第2夜 ここは地獄の7番街?
その後、何度掛け直しても電話は繋がらなかった。
「帰りたい……」
音だけの花火を聞きながら、膝に顔を埋める。
ここに来る前から疲れていた。就活とか課題とか。
お祈りメールが来る度に、死にたくなった。
でも、死ぬ気は無かった。
大企業は無理でも、そこそこ気の合う人と普通に結婚して、普通に幸せになるつもりだった。
私には未来があったはずなのに。
スマホに気が向いていて、抵抗力の無さそうな女性だったから、道連れに選ばれた。
就活の為にお母さんが用意してくれたハイヒールが片方無い。
「靴擦れするから普通の低いので良い」
って、言ったのに
「女の子はヒールを高くした分だけ新しい世界が見えるの。強い気持ちで戦えるのよ」
って言って、結局は靴擦れしたな。
駅にはシンデレラみたいに靴が片方だけ残っていて……レールには血まみれの死体が2つあるのかな。
空の花火は止まない。
「のど……渇いた…………」
何回も使ってびしょ濡れのティッシュを鞄に入れて、立ち上がる。
何でも良いから飲み水を探そう。
目標が出来ると、吐き気が少しだけマシになった。
靴擦れするだけのヒールは脱いだ。
ボサボサになった髪の毛を結び直して、気合を入れる。
「よし」
_______
まずは飲み水。その他に、食料、人、充電器が欲しい。
人のいない街をゲームみたいに探索して、入れ物と飲めそうな水を確保した。
床下や戸棚を奥を見てみれば、缶詰やお金らしきものもあった。
探索して気付いた事は、この街に生活感がある事。
埃の被ったゴーストタウンというより、強制退去させられたような……。
必要な物だけ持って避難した印象が強い。
「干し肉、乾パン、アスパラガスの缶詰、ツナ缶、サバ缶………」
文字は読めるし味も普通。
看板も読めたから、ここは日本語圏……なのかな?
分からない。
ここは地獄?それとも人のいなくなった街にたまたまワープした?
戦時中にタイムスリップしたんだろうか?何かの実験体としてここへ連れてこられた?
異世界や並行世界、入院中に見てる夢というのも思いつく。
カタカタカタカタカタカタ……
「……っ!」
豆電球を消した。揺れが収まる。
大事な食料と鞄を持って、別の部屋へ移動する。
この世界は、一定時間灯りをつけていると部屋の物が揺れる。
つけ続けてあると、揺れが激しくなる。
それ以上は怖いから実験していない。
「お邪魔します」
普通の家と違って、お店らしい建物に入ると自動で電気がつく。
大きい金庫が見えるけれど、それを開けている時間は無い。
サッと使えそうな物を見付けて、お店から逃げる。長居するとブザーも鳴るのだ。
ガタガタが来る。
「靴下、靴、裁縫道具も取れた」
破れたストッキングを脱いで、新しい靴と靴下を身に付ける。
これで行動範囲が広がった。途中で見付けたリュックに戦利品を入れて、少しランクが高そうな家に戻る。
今の自分、超ホラーゲーム……!
それから長屋の大家さんっぽい家で冷たいシャワーを済ませた後、薄っぺらい布団で就寝した。
【のぞみメモ】
私の推しシルバー君は、⭐︎⭐︎⭐︎ながらも超有能なキャラ!!可愛い!カッコイイ!健気!!
最初は影の国出身というオンリーワンな生い立ちで誰とも馴染めなかったけれど、主人公が熱心に勧誘を続けたお蔭で心を開き、笑顔になる。
そして、主人公にだけ生意気になる。
偉いねぇ!!信頼の証だねぇ!!!
影の国ストーリー読みたかったなぁ………。