リアリストとアーティスト
白夜と黒金の危機を知らないノゾミ達は、次のフロアでオモチャの兵隊達に囲まれていた。
「ノゾミちゃん!早くそこをどくっす!スマパラを裏切る気っすか!!」
「ど、どきません!」
ノゾミは自分達を攻撃したぬいぐるみ達を、必死で庇っていた。
「ごめんなさい!壊さない方向で戦えませんか?」
「それは無理だと思います」
アチョーさんは、無茶な要求をする私に悲しげに首を振った。
自分でも無茶な事を言っているのは分かる。
幸い、今はどのオモチャも攻撃してこないが、この半円形に配置されたぬいぐるみ達は容赦なく銃撃してくる。
ぬいぐるみの銃弾を受けたノゾミの肩や脚からは、血が流れていた。
「どのぬいぐるみが動くか分からないんすから、全部壊すべきっす!」
「ごめんなさい!……この子達を壊すなら、私を殺してからにしてください!」
私を避けて鉤を振り下ろそうとするボムちゃんを、抱き締めるように止める。
今はぬいぐるみが大人しいから、アチョーさんも様子見をしてくれている。
この均衡がいつ崩れるかは分からない!
「誰かが一生懸命に作った作品だからって理由で、ノゾミちゃんが敵対する意味が分かんないっすよ!!」
ボムちゃんの重量のある蹴りが、私の出血する脚に振り下ろされた。
「ぐっ!」
茶色いクマのぬいぐるみが、ボムちゃんによって鷲掴みにされる。
「アッサム!!」
私はクマさんの名前を呼んで、ボムちゃんの腕にしがみついた。
何とかボムちゃんがぬいぐるみを壊さない言い訳を考える。
「殺すとアウトです!ぬいぐるみ1つ1つに名前があるという事は、毒虎一家の一員なんです!殺したら、こちらの負けになります!」
ボムちゃんのぬいぐるみを切ろうとする手がピタリと止まった。
_________
約1時間前……
天井を蹴り破った事で、運良く3原色のフロアを無犠牲で通れた私達は6階と5階の間に辿り着いた。
「!?」
ここは以前、壁に絵が描かれていただけの何もない空間だったけれど、今は呪われそうな量のぬいぐるみが半円状に階段を向いている。
「すごい!」
ウサギもクマもお猿さんも、みんな服を着て小さな銃を握っていた。
十中八九罠だが、夢中でぬいぐるみ達を鑑賞してしまう。
「なんだか可愛い部屋っすね」
「部屋の主人はどこでしょうか……?」
怪しいといえば、このぬいぐるみの山の4体ほどが人間が入っていてもおかしくないサイズだ。
「とにかく怪しいので、全部壊しとくっす」
「ぇ。」
ボムちゃんが物騒な台詞を吐いた瞬間、全てのぬいぐるみの頭の上に『play』というアイコンが現れた。
パラララララ……!!
米粒が床に落ちるような軽い音と一緒に、全身に痛みが走る。
痛みというより、水圧の高いシャワーをバシバシ浴びている感覚に近い。
「あたっあたたたっ」
的の大きいアチョーさんが、縮んだ。
「退避するっす!」
ボムちゃんの合図で階段へ戻り、ぬいぐるみ達の見えない範囲でしゃがんだ。
それぞれの安全を確認しながら、自分の服についた物を払う。
「服にたくさん砂のような物が付いてますね」
「目に入ってたら危なかったですね」
スリットを入れたリクルートスーツには、白い弾が雪みたいに目立って落としやすかった。
この白い弾、よく見るとちゃんとピストルの弾の形をしている。
階段から注意深い目でぬいぐるみの部屋を偵察していたボムちゃんが、試しに自分の上着を部屋に投げ込んだ。
パラ……
一瞬だけ米粒の音がして、止む。
「一定の時間、決まった大きさや重量の物に反応する訳じゃ無さそうっすね」
「つまり、術者本人が部屋の状況を見たうえで攻撃をしている可能性が高いという事ですね」
ボムちゃんとアチョーさんの言葉に頷く。
「監視カメラですかね?」
「銃撃の単調さから考えて、視点は1つ。監視カメラを付けるとしたら、部屋全体の他にも階段まで見えるように設置する方が現実的だと思います」
なるほど!流石アチョーさんだ。
「術者本体はぬいぐるみの山の中か、着ぐるみを着て紛れ込んでる可能性があるっすね。問題は、ぬいぐるみが大きければ銃も大きいこと」
おぉ!ボムちゃんも頭が良い!
私がぬいぐるみの製作者に想いを馳せている間に、先輩2人は有益な情報をいくつも出してくれた。
私も何か役に立つ事を言いたい!
「最初部屋に入った時、人間サイズの銃を使わなかったのは何故でしょう?」
「そうっすね……」
「ぬいぐるみを見て欲しかったんじゃないでしょうか?とても良い出来栄えですし」
「なるほど!」
「いや、そんな訳ないじゃないっすか。能力の発動までにタイムラグがある方が現実的っす。あれだけ大量のぬいぐるみを操れるのなら、そのくらいのデメリットもあるはずっす」
だとしたら油断してる内に1番強い銃で撃てば良かったと思うけど……。
先輩2人に合わせて「うーん」と唸る。
とにかく今出来る事は弾切れを待つ事と術者を特定する事だろうか。
ふと、アチョーさんが視線を上げて、釣られるように私達も視線を階段の上にやった。
ペシーンッペシーンッ
前列に座っていた子の中で、サングラスをかけてヤンチャそうだった5匹が銃を手で弄んだり、首をクイクイさせながら私達を見下ろしている。
ぎゃわいい!
「くっ!」
「静かに。術者から見えなければ襲われる心配もないっすし、銃弾の威力も大したことないっす」
ボムちゃんに制されて、アチョーさんは肩を下ろした。
私がぬいぐるみ1匹1匹の個性に尊死してる間に、2人はちゃんと戦いの事を考えている。
全部、ぬいぐるみ達が可愛過ぎるせいだ!
…………いや、本当は私の戦闘に対する集中力が切れているのが悪い。
2人に比べて危機感が薄いのもまた、ダメな所だ。
ここまで誰かが大怪我をするような戦いをして来なかったから、気が緩んでいたのかもしれない。
ボムちゃんの言う通り、ぬいぐるみ達は威嚇するだけで攻撃はして来なかった。
「もしかしたら私、術者を特定出来るかもしれません」
「本当っすか?」
「話してみて下さい」
私はぬいぐるみが動いている間は、1匹1匹の頭に『play』というアイコンが浮かんで見えることを話した。
「つまり、そのアイコンが浮かんでいない着ぐるみが術者の可能性が高いです」
「なるほど。ノゾミさんの能力が見える能力ですね!」
「能力というよりはプレ……異世界人特権だと思います」
プレイヤーというと、アチョーさん達がゲーム世界の人物のように聞こえるので言葉をすり替えた。
この世界がゲームな可能性は高いけれど、本物の異世界の可能性だってあるのだ。
「でも凄いっす!少なくとも着ぐるみの中に人が入っていなければ、遠慮なく壊せるっすから!」
それは出来れば止めて欲しいけど、そうも言ってられない。
「では、気を付けつつ見てきます」
まずは階段の上で威嚇しているぬいぐるみ達を捕獲して、見えない範囲まで移動する。
「いてて……。材質は布で、手先だけ固い何かが入ってました」
「お疲れ様です」
「私等で片付けるべきだったっすね」
「いえ、良いんです。新入りですから」
私は清らかな後輩の顔で2人の気遣いを受け止めた。
ボムちゃん達に任せるとぬいぐるみを壊されそうだから……とは言えない。
「それでは……」
後の言葉を切り、階段からソロリと頭を出した。
銃撃は無い。
まずは自分の靴を投げ込んでみた。
ゴンッ
靴の落下した音だけで反応は無い。
片方だけ履いててもアレなので、もう片方も投げてみる。
ゴンッ
反応は無かった。
「わーーーー!!!」
反応無し。
「アチョーーーーーー!!!」
反応無し。
大声作戦も無駄なようだ。申し訳ない。
後ろの方でボムちゃんが
「見ちゃダメっす!」
と言って、アチョーさんを叱っていた。
体勢は仕方ないので、私はスカートのお尻辺りを押さえた。
「すみません……」
「いえ」
アチョーさんなら下心無さそうなので、OKだ。
ヤンチャなぬいぐるみ達と違って、他のぬいぐるみが動く様子はない。
もう投げ込むものも無いし、一瞬だけ部屋の中に入ってパッと逃げようかな。
イギリスから来た英語の先生が、風船が割れた時すぐにしゃがんでいた記憶がある。
しゃがめば、助かる確率が上がるという事だ。
パンッでしゃがむ。パンッでしゃがむ。
「フッ!」
大きく息を吸って、止めた。
書道の練習でついた集中する時の癖だ。
大きく部屋の中心に飛び込んだ後、一拍遅れてぬいぐるみ達の頭に『play』が浮かんだ。
大きい奴の頭をチェック!
キリンさん『play』
恐竜さん『play』
大王イカ……?
あれ?大王イカの頭の上に『play』が見えない。
パンッ
「えっ」
巨大モモンガが持つ銃から煙が上がっていた。
頭の上には『play』。
チュンッ
「ぁ」
右脚の太ももが熱い。
視線を下にやると、血が流れていた。
心臓と同じリズムで、ピュッピュッと血が噴き出していた。
脳内にブワッと単語が溢れる。
筋肉、血管、骨、貫通、銃刀法違反、赤血球、減少、失血、ヘモグロビン、神経、断裂、痛覚、火傷、熱傷
「痛……い?」
え?なんで撃つの?
「掴んで!」
目の前にロープを投げられた。
つかんで?つかんで?つかんで?つかんで??
つかんでってなんだっけ?つかんで?
ロープは私の足元に落ちている。
ロープの先では、ボムちゃん達が必死で叫んでいた。
アチョーさんがこちらへ走ってくる。
パンッ
肩を叩かれたような衝撃がして、体がフラリとした。
掴んで!
ようやく自分に投げかけられた言葉の意味を理解した!
蜘蛛の糸に縋るような思いで縄を掴み、少しでも階段側へと歩を進める。
「「せーのっ」」
2人が縄を引っ張った。
縄から手が離れないように、手に巻き付ける。
「うぁぁぁぁぁぁああ"!!!」
激痛で涙が出た。
「すみません。もう大丈夫ですよ」
「すぐに止血するっす!」
「ぁ、ぁぁ、あ、な、ぁ?ひっく……」
全身がガタガタ震えて、歯が鳴った。
ぼたぼた涙が出て、全身が熱くて寒い。
「ごめんなさい。もう大丈夫ですから。死にませんから」
「よく頑張ったっすね。もう頑張らなくて良いっすからね」
「ひっ……」
鼻水で息苦しい。自分がどんなに酷い顔をしてるのか。恥ずかしい。
ボムちゃんの小さな手が太ももをギュッと縛ってクルクルと包帯を巻いた。
「本当にすみません。もう大丈夫ですから。すみません」
アチョーさんが謝りながらシャツのボタンを外す。
後遺症が残ったらどうしよう。何で私が銃で撃たれなきゃいけないんだろ。痛い。どうして?元の世界に帰りたい。
「うぅ〜〜!ひっ、ぐ……」
駄目だ。心が、折れる。
自分が引きこもりになった瞬間の事を思い出した。
恐怖に立ち向かおうとすると、酸欠みたいに頭がクラクラして泣きたくないのに涙が出て、逃げたい気持ちでいっぱいになる。
1度心が折れると、なかなか元に戻らない。
どんな瞬間にも恐怖は蘇って、一生引きずる事になる。
「もう無理しないでください。もう戦わなくて良いっすから」
私の肩にガーゼを当てながらボムちゃんが言う。
「今までギリギリの所を頑張ってくれて、ありがとうございました。ノゾミちゃんは充分に強いっすよ。怪我をして怖くなる人はたくさんいるっす。ノゾミちゃんだけじゃないっすよ」
「ひっく……!」
ヴィルヘルムさんの所で覚悟したはずなのに。情けない。
「ごめんなさ……ご、ごめんなさい……!」
こんな事で恐怖に溺れる自分が嫌だ。
漫画の主人公なら怪我をしても立ち向かえる。
なのに自分は帰りたい気持ちでいっぱいになってる。
「大丈夫。もう戦わなくて良いですからね」
アチョーさんの言葉に首を振る。
「わわ、私、役に……ぐすっ」
「ノゾミさんはここに来るまで充分、活躍してくれましたよ」
「怪我してるんだから無理しないのは当たり前っす。ノゾミちゃんは階段にいるか『降参』してください」
2人の戦わないでいいという言葉に、どうしようもなく安心する。
「うぅぅぅぅうぅううう!!!いぐっ!」
自分でも役に立てない事は分かってるのに、首を横に振った。
自分でも義務感で参加するフリをしようとする事が、時間の無駄になる事は分かっていた。
それでも自分は汚いから、誰かに全力を尽くしたと言う為に「やれる」と言い張る。
「アチョー……」
「そうですね。少し休憩をしましょう。泣き止んでから、また考えましょう」
「大丈夫でずっ!!」
ここまで2人を困らせたのなら、ちゃんと立ち直るべきだ。
自分の涙や鼻水を拭こうと腕を上げただけで、激痛が走った。
「ぐっ…………」
自分の知識が総動員されて、システマのブリージングというロシアの軍隊が使用する呼吸法に辿り着いた。
「すー、ふー、ふー、ふー」
自分は頭で考えるばかりの頭でっかちなので、知識だけが脳内を駆け巡った。
落ち着こう。この怪我なら、2人は私を戦わせない。
うわー、また性格の悪い計算してる。嫌だな。
こんな状況で、バスケ部に所属していた友達の事を思い出す。
凄く練習した上に団体競技だったから、怪我をして悔しそうに泣いてたっけ。
今ならもっと、あの子の気持ちに寄り添える気がする。
今考えれば、自分はどんな顔で彼女を元気付けていただろうか。
ショックだろう事は分かっても、周りの人に合わせて上辺だけで慰めてた気がする。
凄い目で睨まれた。嘘くさい顔と声だったんだろうな。
ボムちゃんとアチョーさんは、こんなにも安心する言葉をかけられるのに。
こうやって泣いてる間も、頭の隅がどこか冷静な自分が嫌いだ。
私が今、出来ること。頭脳を使うこと。
後遺症とか破傷風とか、失血死なんて言葉が頭の中をぐるぐるしていた。
「いか……」
「はい。大丈夫ですからね」
「イカの着ぐるみが本体かもしれません」
2人が私の怪我に触らないように、左側から抱きしめてくれた。
「凄いっす!ノゾミちゃんは偉いっすよ!」
「とても有益な情報をありがとうございます」
止まった涙が、また溢れ出した。
すぐに左手で拭いて、微笑む。
「ごめんなさい。ちょっと、休みます」
私はもう大丈夫だから、気にしないで欲しい。
「無理しないでくださいね」
「水とタオルを置いておくっすね」
「はい」
少しでも心配させないように、ニコニコした顔で送り出す。
あ、でもヘラヘラするなって思われるかな。
また間違えたかも。
右肩を押さえて、階段の端に移動する。
2人の作戦会議に加わった方が良かったかな。
右肩、神経損傷して後遺症が残ったらどうしよう。
もう作品、作れないかな。
自分の美術人生とライバル達の作品、これから成長したかった事が一気に脳内を駆け巡った。
こんなのってない。
「ははっ。ふざけるなよ……」
こんな事で終わってたまるかよ。
「クリエイターの利き腕攻撃するとか無い!無いわー」
こっちは作者生命を奪われかけたんだ。やられっぱなしで黙ってるとか無い!殺す!
「ちょっと失礼します!」
「えっ?」「ノゾミちゃん?!」
右脚の痛みも無視して、階段を登った。
撃たれるとかは考えなかった。
ただただ、自分のクリエイター魂を燃やして相手に文句を言うことばかり考えていた。
恐怖とか知らねー、自分は自分のクリエイター魂に命かけてるんだ!
牧原 のぞみはこんなんで終わらねぇ!!
死んでも美術に関することだけは妥協しねぇ!!
「おい、お前!そこのイカ!」
早足で部屋の真ん中まで歩いた。
大声を出すだけで怪我が痛い。
「こんだけ凄いもんが作れるんなら、分かるだろ!クリエイターの利き腕を攻撃するな!」
大王イカがピクリと反応する。
「1匹1匹ちゃんと名前付けて性格まで考えてるんだろ!動かす時もちゃんとこだわってただろ!こんなにたくさん作るんだから、作ることが好きなんだろ!」
階段までやって来たヤンチャなぬいぐるみ達は、1匹1匹に動きの違いがあって力関係もあるように見えた。
1番最初に捕まえた亀は、亀らしく足が遅くて甲羅にこもるタイプだった。
虎は捕まえようとすると、銃で撃ってきた。
捕まった狐は前足で私を殴ろうとしてきたけど、ウサギは足でアゴを蹴ってきた。
リーダーのライオンは、捕まったみんなを助ける為に勇敢に飛び掛かってきた。
私は、この方のクリエイター魂に私は感動した。
「お前、クリエイターだろ。ぐすっ……。お前のせいで作品が作れなくなったら、死んでやるからな!」
イカはイカっぽい目で私を見つめていた。
冷静に考えると、敵に「死んでやる」って言ってもな……。
「ノゾミちゃん」
ボムちゃんが優しく、私の名前を呼んだ。
「下がってください。もう充分ですから」
アチョーさんに背中を押され、階段の方へ誘導される。
怒りによるアドレナリンも切れるだろう。
言いたい事は言ったし、後は邪魔にならないようにしよう。
ボムちゃんが鉤縄を振って、半円状に並ぶぬいぐるみを横薙ぎに吹き飛ばした。
「下のぬいぐるみで実験した通り、耐久度は布そのものっすね!これなら……」
「ちょちょちょ、何してるんですか!」
私は慌ててボムちゃんの前に立った。
「ダメですよ!人が一生懸命作った作品を壊しちゃ!」
「はぁっ!?」
そして冒頭に戻る。
「殺すとアウトです!ぬいぐるみ1つ1つに名前があるという事は、毒虎一家の一員なんです!殺したら、こちらの負けになります!」
と言われたボムちゃんは、ピタリと動きを止めてアチョーさんに視線をやった。
「危険なのはぬいぐるみでなく、銃です。人間サイズのぬいぐるみ達をどうかする事から考えましょう」
「分かったっす。人間なら死なない程度。手を切り落とすくらいなら良いって事っすよね?」
流石にこれ以上の譲歩は引き出せないだろう。
戦うために作られたぬいぐるみなら、多少の怪我をする事は想定されているはず。
大王イカが何か言ってくれないと、私にはこれ以上何も出来ない。
イカさんが何か言ってくれないかと視線を送れば、いつの間にかいなくなっていた。
代わりに、人間サイズのお人形さんが立っている。
カシャッカシャカシャカシャカシャ……
全てのぬいぐるみが銃を捨てて両手を上げた。
「降参する」
お人形さんもぬいぐるみの後に手を上げて、そう言った。
彼女の言葉にボムちゃん達も武器を下ろし、息を吐く。
ぬいぐるみ達が道を開けると、甘いロリータファッションの女の子が私達の前まで歩いてきた。
カタッコトンッ
背筋は真っ直ぐで、球体関節に見えるタイツを履いている。
靴音も動きも、本物の人形のような動きで歩いてくれた。
よく見ると、ワンピの裾の方にハートを抱いたうさぎさんが飾り付けられている。
「これ、解毒剤のレシピ」
「ありがとうございます」
お人形さんが下半身ほぼ裸のアチョーさんを下から上まで見た。
アチョーさんが気まずそうに微笑む。
お人形さんは大王イカと同じように無機質な目のまま、ギギ……と錆びたような動きでコチラを向いた。
そのまま動かなくなる。
『降参』した事で、役目を終えた人形を表現しているのだろうか。
凄いプロ根性だ!尊敬する!
「な、これ!」
「どうしました?」
【本編とはあまり関係ない、五色とミラの共通点】
スマパラのミラと6.66のボス五式 天罰には共通点があります。
口の両端にバッテンがあり、味覚情報がない事です。
このバッテンは光の国の人間に付けられたものです。
2人共、自分の口の端のバッテンを擦る癖があるのは、バッテンがコンプレックスだからです。
【能力者狩りとは】
女性を対象に行われる事の多い誘拐婚をさす。
能力のあるもの同士の子供は能力を持って生まれることが多いので、能力に関わらず『何かの能力』を持つ女性は誘拐される事があります。
過去には能力者を増やす為に推奨さえされていた能力者狩りですが、現在では倫理的な観点からほとんどの地区では禁止されています。
しかし、今でも能力者狩りは行われています。
なので、政府に報告される能力者の数は男性の方が多いとされていますが、実際は男女半々の数で能力者がいるでしょう。




