第四場(鉄火場)
登場人物
魔左衛門
お京(28) 女ツボ振り師
新之助(45) 男 眼帯をしたヤクザの親分兼鉄火場の貸元 背中に七色の龍の入れ墨
辰五郎(33) 男 中盆
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客1~4 モブキャラ。全員男。年齢は壮年から中年ぐらい。
◯鉄火場
最初に新之助の背中の入れ墨をクローズアップ。七色の龍が描かれている。
鉄火場は辰五郎、お京、新之助の順に博徒が並び、客と対峙している。
辰五郎はさらしを巻き、新之助は上半身裸。
お京は黒い着物の掛け衿から肩腕を出し、右肩の柔肌と白いさらしに巻いた胸元を露出している。
客は5名。中央に魔左衛門。
博徒と客の間の床は二つに区切られ、博徒側が丁、客側が半と書かれた習字の紙が置いてある。
お京の手前には盆茣蓙。
お京、壺を持つ右手と賽を持つ左手を交差させる。左手には人差し指と中指、中指と薬指にそれぞれ賽をはさんでいる。
辰五郎「入ります」
お京、賽を壺に入れ、軽く振った後、盆茣蓙の上に伏せる。
辰五郎「さあ、張った、張った」
客がそれぞれ駒を賭ける。魔左衛門は駒を丁に張る。
辰五郎「丁半出そろいました。勝負」
お京、壺を開ける。ピンゾロの丁。
辰五郎「ピンゾロの丁」
客1、「くっそう」と叫んで立ち上がり、鉄火場を後にする。
魔左衛門、駒を受け取る。
魔左衛門、立ち上がり、鉄火場を後にしようとする。
新之助「三度笠のお客さん、もう一勝負お願いしますよ。さっきから勝ってばかりじゃないですか、勝ち逃げはいけませんよ」
魔左衛門「おれが負けるまで帰さないつもりか」
新之助「そういうわけじゃありませんがねえ。ときにお客さん、いい刀お持ちですね。名刀、『村正』じゃありませんか」
魔左衛門「...」
新之助「こう見えて、あっしは刀には詳しいんですがね、名刀には二種類あるんです。
一つは床の間の飾り物として骨董商に高く売れる美しい刀。もう一つは人を斬る道具として値打ちのある刀。『村正』は後者の名刀なんです」
魔左衛門「何が言いたい」
新之助「よかったら、その刀とこいつを賭けませんか(新之助、懐から小判を取り出す)」
魔左衛門「...」
新之助「勝負してくれますか」
魔左衛門「おもしろい」
新之助「よし、決まりだ。(周囲の客に向かって)次の勝負はあっしと三度笠のお客さんとの一騎打ちになります。他の客さんは一回だけお休みください」
新之助、お京に目配せする。
お京、を持つ右手と賽を持つ左手を交差させる。
辰五郎「入ります」
お京、賽を壺に入れ、軽く振った後、盆茣蓙の上に伏せる。
魔左衛門、刀を半側に置く。
新之助、小判を丁側に置く。
辰五郎「勝負」
お京、壺を開ける。サブロクの半。
辰五郎「サブロクの半」
周囲からどよめきが上がる。
新之助、舌打ちする。
魔左衛門、刀と小判を受け取ると、その場を去る。
(つづく)