第九場(河原)
登場人物
大竹甚平利巌(32) 男 新之助に雇われた凄腕用心棒
新之助
権三
辰五郎
与平
****
魔左衛門
お菊
喜平
〇河原
魔左衛門、魔左衛門は刀を抜き、新之助たちを睨みつける。
新之助の背後には子分の権三、辰五郎、与平、そして用心棒の大竹が控えている。
お菊と喜平、土手を登って逃げる。
新之助「差しで魔左衛門と戦うな。いっせいに斬りかかるんだ」
権三、与平、辰五郎の三人は、同時に魔左衛門に襲いかかる。
魔左衛門、獣のように天高く跳躍し、視界から消える。
権三の槍が誤って与平の胸を刺す。
権三「与平!」
槍を抜くと与平は息絶え、崩れ落ちる。
ちょうどそのとき、魔左衛門は辰五郎の背後に着地する。
辰五郎が振り向くと、大上段の構えから魔左衛門が刀を振り下ろす。
辰五郎、頭から血を吹き出しながら転倒する。
権三「食らえ!」
権三の槍が魔左衛門の脇腹を突く。
青緑色の鮮血が河原の石を染める。
魔左衛門、左手で槍を掴んで脇腹から抜き、槍を持ち上げる。
槍を抱えていた権三の体は宙に浮き、もんどり打って地面に尻もちをつく。
魔左衛門、槍を権三に突き刺す。
血しぶきが上がり、権三は絶命する。
魔左衛門の脇腹の傷をクローズアップ。CGで傷が急速に癒える。
大竹「おぬし、できるな」
大竹、おもむろに刀を下段に構え、魔左衛門と対峙する。
お菊「マーさん。助けて」
新之助がお菊を羽交い絞めにし、首に脇差の刃を当てている。
新之助「魔左衛門。この娘の命が惜しくば、刀を捨てろ」
魔左衛門、やや躊躇した後、刀を地面に投げ捨てる。
すかさず大竹が飛び掛かり、刀で魔左衛門の首をはねる。
お菊「キャー」
三度笠をかぶった魔左衛門の首が宙を舞って川に落ちる。
首を失った魔左衛門の体は、ゆっくりと前のめりに崩れ落ちる。
ジュゥゥゥゥーという音と白煙が首のあったところから立ち上る。
止めどなく流れる青緑色の血が、河原を伝って川の水に混じる。
新之助「とうとう死にやがったぜ」
(つづく)