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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第10章 狭間の山の小さな三国戦
117/138

114.花月女子たちの山中防衛戦 壱

難民村防衛戦、一応最終まで構成ができたので、書き上げた分から徐々にUPの予定。

一話10000字未満を心がけますので、話数は少し多くなる、かも…


昼過ぎに南の森に姿を見せたブロスナム山賊軍は、そのまま集結を待ち…

村への進撃が始まったのは、日がかなり下がった頃だった。



敵が最初に攻め寄せたのは、村の西側…

敵は予想通り、南側からの高低差の少ない村の西に戦力を集中してきた…

西側は中央からは地形がやや高くなっているので、戦いの始まった様子を中央広場から見上げる事ができる。


西側はユナの弐番隊の八人と、火竜族メンバー他、兵士の戦力は充分。

そもそもレイリアとユーミがいるので、並大抵の人間に防衛を抜くのはムリだろう。


もし少数の敵がその防衛戦を抜けたとしても、集落の内側では村人たちが武器を手に待ち構えている。

戦乱に明け暮れるオノアの民だから男性はみんな戦える。女性たちもそこそこの腕はあるし、彼女たちは大樹の加護を受けて堅固に守られている。

その防衛戦で防ぎきれる。そこからさらに非戦闘員のいる北側へ抜けられる事はないはずだ。



ただ、敵は…西側を集中して攻めると見せかけ…

中央にも多数の兵、東側にも多少の兵を伏せている…


つまり敵は…

西で戦いを始め、そこに他の場所からの防衛戦力を移動させようとしている。

中央や東側から戦力をまわさせ、手薄になった箇所を一気に攻めよう、という戦術的意図が見受けられる。


だけれど…

花月兵団側は、その戦略を見抜いている。

敵の配置はロロリアの管理領域内の索敵によって、こちら側には筒抜けだ。彼女の頭には、管理領域内の地図が描かれ、全敵味方の位置を把握できるのだ。


ロロリアは村の南側にある中央広場にいて、ずっと集中し目を閉じて祈るような姿勢を崩さない。

大樹の加護を村全体に付与し、大樹の管理領域内の全容を見張り、他の森妖精(ドライアード)への思念による遠隔連絡も行う…

森妖精(ドライアード)(オサ)である彼女にしかできない事とは言え、重要な役目を三つも同時に担っている。


そんな重労働な、そして無防備な彼女を守るように、小柄な少女のような銀妖精(シルバーミネラリアン)のアルジェーンがぴったり真横についている。





~~村の西側~~


大挙して山賊が押し寄せてくる。

正確には、ブロスナム兵。

だが…一人二人を除いて、どこからどう見ても山賊な連中だ。

その山賊とは異なる二人は隊長と副隊長、元ブロスナムの正規兵だろう。使い古されてはいるが、しっかりした軽装の鎧を身に着けている。



最初の敵部隊は何の奇策もなく、村の西門を抜けてきた。

そこを弐番隊の八人が迎え撃つ。



弐番隊は隊長のユナが先頭に立って戦う戦闘スタイル。ユナが戦いながら戦局を読み、隊を動かすのだ。

フローレンの鎧に似た形状のスケイルのビキニアーマー姿のユナが勇敢に斬りかかり、二人の妹・義妹(いもうと)フィリアとランチェが長剣と丸盾がセットになった換装装備を手にその両脇を固める。


彼女たち三人の両側に回った敵に対し、次列の二人が進み出て…

鍛冶屋のシェーヌが戦鎚(ウォーハンマー)で殴り飛ばし、

獣人族のレメッタが戦斧(バトルアクス)で斬り捨てる…


その後ろからは後衛の二人が支援。

光の(まく)が味方を覆い、闇の(まく)が敵に降りかかる。

マリエは“光”系統の魔法で支援しながら、十字形のナイフを投げつけ、

ナーリヤは“闇”系統の魔法で妨害しつつ、複雑に枝分かれしたナイフを投げる…


味方の薄い場所には弐番隊最後の一人、自由奔放なイーナが駆けつける。

彼女が操る(ムチ)のような伸びる武器は、容赦なく首を巻き、絞められた賊が悶絶して… 倒れる頃には、イーナはもう別の場所に救援に飛んでいる…空歌族(ハルピュアイ)の彼女は実に素早い。



団結力の強い堅固な弐番隊を避け、その両側を抜けていった賊兵どもは…

最も悲惨な最期が待っていた。


そう、花月兵団最凶コンビ…レイリアとユーミがそこにいる。


岩を真っ二つにするユーミの金剛鉱(アダマンタイン)の大斧にかかれば…ロクな鎧を着ていない山賊兵がどうなるか、言うまでもなく…

豪炎から逃れらる術も耐える術もない山賊風情は、レイリアの炎に巻かれて瞬く間に黒焦げだ…



二十人ほどもいた最前衛の敵一小隊が…みるみる間に半分になり、さらに半分になった。全員倒れ動かなくなるまで、それほどの時はかからないだろう。


それでもブロスナム軍は兵数で押してくる。

第一隊目が全滅する前から、すでに次の隊が押し寄せてきていた。

それも先程の倍以上の数が。

山賊どもは掛け声を上げながら、西門からのみならず、柵を乗り越え、村に侵入してくる。


柵の内側、村に侵入した場所で、次々に柵を越えてくる手下の山賊共に、剣を振り上げながら突撃指示を出していた、敵の小隊長…

その頭に突然矢が突き立った。

西の石壁の上方、あの集会場のあった辺りから、ユーミの友人である獣人族の猟師エスターが狙撃している。

隊長がいきなり倒れ、山賊共があっけにとられる中… 次に放った矢が、今度は副隊長の胸部に刺さった。


残された賊兵どもは慌てふためく…

とりあえず逃げようとするが…柵を乗り越えてくる味方に押し出され、仕方無しにその部隊の兵に混じる…

だが、数は力だ。味方が多ければそれで強気になったようで、また喚声を上げながら一斉に押し寄せてきた…


弐番隊が新たな敵と当たる。隊長ユナの動きに合わせるように残りの七人が陣形を維持したまま行動するのだ。弐番隊の八人には、常に一体感がある。


その両側では、レイリアの炎とユーミの斧が暴れまわっている。


その凶悪な二人を避け、その後方、居住区のほうへ向かおうとした賊どもには…

ガーネッタ、ネリアン、ルベラ、コーラー、火竜族(サラマンド)の四人娘が待ち構えていた。

彼女たちも「姉御」のレイリアには及ばないものの…全員がグィニメグ神に使える巫女であり、それぞれが武術と炎光の術を使いこなす強力な戦士だ。


今回はここにもう一人、森妖精(ドライアード)のプレーナが支援に加わっている。

プレーナは村では加工食品や酒造りの担当で、作物から作った道具を駆使して戦う戦士でもある。レイリアと酒飲み仲間で親しい。だからこっちに加わっている、という理由(ワケ)ではないのだけれど…


プレーナはこの西側の実質指揮官であるレイリアから付かず離れずの位置で、弐番隊の状態を見守りながら…時々襲いかかってくる山賊を、手持ちの長い棒の一撃で突き倒し、事もなく()なしている。

森妖精(ドライアード)は得手不得手はあれど、全員が治療術を含む“樹”系統の術が使える。プレーナは治癒の術を得意とするので、治療魔法使いの少ない弐番隊の援護には適任なのだ。

だけど…誰も負傷した感じはなく、今のところその必要はなさそうだ。


なのでプレーナはもう一つの役割…

思念伝達によって(オサ)であるロロリアにこの西側の戦局を伝える事に集中する…





~~村の中央広場~~


「…西側の状況だけど…

 …まったく問題ないみたい…敵が弱すぎる、って…」


ずっと祈るような姿勢で目を閉じたまま、ロロリアがフローレンに告げた。


「でしょうね」

まあ、そのへんはフローレンの予想通りだ。

攻め寄せているのが雑兵だけなのだから、数だけ揃えても相手にもならないはずだ。



ロロリアは大樹の支配領域内なら、他の森妖精(ドライアード)と思念で連絡を取ることができる。

そんな訳で、戦場になりうる村の西側と東側、そして非戦闘員村人が籠もる北側に、仲間の森妖精(ドライアード)たちを配置している。

西側にいる森妖精プレーナからの連絡では今のところ、数は多いけれど対処にまったく問題はないようだ。


そのロロリアの索敵では…

西側の戦場は、弐番隊、レイリアとユーミ、そして火竜族(サラマンド)が防衛戦を敷いているが、少数の敵がその守備位置を抜け、村の内部、居住区のほうに迫っている。

だが、抜けた少数の敵も…

建物に潜んでいたオノアの女子たちに囲まれ、簡単に殲滅されていた。


ロロリアの頭にはこの村周辺の地図が浮かび…そこに敵味方の配置が記されるようにわかるのだ。



「…南…森の中、敵に動きあり…!」


突如、そのロロリアが告げた。

加護範囲の索敵より詳しい情報が、彼女が従える小さな動物たちの耳目によってもたらされるのだ。動物たちが見たのは、待機状態から行動に移ろうとする山賊兵どもの姿だ。



「…中央、東側…そろそろ来るわよ…」


こちらが西側の防衛に戦力を割いた頃合いだと見たのか…

それとも戦力を割かなかったので、業を煮やしたのか…

とにかく攻勢をかけてくる、その動きがある、ということだ。



「了解…!」


フローレンも南側から迫る敵の迎撃に向かった。


彼女たちのいる村の中央広場は、村の南の柵に面している。

ロロリアは広場の北側、居住区側にいるので、南側に向かったフローレンとは距離が離れる。

ので、司令官のフローレンには森妖精(ドライアード)女兵士のひとり、果樹園担当のスヴェンが連絡係についてくる。



南側柵に面した中央広場に待機しているのは…

ミミアの参番隊と、メメリの䦉番隊、

その両隊長と仲の良い、可愛いキューチェと、活発なハンナ、

そして司令官補佐の月琴姫アルテミシアだ。


ロロリアの側には花月兵団所属のオノア女子三人が残り、

銀妖精(シルバーミネラリアン)のアルジェーンが影のように寄り添いロロリアを護衛している。


その広場の後ろ側、北側の住居区画には、オノアの男戦士や女子たちが武器を手に待機している。

彼ら、戦いに参加するオノアの民には、魔法防護を展開するお守り(アミュレット)を部隊ごとに持たせている。

先日、アングローシャの魔法物品店で数多く仕入れた消耗品だ。効果は一度きりだけれど、強力な守りの効果がかなり長い時間継続する。

オノア民のほうにお守りを回したのは、花月兵団メンバーはLV1装備で防護を持っているのと、このこの防護魔法を使える女兵士がわりと多いからだ。




参番隊と䦉番隊が村の南門に向かって構えている。


参番隊メンバーが隊長のミミア以下五人、それぞれの得意武器を手に構えている。

全員が大きなお胸を強調したビスチェ形状の胸当てにミニスカート、

大きなおむねが集まってる感じなのが…男相手の客商売っぽい雰囲気があって、戦場にはちょっと似つかない感じ、ではある…


その左側、䦉番隊は隊長のメメリ以下五人、盾を揃えて横並びに構えている。

全員がボディスーツに胸当て姿で統一しているので、並んで構えている姿はなかなか様になる…

バックから見ると…全員食い込み激しくて、丸っこいおしりが並んでる…って感じなのが…ちょっとエロかわいくて、兵隊っぽくはないのだけれど…


この参番隊・䦉番隊のメンバーは、兵士としてはまだ未熟な感じだ。

だけど聞くところによると、全員が何らかの魔法も使えるらしい。

ミミア隊長の話では参番隊は攻撃的な魔法を、

メメリ隊長が言うには䦉番隊は支援や妨害の魔法を、

一人が少なくとも一つは習得しているらしい。


通常、魔法を使える人間なんてそれほど多くはないのだけれど…

花月兵団では魔法を学ぶのが流行っている。

戦闘魔法を直接学ぶのではなくて、生活魔法を覚えてそれを戦闘に転用している子が多い。

アルテミシアによれば、花月兵団に加わってくる子たちはなぜか、もともと素養のある子が多いらしい。

それにロロリアによれば、大樹の間近で生活している事も、魔法素質の開花には影響があるようだ。


魔法に関してはフローレンは専門外だから、よくわからないのだけど…

そういえば…フローレンが関わっている子たちは、みんな戦士としても強くなっている。

それも、通常ではありえないような早さで、熟練の戦士に育っているような気がしている…

そこにいる参・䦉番隊の両隊長ミミアとメメリなんかが特にそうだ。

山賊に捕まっているのを助け出した数ヶ月前まではただの村娘だったのに…

今ではそこいらの男の戦士にも負けないくらいの強さになっている。

もっとも、ヴェルサリア装備LV1という攻防に優れた論理魔法装備を持っている、という事も含めてだけれど…



南門の外に、敵が群がってくる音が聞こえてきた。


参番隊も䦉番隊も、隊長のミミアとメメリ以外はみんな緊張を隠せずにいる。

ほとんど実戦経験がないので、緊張するなというほうがムリなのだけれど…


それでもロロリアによる大樹の加護もある。アルテミシアの魔法の援護もある。

そうそう負けることはないだろうし、この子たちの訓練の成果を観察するには良い環境だ。

それに…


「あたしたちも、いるですよー!」

「…援護します…」


ハンナとキューチェ、軽い胸当て鎧にフレアなミニスカートでお揃い姿の二人が、仲良しな隊長たちと一緒に戦って支援してくれる。


「訓練の成果を、出し切るのよ~!」

「大丈夫! みんな強くなりましたからー!」


ミミアとメメリの両隊長も、緊張している新兵たちを鼓舞する。

この二人は気楽に構えている。

新兵とは言え、この子たちが山賊程度の敵に負けるとは思っていないようだ。


その後ろには加えて“樹”系魔法に精通した森妖精(ドライアード)のスヴェンもいるし、

さらに女兵士たちの魔法の師匠であるアルテミシアまでいるのだから、戦力としては充分だろう。




「来るわよ…迎撃準備!」


言いながらフローレンも、花園の剣(シャンゼリーゼ)を手に現した。




南側中央の門扉が大きく左右に開かれた。

山賊兵士どもが一斉になだれ込んでくる…

おおよそ二十人余り…敵の一部隊に相当する人数だ。


部隊ごとに動いているのだろう、二十人ほどが門をくぐったところで、ちょっと敵の流れが切れる瞬間があった。


「今ね♪」

アルテミシアがその瞬間を捕らえ、魔法を発動する。



 <<事前予約魔法 発動>>


 <<閉門>> クローズ・ゲート

 <<同時に発動>> 

  → <<硬質化>> ハーデニング



村の南門が強制的に閉じられた。

大きな木の門でいかにも重たい感じなのだけれど…迫る後続部隊の敵兵を跳ね除け、一瞬で閉じられた。


あらかじめ魔法を仕込んである門扉は、アルテミシアの魔法の合言葉一つで簡単に閉じる訳だ。

敵の先遣隊を引き入れて殲滅するために、わざと施錠していなかったのだ。


前衛と切り離された敵の後続部隊が、外から門扉を叩いている音が響く。

だけれど、もはや開かない。


「無駄よ♪ ムダムダ♪ 簡単には破れないわよ~♪」


木製の扉は閉じた状態で、もはや鋼鉄並の硬度に変質しているのだ。



中に飛び込んできた敵一小隊の山賊どもが、孤立した事を悟って焦りを見せていた。


「殲滅!」


フローレンは赤い幻花の咲く花園の剣(シャンゼリーゼ)を振り下ろす。


ミミア、メメリ両隊長を先頭に、女兵士たちが一斉に挑みかかった。


今閉じ込めた敵は、一部隊分まるごと…つまり二十人余りだ。

数だけ見れば、敵のほうが倍近くいる。


それに気づいた山賊どもは、数をたのみにかかってくる。

相手が女子だと思って舐めているのもあるだろう。



戦いが始まった。


参番隊は隊長のミミアが常に前に出て、それ以外の四人は前衛を入れ替えるようにして戦っている。

誰かが攻撃魔法を使う時は、必ず他のメンバーが前に出てその子を守る。

攻撃魔法を使うタイミングも、悪くない。

全員が自由奔放に見えて、連携がとれている。

五人ともが大きなお胸をはずませながら、うまく連携しあって一体感が感じられた。



䦉番隊のメンバーは、それぞれ盾を構えたまま、敵を囲い込むように並んで…

敵と対峙しつつ、それぞれの魔法で強化弱体化を図る。


䦉番隊メンバーのマルティナという子は、元々冒険者の魔法使いだ。一応は冒険者という肩書だけど…実は戦った事がほとんどなかったらしい…

魔法使いのくせに、実は…戦闘向きな魔法を一つ二つしか知らなかったという、見習い魔女だ。

今は他の子と一緒に剣と盾を手に並んでいるので、魔法使いの印象はなく、すっかり兵士という感じだ。


本人はダメな魔法使いだと言ってる…たしかに攻撃する類の魔法は苦手そうだけれど、アルテミシアの魔法装置作成の大事な弟子である。

その魔法お手伝いの過程で、自分は付与的な魔法が得意な事に気づいたようだ。

ここにいる味方全員に対して守りの魔法を付与する…


マルティナのが掛けた防御付与の魔法、防護障壁(プロテクションバリア)の輝きが、ここにいる味方全員の身体を包む。

他の子たちが使う防護盾プロテクションシールドよりも強い、花月兵団女兵士の中では付与の得意なマルティナだけが使える魔法、らしい。


LV1装備と森の加護で上がった防御力をさらに高めている。

その三段重ねの魔法の防御があれば、裸で戦っても並の剣戟や弓矢は通らない。


以前試しに全員下着一枚姿で訓練させてみた事があるのだけれど…その三段重ねの守りは板金鎧(プレートアーマー)レベルの防御力があると予想された。

気をつける必要があるのは、敵将クラスの相手や、巨大な兵器や落石などだ。

三弾重ねの魔法の防御でも、そこまでの攻撃力はさすがに受けきれないだろう。


それと連戦による疲れによって隙ができてしまう事…受けの体勢が取れないと、どうしても大きな一撃をもらいやすくなる。

フローレンの懸念はそこだった。

この場所での防衛戦は、新兵たちの体力を読みながらの戦いにもなるのだ。


そして、敵将クラスが現れれば、自分やアルテミシアが対応する事だ。



そのマルティナと仲の良いのが、貧しい村の娘だったディヴィ。

村を襲った魔物のエサに出された経緯から、もはや村に帰るつもりはない。

仲良くなったマルティナと一緒にアルテミシアに弟子入して、魔法を学んで…というより、この子も魔法付与の素質があったのか、魔法装置の作成を押し付けられている…。文字の読み書きはできないのに、なぜか絵心があって、魔法文様の模写が上手いとか…


そんなディヴィは親友とは逆…味方を強くするのではなく、敵を弱める付与魔法を使う。

肉体的な能力が削り取られたようになる弱体化、能力割去ディバイドストレングス

付与の素質のあるディヴィだけが使える、珍しい弱体化魔法、らしい。

これを受けた三人ほどの山賊どもは…冷たい色の分身がその場に取り残されたように身体から離れそのまま消滅する…

力を断ち割られたようにいきなり動きが遅くなり…女兵士たちの攻撃を防ぐ手も出ず斬り伏せられた。


䦉番隊の残りの二人、アーディとサブトゥレ。

メメリと同郷のアイーズ村の娘たちだ。

メメリの金褐色の髪と比べて、アーディは足したように濃い金褐色、サブトゥレは引いたように薄い金褐色の髪、と色合いに統一感がある。

この二人も畑仕事を多く担当しているのだけど、その合間にかなり真面目に魔法を学んでいる。


アーディが使うのは、体力を加える魔法…治癒魔法にもなる強化魔法。

サブトゥレの魔法は体力を引く魔法…いわば逆治癒魔法。

その魔法、生命力喪失エナジーフォレフィットを掛けると…山賊どもの身体から、魂が抜けるように薄桃色の分身が煙のように立ち上がり…

その魔法を受けた三人の山賊兵は…急に脚がもつれたようになって崩れ、立ち上がるのも苦しそうなところを…女兵士たちに叩きのめされた。



䦉番隊は、補助の魔法でさらに固く耐え、傷つけば治癒魔法を施し、敵には弱体化を与える、という戦い方だ。

あとは盾を(そろ)えて敵の攻撃を往なしながら…攻めの機を耐えて待つ…


四人とも、貧しい農村にいた子たちだからか、耐えることが身についている印象がある。

盾を構えながらじっと耐えるような戦い方は向いている、とフローレンは見て取った。


もっとも…この程度の敵で、この現在の防御力なら、耐えるまでもなく攻めまくっても大丈夫だろうけど。



隣で次々に敵を倒している参番隊も含め、まだまだ荒削りだけど、八人ともなかなかのものだ。

フローレンが思うに、ここで実戦を経てまたじっくり訓練を重ねれば、かなりのものになりそうだ。



瞬く間に二十人の敵をを全滅させた。

新兵たちは、ちょっと息を弾ませている。


フローレンの見たところ、三段重ねの守りの力を信じれば、もうちょっと動きに余裕が出るはずだ。

まだ不慣れなせいか、無駄な動きも多い。


「みんな、やるじゃない!

 でも、もっと余裕をもっても大丈夫よ。

 体力を消耗しすぎないように、気をつけて!」


フローレンは司令官として、新兵たちに向けて声掛けを行った。


この戦い方を続けると、激しく動きすぎて体力が尽きる危険がある。

敵はまだまだ大勢いるのだ。

村の西側と、この中央とは、敵の集まり具合から見ると、かなりの激戦になることが予想される。


参番隊・䦉番隊の、顔つきや動きがちょっと柔らかくなった。

初めての戦闘らしい戦闘を越えて、自信がついたようである。


そしてすぐに、次の敵が迫る…


次話は…某CS勝てば今日、負ければ明日、UPしようかと考える…

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