第二場(畦道、茶屋)
登場人物
魔左衛門
野武士4 少年
坊主
茶屋の女将
〇畦道
畦道の両脇は水田。人気はない。
魔左衛門、野武士4を追いかける。
野武士4、突然、走るのをやめて振り返り、魔左衛門に矢を構える。
野武士4「来るな。こっちへ来るな」
魔左衛門、しばらく不動のまま野武士4を睨みつけた後、ゆっくりと少年の方へ歩み寄る。
最初の矢は魔左衛門の額に命中する。
だが魔左衛門は倒れない。
矢の先から青緑色の血が地面に滴り落ちる。
野武士4、背中の弓筒から次々と矢を取り出しては魔左衛門に射る。
矢は魔左衛門の胸や腹を埋め尽くす。
だが魔左衛門は歩みを止めない。
弓筒の矢がなくなる前に、魔左衛門、野武士4の胸蔵を掴み、体ごと宙に持ち上げる。
野武士4「殺せ。殺すなら早く殺せ」
魔左衛門「なぜ坊主を殺した?」
野武士4「あいつじゃない。最初からお前を狙ったんだ」
魔左衛門は手を放す。
野武士4の体は地面に落ちる。
野武士4が起き上がると魔左衛門は野武士4の頬を二回張る。
野武士4はまたしても地面に崩れ落ち、体を丸めて嗚咽する。
魔左衛門「無駄な殺生はするな。無駄な殺生ばかりしていると、おれのようになってしまう。殺生は大人になってからでいい。子供のうちから、殺生なんてするものじゃない」
魔左衛門、体から矢を引き抜きながら、元来た道を戻る。
〇茶屋
魔左衛門、額に矢が刺さったまま茶屋まで戻る。
坊主の死体の周囲に人だかりができている。
魔左衛門、懐から寛永通宝を数枚取り出し、茶屋の女将を見つけると机の上に置く。
魔左衛門「これで足りるか?」
茶屋の女将、魔左衛門に気づくと悲鳴を上げる。
茶屋の客たちの視線が魔左衛門に集まる。
魔左衛門、額に刺さったままの矢に気づき、引き抜いて地面に捨てる。
魔左衛門「長居しない方がいいかな」
魔左衛門、足早に茶屋を後にする。
(つづく)