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小説家になろうラジオ大賞4

幸せの黄色いひまわり

作者: 夜狩仁志

なろうラジオ大賞4 参加作品

テーマは「ひまわり」です。

 いよいよ魔王との最終決戦を控えたある日の夜。

 城内では、ささやかな宴がひらかれていた。


 中庭では、王国のお姫様が1人夜空を見上げる。

 そこへ勇者が姿を現す。


「勇者様、いよいよですね」

「はい。必ずや魔王を打ち倒し、この国に平和を取り戻してみせます」


「どうかご無事で…… 必ず戻ってきて下さい」


 きっと激しい戦いになる。正直、生きて帰れるかは分からない。

 勇者は返事をせず、軽く(うなず)くだけだった。その代わりに懐からあるものを取り出す。


「これを受け取ってもらえますか?」

「これは種? でしょうか?」


「これはヒマワリという花の種です」


 それは勇者がもといた世界に咲く花の種。


「これは、姫君のように寛大で朗らかな素敵な花の種で、見る者全てを幸せにさせてくれます」


「その様な種を私に?」


「この荒廃した大地にこの種をまき、緑豊かな土地にして下さい。また、この種は食べることができます。飢えで苦しむ多くの民に分け与えてください。

 そして、この国をヒマワリの咲き誇る国へと復興させて下さい。私はこの花が咲く頃には、必ず戻ってきます」


「分かりました。必ずですよ」

「はい」


 そして明くる日、勇者一行は旅立っていった。


 その日から姫様は毎日、魔物に蹂躙された田畑を耕し続け、ヒマワリの種を植えた。

 やがて芽が出て、天へと力強く伸びていく。

 そして大きな花を太陽に向かって咲かせたヒマワリは、姫様だけでなく国中の人々に復興の象徴として希望を与えた。


 いつしか魔物は消え去り、誰もが勇者一行が魔王を打ち倒したことを確信した。

 しかし、いくら待とうと、彼らが帰ってくる気配はなかった。

 次第に人々からは忘れ去られ、世界は平和となり、以前のような活気ある王国へと戻っていった。


 そして幾つもの季節を越えて……


 辺り一面に咲き誇るヒマワリの丘に、1人の旅人がやって来た。


「おや? 旅のお方ですか?」


 通りかかった農家の翁が、男に気が付き話しかける。


「これはすごい。まさか、ここまでになるとは」

「あぁ、これですか? これはヒマワリという花ですよ。この国のお姫様が、長い月日をかけて植えてこられました。お陰で飢えで苦しい時にこの花の種を食べることで、なんとか生き延びることが出来ました」


「姫様は、今どちらに?」

「まだ1人城の中で暮らしております。平和な時代となり、城に留まる必要はないものを……」


「そうか、ありがとう」


 男は礼を言うと、ヒマワリの咲く中、足早に城へと向かうのだった。


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