ。その散った花の幻も、すぐに宙に溶けるように消滅してゆく…。


「何…だ…?    うっ…?!!」

彼女を斬ったはずの山賊の横腹に、花園の剣が突き刺さっていた。鮮血が吹き出す。こちらは幻影ではない、本物の血だ。

斬ったのはただの残像だった、という事にこの男は消えゆく意識の中で気づくことになる。


フローレンの本体(・・)は、崩れ倒れる山賊から花園の剣をそっと引き抜くと、一人になった敵と向かい合った。


正面の敵に向かって構えたまま、目を流して、再度周囲の状況確認する。


右、前方では、一人が炎上しながら崩れ、ちょうど大斧で真っ二つになっていた。

左、後方、女の子たちは無事だ。二人とも、なかなかやる。


(その調子…もうちょっとだけ、持ち堪えて…!)

三人のうち誰かが助けに行くまで、それまでの我慢だ。



眼の前の敵に意識を戻す。

こちらから斬りかかった。手早く片付けなければ。

一対一なら問題にもならない相手だ。こちらから隙を作り、攻めに来て大きく体制を崩したところへ続けざまに、突き、また突き、そして突く。

賊の身体の三ヶ所から、血が吹いた。

さらに突く。四ヶ所目は首筋だ。大きく血が吹き、賊は膝をついた。

すれ違いざまに、斬り捨て、そのまま女の子たちのところへ駆けた。


だが、フローレンの背を、冷たいものが走った。


大柄な男が女の子たちに近づいている…!

先程敵を殲滅したはずの、宴会所の方向からだ。敵を全滅させた後で、そちらまでは警戒していなかった…。


山賊と切り結ぶ二人の村娘の横から迫る形になる。二人は気は付いている。だが、気付いてはいても、眼の前の敵と渡り合っている状況では、対応ができない…!


だが、次の展開に、フローレンはさらに驚かされる事になった。


その大柄な山賊の前に進み出たのは、なんと、おとなしいお姉さんなウェーベルだったのだ。


「危ない! …って、えっ…!?」

刀に手をかけたウェーベルの姿を見て、フローレンは軽い戦慄を覚えた。


フローレンは、相手の(たたず)まいや構えを見ただけで、ある程度力量を測る目に長けている。

守るべきか弱い女性だと思って、注意深く動作を見ていなかった事もある。

なので、刀に手をかける姿を見るまで気づかなかった。


歩み寄ったウェーベルは例の刀を一瞬で抜いて、大柄な山賊を斬り上げて倒してしまったのだ。


(えっ…嘘…?)

その光景に信じられない思いを持ちつつも、フローレンは駆けながら無意識に、ネージェとディアンが向かい合っていた二人の賊を斬って捨てた。




新手を全滅させ、レイリアとユーミも戻ってきた。アルテミシアも壁上を掃除(・・)して戻ってきた。今、辺りに敵の姿はない。念のためアルテミシアが反応感知の魔法で確認している。


「ウェーベル! 大丈夫…?」


家庭的な感じのこの未亡人系村娘が、かなりの使い手であるのはちょっと意外であった。

刀を渡した時に感じた僅かな戦慄は、これだったのだ、と納得がいく。

崩れるようにして膝をついている今はもう、か弱い村娘の印象しか感じられない。


「…フローレンさん…。あ…はい…、私…少し剣の心得がありますので…」


フローレンは彼女の一刀に元に倒れた大柄な賊を横目に見下ろす。

「少し、ね…」

正確に急所を斬られたであろう姿を見れば“少し”どころではない気がする。

どこでこんな剣技を覚えたのだろう。

二人の武闘派村娘、ネージェとディアンもそれほど驚いた風ではないのは、おそらく知っていたのだろう。


「ごめん二人にも、ムリさせちゃって」

「ううん、全然!」「わたしたちも、やればできるでしょ?」


この二人は、わりと慣れた感じである。


「あー、あたし達、昔からよく喧嘩とかしてたしね」

「そう、女ってナメてかかる男の子とか、口うるさい大人とかと、ね」


やはり、この二人は戦士の素養が高い。身体能力もそうだけど、少しは命の危険を伴う斬り合いをした後なのに、まったく動揺がない。


しかし、この一瞬の剣技を見せた家庭的な村娘は、そうではないようだ。

斬った後、そのまま崩れるように座り込んでしまっている。

表情に余裕がなく、怯えの色を表していた。身体も小刻みに震えている。

いくら剣の使い方を知っているとしても、実際に人を斬るのは初めてだった感じだ。

つい必死だったから、二人を守るために身体が動いたのだろう、後になって自分の行動に気づいて、そして震えているといった感じだ。ちっちゃなアーシャも駆け寄って、心配し涙を浮かべている。


「大丈夫…? 無理させちゃって、ごめんね…」

フローレンは(かが)んで片膝立ちの姿勢になり、震えているウェーベルを軽く抱きしめた。


「後はわたしたちが守るから」

彼女の震えが小さくなり、やがて収まるのが伝わってきた。


いくら瞬間的に強いと言っても、自分たちには遠く及ばない。

それに一瞬の技があるだけで、ネージェやディアンのように体力がある感じでもないのだ。

やはり守ってあげなければいけない事に変わりはないのだ。

ちなみに、ちっちゃなアーシャは、全く武術はダメそうな感じだ。でも、それが普通の村娘の姿だ。


「アルテミシア、生命反応はどう? どれくらい残ってるかな…?」

あとまだどれくらい敵が残っているのか、状況を把握しておいたほうがいいだろう。


「…砦の方々から反応を感じるわね…♭ 全方向に(まば)らに…あ、でも南側からの反応が多い感じ…数は…全部あわせて二十、といったところかしら…♭」


もう三十人近くは倒しているはずだ。村人が言っていたように、本当に五十人はいそうだ。よくそんな数のあぶれ者が集まったものではある。

そして、その中にはおそらく、まだ出会わないカシラや、幹部らしいのもいる事だろう。

来るとしたら、一気に(まと)まって来るだろう。女の子たちを守るには、その状況が一番やりにくい。


この状況で女の子たちを守りながら、というのは厳しい。

ならば壁際から離れる事だが…

中央の空間は建物がないから、崩落に巻き込まれる事はないだろうが…だが、目立ちすぎる。

この木材や資材の置き場では、隠れる役に立たないし、やはり狙わたれり、矢などの遠距離攻撃が流れてきた時に守りきるのは難しいだろう。


安全にやりすごせる場所があれば…


「レイリア! 崩れてこない場所は、どこ?」


さすがにレイリアはすぐにそのフローレンの意図を察した。

安全な場所に女の子たちを(かくま)って、残敵を殲滅する方針で行く、そういう決断だ。


「南側、だろうね」

レイリアは即答した。


南側は山の岩壁をそのまま城壁のようにしている。

確かに、岩壁自体が崩れる可能性は低そうだ。


「多分、南の岩壁のどこかに水場があるはずだよ。

 そこは砦の生命線だから、厳重に管理されてるはず…そう、施錠とかされて」


という程度の事は、建築に詳しいレイリアには予想がついていた。

こんな山中に拠点を築くなら、まず水源が問題となる。

この山の石の材質や、あまり根を深く張らない種の樹木を見れば、この山の地層は硬い事は予想はつく。

つまり井戸を掘るのが困難である。それに、掘っても水の地層に行き当たる保証もない。

となると、雨水などの岩山からの流水が溜まる場所か、十分な岩清水が湧く場所を選んで砦を築く、と読んでいたのだ。


南側を見渡すと、石組みの小部屋のようなものが、天然の岩壁にくっついている。

南側の少し中央から逸れた場所で、重厚そうな扉がついている。

「あそこね!」


四方から村娘たちを守るように、そこへ向かって走る。

ちっちゃなアーシャがお約束のように、大きな胸を弾ませながら派手に転ぶが、「転んでる場合じゃないっ!」って感じに即座に立ち上がって走り出す。


今、周囲に敵の姿はない。

そのまま南壁ぎわの、その重厚な扉の前にたどり着いた。


《月鍵☆解錠》アンロック☆ムーンキー


アルテミシアの手に月の光が集約され、輝く鍵の形になった。

鍵穴に差し込むと、形状解析は即座に済み、扉はすぐに解錠された。

だが中は暗い。


《月明☆点灯》ライトアップ☆ムーンライト


集約された月の光が、眩い光の塊となり宙を舞う。

小さな部屋の中を照らすには十分だった。

中の空気はひんやり冷たく、もちろん人の気配はない。


「本当だわ。ここが水場みたいね」


レイリアの読み通り、部屋の中の奥側には石造りの貯水池があって、かなりの水が蓄えられていた。

部屋の壁にも他の場所よりも堅固に石が組まれている感じだ。

この砦で暮らす者たち全員の飲み水が、言い換えれば命がかかっているのだから、防備も万全な訳だ。


「あ、これ…村の…」

ちっちゃなアーシャが指さした室内の壁際には、木箱や麻袋が重ね並べられている。

施錠の効くこの場所に、村から奪った価値のある物資をとりあえず収めているのだろう。

漬け肉、地酒、マメの粉…村から奪われた物資だとすれば、目的の捜し物が見つかったことになる。

が、今は中身を確認している暇はない。


「貴女たちは、ここに隠れていて♪」

アルテミシアが例の亜空間バッグから取り出した、村でもらったコメを丸めたお弁当の包みを手渡した。

それとついでに、一応、この部屋の反応や、飲料としての水の質を調べている。

  

「奴らを片付けたら、すぐ迎えに来るからね!」

フローレンの声掛けに、村娘たちが力強く(うなづ)いた。

この女冒険者たちに、命を預ける覚悟である。

もし彼女たちが戻らなければ、再び山賊に凌辱されるのか、それともここで果てるしかないのだ。


《月鍵☆施錠》ロック☆ムーンキー

《上記魔法の解除条件を指定》

   →月光が差さなくなると同時に解錠


扉を締め、今度は外側から月の鍵で施錠する。

山賊の誰かがここに合う鍵を持っていても、もうその鍵では開かない。

一応、月が輝かなくなる頃、つまり夜が明ける頃には解錠されるようにしておく。

万に一つ、アルテミシアは自分が戻ってこれない可能性を考えて、そうしていた。

先程ともした明かりも、それくらいまでは充分持つだろう。魔法の明かりは、学術魔法の中でも最も初歩の単純な魔法なので、扱いやすく持続時間も長いのだ。



さあ、ここからが殲滅の戦いだ。

女の子たちを安全な場所に(かくま)ったので、憂いなく戦いに(おもむ)くことができる。

心なしか彼女たちの表情に動作に、気合が入り直した感がある。

山賊が集まってきていた。最後の戦い、といったところか。

四人の女子が、山賊どもに向かって、悠然と歩いて向き合う。


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