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花月演義 ~~花月の乱~~  作者: のわ〜るRion
第9章 花と月と天の契り
103/138

100.天の湖

第9章、今回で終わりませんでした…終わらせるって言ったのに…申し訳ない。


エヴェリエ公国での麗将軍ファリスとの会見の翌日…

フローレンとアルテミシア、そしてクレージュは…


温泉に浸っていた。


「やっぱり…ここのお湯は、いいわねぇ…」


ラクロア大樹の村にも大浴場はある。

あれからアルテミシアは、もうちょっと小規模な、数人で入れるお風呂を幾つか作っていた。

だけど…天然温泉には、作られたお風呂にはない、独特の良さがある訳だ。



なぜフローレンとアルテミシアがこの温泉の村クレフにいるのか、というと…


ファリスとの約束の日までは五日もあった訳で…

この二人は五日間もじっと待っている、なんて事ができるワケがない!


なので、フルマーシュとの中間にあるこの温泉村までは一緒に来た訳だ。

フローレンとアルテミシアは明日の朝、ここで別れてエヴェリエ公国に戻る。

徒歩なら三日かかる距離だけれど、乗合馬車なら一日だから、約束の日には十分に間に合う。




グラニータ、チョコラ、パルフェの不良三人娘は、知り合いと会っているようだ。

ここに実家がある訳ではなさそうだけれど、三人はここ温泉の村クレフで暮らしていたのである。

すっかり立派になった彼女たちの姿を見て、古い知り合いたちも驚いていることだろう。


フローレンたちに絡んできた不良男どもとは、既に縁が切れている様子だ。

おそらくあの男共は、フローレンとアルテミシアをとても恐れているので、姿を見かければ恐ろしくて逃げ出すことだろう。


あと話によると、彼女たちが可愛がっていた妹分がいるらしい。

森に一人で住んでいる、との事で、気にかけているようだ。


「その子も誘ってみたらいいんじゃない」とクレージュが言ったのだけど…

なぜかレメンティが反対した。


「あ、ダメって訳じゃあないのよ…今はダメって事…みたい…」


言葉足らずでわかりにくい理由…だけれど…

要するに、いつもの占いでそう出た、という事だろう。


「この形の変わるアクセサリ見て、めっーーちゃ、欲しがってた!」

「仲間になりたい~、って言ってたんですけど~…」

「今はダメ、って言ったら、ちょっとガッカリしてたね…」


「この辺の裏道には詳しい!、って自慢してて、行商の役に立てる! って」

「通行税取られる関を避けて行ける道とか~、知ってるって言ってたわ~」

「けど通行証があるから、その必要ないって言ったら…めっちゃガッカリしてたね…」


「まあ、あの子だったら、一人でやっていけるでしょ!」

「したたかな子ですからね~」

「盗賊だからね…」


「「「えっ…」」♭」

盗賊、という言葉に…なんかちょっと、微妙な空気が流れた…

盗みから足を洗うなら、という事が、仲間になる条件になりそうだ…



それ以外の女兵士たちも…

森妖精(ドライアード)の薬師のペリットが、温泉の効能について興味を示して、温泉水を大量に持って帰ろうと積み込んで叱られたり、服飾職人のパティットが、ここの浴衣(ユカタ)なる衣装に興味を示していっぱい買おうとして止められたり、

火竜族(サラマンド)のルベラが初めて見る屋台の列に感動して全店廻ろうとして、半分くらい廻ったところでお腹いっぱいになって倒れかけたり、引きこもりなくせに衣類露出度の高いコーラーが、道行く男共に誘いの声を掛けられまくって、メッチャびびってたり、とか…


まあ、ちょっとした騒ぎがあるのは、花月兵団いつもの事ではあるが…

引率役のレメちゃんもクタクタになるくらい、今回のメンバーは個性が強すぎだ…




今回の行商は、フルマーシュからさらに東、首都オーシェ方面を巡る。

オーシェから南にある海岸の町ローレライに、海産物や海塩を仕入れに行く。

フルマーシュのウェイトレスをしているアジュールとセレステを含め、海歌族(セイレーン)女子が四人揃って海辺の町を訪れる予定なのだ。

アルテミシアが同行できない上で気になるのは、海産物を運ぶための冷蔵装置の扱い方だけど、それは今フルマーシュにいるチアノやラピリスたち海歌族(セイレーン)女子に教えてあるので、任せるしかない。


その商談と買付けの後、北の商業都市アングローシャを経由して、ラクロア大樹の村へ帰還する予定だ。

フローレンとアルテミシアはエヴェリエ公国での儀式に参加し、その後フルマーシュの店へ戻り、東から戻ってきたクレージュたちと北行きに合流する、という予定である。






さて…いよいよ約束の五日後…


フローレンとアルテミシアの姿は、再びエヴェリエ公国にあった。

いつもの宿に迎えに来た侍女のレーナに連れられ、お迎えの馬車は街並みを南に走る。

先日訪れたエヴェリエの城を越え、さらに南へと馬車は駆けてゆく…。


突然、馬車の外が薄暗くなった。


お城のさらに南…天に向かって(そび)える岩壁の陰に入ったのだ。




馬車を下りた場所は、神殿のような建物の手前の広場だった。

まだ昼間だというのに、周囲に設えられた光石の照明灯が円形広場を照らしている。


あの岩壁が、眼の前に立ちはだかっている。東西には見渡す限りだ。

ここは、広大な岩壁の麓に作られた、古き時代からの由緒ある神殿なのだ。




麗将軍ファリスは、いつもの板金鎧(プレートアーマー)姿ではなく、国主代行としての正装という感じの衣装だった。

エヴェリエのお決まりである白、薄青、濃青の三色の、貴族とも聖職者ともつかないような衣装。

その姿は、いつもの将軍としてのファリスの権威とは、また別の威厳を感じさせる。


「フローレン! アルテミシア!

 …ようこそ! エヴェリエの式典へ…」


白と青の三段階調の兵が真っ直ぐに立ち並ぶ中、ファリスは自ら駆け寄り、フローレンの両手を取り、アルテミシアの両手を取って、大きく歓迎の意をしめした。


二人に対するファリスの歓迎の気持ちが表れている。

そもそも、わざわざ侍女を迎えに出すほどだし、居並ぶ官僚や兵士たちも、この二人はファリスの大切な友人であると認識されたであろう。

中には、先日の村を救った冒険者の英雄譚を聞かされている兵もいるかもしれない。




「入って頂戴。貴女達で最後だから」


ファリスの背に向こう、岩壁の麓には神殿の入口が見える。


岩壁をくり抜いて作られたような、古い時代からの神殿という感じだ。


中も石造りだが、等間隔に掲げられた光石とはまた違う青白い光のランプに照らされている。

かなり古い時代の、それも高度な魔法技術だ。


フローレンとアルテミシアは、ファリスに続いてその灰色の通路を真っ直ぐに進む。

侍女のレーナとルドラだけがその後をついてきている。



通路の先はかなり広い円形の部屋になっていた。

天井も半球系、ドーム形状の何らかの儀式の間、という感じだ。

部屋の壁際には、何人かの衛兵が等間隔に、直立不動で立っていた。


ファリス直属の三人の上級神官も、ここで待っていた。

先日会った、年嵩な水のアクアーリと妊娠中の風のエアリアーナが礼儀良い会釈をし、フローレン、アルテミシアと目のあったイセリナーエが、特に深々とお辞儀をしている。



「? ここで儀式を行うの?」

「いいえ…これは、転移門(ゲート)ね♪」


フローレンは怪訝な感じに辺りを見回していたけれど、アルテミシアはさすがにその構造を目にしただけで、この部屋が転移装置である事を見抜いた。


「正解よ。これは古代の転移門(ゲート)…ここから聖地へ行くことができるの」


その床には、浅く彫られた三重の円環の模様が大きく描かれている。

ファリスが促すまま、その中央に入る。

続いて二人の侍女と三人の上級神官も円の中に入った。


三人の上級神官は外向きになり、それぞれ詠唱を始めた。

この転移装置は、光と、風と、水の、三人の上級神官によって起動される仕組みだ。


濃青神官衣装の母親的なアクアーリの詠唱と共に、内側の円環に青い光が灯り、

薄青神官衣装の若い妊婦エアリアーナの詠唱で、二番目の円環に青白い光が輝く。

白い神官衣装の少女イセリナーエの詠唱で、外側の円環に白い光が立ち上った。


周囲に並ぶ衛兵たちの見守る中…

三重の円環模様がそれぞれ、濃青と薄青と白の光を放ち。徐々にその光を強めていく…



そしてその中央は、青と白とその混じり合う無数の中間色の輝きで満たされ…

やがてその光とともに、八人の姿はその場から消えていた…。




青と白の光の中を抜けてゆく…

フローレンとアルテミシアの感覚としては…スィーニ山からラクロア大樹への転移門、通称「虹の橋」を使う時の感覚に近い。

ただ、あちらが前から後ろへ抜けていく感じなのに対して、ここの転移装置は縦に、つまり上方向へ抜けていく感覚がある…

自分たちの身体の回りを、上から下に無数の青と白の光が駆け抜ける…

それはまるで…勢いのある風雨が、光と共に天から降り注ぐような…そんな圧力を感じずにはいられない…


やがて、縦に動くような感覚が収まった…

回りの青と白の光も、徐々に晴れてゆく…

どうやら到着したようだ。

フローレンもアルテミシアも、虹の橋の転移門は身体が慣れてしまっているけれど、初めての転移門はやはり不慣れなものだ。

お腹の中がかき回されたような、僅かに酔ったような感覚が残っている…



やがて青と白の光は完全に消失した。

元いた部屋と同じ、三重の円環が中央の床に描かれた半球状のホールの中だった。

先程の部屋と違うのは、壁や床の色が石の灰色ではなく、白っぽく明るい…

高みにある窓から陽光と思しき光が注いでいるからだ。


部屋の入口に立っていた衛兵が、ファリスの姿を認めると、敬礼を作り扉を開く。




その扉の向こう…部屋の外には、屋外の景色が広がっていた。


「ようこそ! ここがエヴェリエの聖域よ」


空気が澄んでいる…というより…

()しか、空気が薄いように感じる…


「何だろ…? 高い山の上にいるみたい…」

「ここって…まさか…!♪」


「そう。あの岩壁の上、よ」


ファリスは何気ない感じで、さらっと言ってのけた…

フローレンとアルテミシアは、「ウソ…?」「まさか…#」と、驚きで目を丸くしてしまっているのだけれど…



そう、エヴェリエの聖地は、あの空を貫くような岩壁の上にあるのだ。



おそらく…このルルメラルアや近隣諸国一帯の中で、最も高みに位置する場所…

どの山よりも高く…もちろん、ラクロアの大樹すら、眼下に見下ろす事になるだろう…



聖域とは言っても、そこに自然は普通に存在する。

眼の前に広がる森は、生命力にあふれるように木々は緑に輝き、そこから流れてくる小川は、浅い川底がそのまま見えるような、透き通るような清流だ。

ただの自然にもどこか聖域を思わせるように、清純さや活力に満ちている…。


フローレンたちが出てきた転移門装置のあったドーム状の建築物…

そして、その裏側…そちら側には…



遠く、地上の風景が広がっていた…



「あ…あまり崖側には行かないでね」


そっちに行こうとするフローレンとアルテミシアに、ファリスが注意を促した。

もちろん、そちら側は崖っぷちになっている為だ…


一応、この聖域は、広範囲の結界系魔法で守られている…らしい…

突風に煽られて飛ばされる事もなければ、通常なら肌寒いはずだけれども心地よい気温が保たれている。


その崖からは軽く二十歩ほども距離をとって、近づかないようにしながら…

そっと眼下を見渡してみる…


下にはうっすらと雲がかかり…その切れ間からは、ほんとに小さく、手の平で隠れるほどの大きさになった青と白らしい縦長三角形の城下町が見下ろせる…


その壮観に、言葉を失う二人…


どうやら、エヴェリエ城の南に(そび)えるあの岩壁の上…

地上を遥かに超えた、天の高みにいるのは間違いなさそうである。




感動的な光景に浸りたいところだけれど、それは後回し。

エヴェリエの祭事がもうすぐ始まろうとしているのだ。


澄んだ小川の上流へ向かって歩いていた。

イセリナたち三人の神官が先導し、その後をファリスに並んで、フローレンとアルテミシアはついて行く。

古風な石畳の道を歩き、木々を抜けた向こう側…そこには…


広大な水場が広がっていた…


その水面(みなも)は、空の色を映し、陽の光を返し、見渡す限り、はるか向こうまで広がる…その先が霞がかっていて、対岸が確認できない…それ程に広大なのだ…。



「ここがエヴェリエの“天の湖”よ」



そう…“池”という大きさではない。

ここが天高い地だと知らなければ、“海”だと言われても疑わないであろう…

その広大さは、“湖”と呼ぶに相応しい…。


「うわぁ…広いなぁー…」

「本当にあったんだ~…♪」


行商で南街道を進んでいた時「この岩壁の上には湖があるらしい」という事を話していた。

それは、半信半疑な、言わば伝説的なものを語るようであった。

だけれど、それが今、眼の前に広がっている…

伝説は、意外と身近なところに実在した…

フローレンもアルテミシアも感慨深く、幻想の中にいるような気持ちになっていた。



その湖岸に沿うように、(かげ)りのない白い石で作られた建物があった。

古い時代に建てられたとわかるような作りなのだけど、その作りは非常にしっかりしていて、時と共に風化した感じが全くしない。


この湖岸に面したその建物で、エヴェリエの式典は行われる。


古来より続く光と風と水の、土着信仰の「聖廟」とも呼べる建物だが、仕える者たちが「神官」と呼ばれているので、ロエル神の「神殿」と呼ぶほうが相違ないかも知れない。

ともあれ、祭事の場である事にかわりはない。


白青三色の神官たちや、白青三段階調の兵士たちの姿が多数、見受けられる。

その一角には、高貴な身なりの人たちが集っていた。

エヴェリエの名士たち、そしてルルメラルア各地の貴族たちだ。

もっとも、爵位を持つ人物の多くは、北の内乱の地へ兵を率いて行っているので、その代理人や、特に婦人の参加者の姿が目立つ。



エヴェリエ当主代理である公女ファリスの到着に、彼らの目が集まった。

彼女の到着は、祭事が始まる事を意味する。



神殿の南側、湖岸に面した場所には、白い石造りのテラスが巡らされていた。


そこに設えられた席に、参列者が順次、座ってゆく…

おそらく、家格や爵位の高い者たちから順番、という感じだ。

続いて、エヴェリエ領内の貴族や有力者たち…


フローレンとアルテミシアは、最後になって、後ろの席についた。

小柄なほうの侍女レーナが、フローレンとアルテミシアの接待を担当し、後ろからこっそり次の行動を教示してくれる。難しい作法はいらない、という話だけど…二人とも、特にフローレンは、こういった式典なんかには実に不慣れでなのである…。


イセリナたちファリス直属の上級神官三人は、いつの間にか、他の神官たちに混ざっていた。

儀式を執り行うのは、その上級神官たちだ。

主催者に当たるファリスも、一番前の席に着いている。



陽光に照らされた、風吹きすさぶ澄み渡った湖を背景に…

白と薄青と濃青の長衣を着た下級の女神官たちが、舞を舞う。


白は照らす天光のように動きを止め、

薄青は吹きすさぶ風のように激しく、

濃青は波打つ水面のように静かに、

舞姫たちの衣は重なり合い、まるでひとつの風景のように感じられる。

統率され洗練された、流暢な麗しい動きだ。


あちらでは別の神官たちが色に合わせて三列に居並び、様々な楽器によって楽曲を奏でている。

自身も歌姫であり楽曲に詳しいアルテミシアには、これが古い時代の旋律である事がわかる。

かなり古い時代に作られた楽曲だというのなら、この儀式はもう何百年も続けられている…そういう事になる…。


そんな古代音楽の調べが、古代への思いを掻き立てる…

アルテミシアは、南街道にあった、あの遺跡を思い出していた。

このエヴェリエの真南、岩壁の反対側辺りに位置するはずだ。


(あの遺跡が、この天の湖への上り口ではなかった訳ね…♭

 ん…待ってよ…?

 じゃあ、あの遺跡には…何が…?)


この厳かな儀式の中、アルテミシアはひとり、そんなことを考えている…

だけど、答えはそこにはない。

眼の前にある聖地の壮大な自然の風景も、記憶の中にある古代の謎多き遺跡も、どちらも神秘的な謎に満ちている…



いつの間にか、太陽が中天に上っていた。

風に揺れる水面にその姿を映し、もう一つのお日様がそこにあるように、激しく輝いている。

儀式は続き、次の舞いに変わり、そして違う楽曲に変わる。


別の神官たちが、参列者の席を順々に廻っている。

薄青の神官が、水色金属の聖なる杯をお客に手渡し、

濃青の神官が、透明な硝子(ガラス)の水差しを持ってそこに水を注ぎ、

白色の神官が、そこに祝福を与える…

参列者全員が、順々にこの天空の泉の聖なる水を頂く。


神官たちは順番に…最後にフローレンとアルテミシアのところへも廻ってきた。

フローレンもアルテミシアも、(うやうや)しく…ちょっとぎこちなく…前の参拝者の動きの真似をする…。戸惑っていると、後ろで侍女のレーナがこっそりと教えてくれたりする。


風の神官から手渡された聖なる杯は…ショコール王国など水と風の強い地域で採れる水流風錫(アクアリアラティーナ)という薄青色の金属だ。

そこに水の神官によって、聖なる水が注がれる…その水差しは、遠くから見ると水があまりに透明すぎて、中に何も入っていないように見える程だ…

そして、聖杯の聖水に聖光の祝福が与えられる…光の神官によって、わずかに粉のようなものが注がれた。

その粉が、聖なる水の中で、キラキラと聖なる光の粒になって幾つも輝くのだ。


フローレンは空色の杯の中にある、その小さな世界の美しさに見とれながらも、先の人に倣って水を口に含んだ。

その聖水は、ほのかに甘く、喉を滑り癒やすように体内へ流れ込み、おなかの中にひんやりとした心地よさを残す…そして、その心地よさは、次第に全身へと伝わってゆく…。


その聖水を口にした後から…フローレンもアルテミシアも、なんだか幻想的な中にいるような気分が強くなってきた。他の参列者も、そう感じている事だろう…。


そこからまた楽曲と舞が変わり、三色の神官たちからそれぞれ光と水と風の祝福を授かったり、打って変わって十二神の神王ロエルのへの賛辞に変わり、神を讃える言葉を参列者全員で共に延べたりした、のだけど…

途中からは夢見心地の中にいるような感覚で、儀式は終局を迎えていた。





儀式は無事終了し、参列者の地上への帰還が始まっていた。

三人の上級神官が、順次“下”に下ろしてゆく、のだけれど…それでも数人ずつなので、かなりの人数が転移門(ゲート)の順番待ちをする事になる。


一般に、転移装置は一度起動すると、次回までの使用に時間的制限がある。

ラクロア大樹の“虹の橋”も、転送できるのは一度に十人程度で、次の使用までは、それこそ古代時間でよく出てくる、十分というくらいの時間を待たねければならない。


ルルメラルアの諸貴族やその代理人たちが、まず最初に“下”へ戻っていった。

ファリスは国主代行として、そのひとりひとりに対し、参加への礼を延べている。

次にエヴェリエの名士、という順に下りていく。

客人であるフローレンとアルテミシアは、そのさらに後で、ファリスと一緒に下に戻ることになる。


「しばらく待つことになりそうね…」

「そうね…♭ ここ、勝手に立ち歩いたら、怒られるかな?」


二人とも、かなり手持ち無沙汰だ。フローレンはじっとしているのが苦手だし、アルテミシアはこの聖域に関する興味を抑えられない…

我慢しきれないアルテミシアが「そのへんまで、ちょっとだけ♪」と立ち上がり、フローレンも一緒しようとした、その時…


「散策ね。行きましょうか」

と、背後から声をかけられた。


エヴェリエ公国編は次回で終了

残りはルーメリア編で、長くなった第9章もやっと終了の予定、です…

そろそろ大樹村の生活に戻りたい…

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