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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

思い出して

作者: りんご時雨

短いです。

わかりにくかったでしょ。

ここらへん、住宅街で、目印になるものなにもないから。

まあ、そこらへんにお座りください。

紅茶好きですか? あ、嫌い?

じゃあ、コーヒーにしましょうか。

コーヒー、私も好きでしてねえ。ついに豆を買ってしまいました。

妻からは、『すぐに飽きるわよ』って言われているんですけどねえ。

え? 一日に六杯飲むこともある?

すごいなあ。

私は、もう仕事は退職しましたから。

きっと、仕事のストレスですよ、それ。


ああ、すいません。

本題に入りましょうか。

実は、この写真について悩んでいまして。

ははっ。かわいいでしょう?

このタンクトップを着た男の子が私です。

横の女の子は、確か近所の友達だったと思うんですが……。

はい。記憶が曖昧なんです。

まあ、この年ですから、半世紀近く前の写真ですよ。


あなたを呼んだのは、この子の行方について知りたくてですね。

え? もう、調べた?

……ははっ。さすが、本職の方は違いますね。


神社の階段を誤って落ちて、亡くなったんですか。

はあ。こんなかわいい子がねえ……。

赤いワンピースが、よく似合っている。

初恋? いいえ、私は最近写真を見つけるまで、忘れていたほどですから。

初恋は妻に捧げていますよ。

ええ。妻とも家が近くて、幼なじみだったんです。

でも、妻も、この赤いワンピースの女の子のことは、覚えていないという。

まあ、小さいときにいなくなった子のことなんか、覚えていないものでしょうねえ。


あ、書類ですか。

『青城 梨子』ちゃん。少し変わった名前ですねえ。『子』がついているあたり、昭和を感じさせますが。

この写真だとさらにかわいく見えますね。

ピアノ教室に通っていたんですね。

ええ。私には、姉がいまして、その姉も通っていました。

姉は、親にねだって教室に通っていたのに、数ヶ月で自分からやめてしまいました。

私はこの年になってからピアノを始めましたよ。

なぜか、『喜びの歌』だけが弾ける。


思い出しました。幼稚園で、鍵盤ハーモニカで弾かせられたんです。

三つ子の魂百までと言いますが、少し怖いですね。


え? 顔色が悪い?

そうですねえ……。

水をくんできます。


……思い出したんです。

私、姉がピアノを貸してくれないんで、この女の子にピアノを弾かせて欲しいと頼んだんです。神社で。


女の子は、断りました。


だから私は、


頭にきて、


女の子を、


階段の一番上のところから突き落としたんです。



お読みいただきありがとうございました。

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